宇摩志阿斯訶備比古遲神(ウマシアシカビヒコジノカミ)
よく日本には八百万の神がいる・・・と言い、山の神様とか海の神様、木の神様、塩の神様、農業の神様など色々聞きますが、”微生物の神様”っているのかな?と調べたことがあります。
すると古事記に一回だけ出てきくるウマシ アシ カビ ヒコジノカミという神様を見つけました。
(日本書紀では可美葦芽彦舅尊/ウマシアシカビヒコジノミコトという名前で出てきます)
この世に初めて天地が出来た時にまず三柱の神様が登場します。
・天之御中主神(アメノミナカヌシ)
・高御産巣日神(タカミムスヒノカミ)
・神産巣日神(カミムスヒノカミ)
その後、まだ国が若く、大地が海に浮かぶ脂のように不安定な状態で、宇宙をクラゲのように漂っていた時、葦が生えるかのように生まれた神様がウマシアシカビヒコジノカミだそうです。
よく見ると名前の中に”アシ”って入っています。
川や湿地など水辺でよく見るススキのような花が咲くイネ科の植物です。
日本語は言霊を大切にするので、アシ=悪しにつながるとのことで、ヨシ=良しと呼ぶようになり、夏の日よけに使う葦簀(ヨシズ)はこの植物を使います。
そしてアシのあとに”カビ”と入っています。
真菌のことを『カビ』と呼ぶのは、これが語源ではないかという説もあります。
日本書紀では”芽”という字を使って『カビ』と読ませていますが、こちらの表記の方がより『カビ』っぽい感じがします。
地球の生命誕生は、海で生まれたシアノバクテリアという光合成を行う細菌だと言われています。これはラン藻とも言われていて、光合成によって酸素を発生させるため、歴史的には藻類(植物)に分類されてきました。しかし系統的には細菌に属する原核生物です。
どちらにしろ微生物&植物の名前が入っていて、地球誕生を見てきたような神話の一場面です。
特別な神様なのに謎が多い
日本書紀では天之御中主神(アメノミナカヌシ)の次に生まれた・・という記述もあるのに、『すぐに姿を隠した』・・とあり何をしたかが今一つはっきりしません。
個人的には海洋微生物や土壌微生物のことを指しているように感じました。
そしてお名前の最初に『ウマシ』とありますが、それが美味しい物を食べた時の『旨し』の語源なのではないかという説があります。
植物(米・大豆など)が微生物の力によって旨みを増す、旨み成分が醸成されることを表しているのでしょうか。
この神様の神社を探しています
名前の最後の『ヒコジ』とは成人男性のことだそうで、この神様は男性のようです。
謎多き神様ですが、謎多き微生物の世界と重なり非常に興味深いものがあります。
なぜなら把握されている土壌微生物は、3割程度という説もあり、大半は見つかっていないか分類されていないと思っています。
そして近年の海洋生物の変化(魚が獲れない、獲れる魚種の変化など)が騒がれていますが、その原因を含め、海洋生物や海洋環境の解明には、海洋微生物の研究が不可欠です。
しかし海洋微生物は、99%以上が寒天培地で培養できないそうで、土壌微生物とは違った難しさがあるようです。
天災や異常気象など、地球に異変が起こっている今、この神様を祀った神社を探してみたのですが見つかりません。
もし分かれば行ってみたいのですが・・・。