血液検査や尿検査の結果は重要ですが、それらの数値だけで臓器の状態を全て把握できるわけではありません。
例えば、肝臓の数値が悪かったとしても、肝臓そのものの機能が悪化しているのか、他の臓器のサポートに疲弊して機能が落ちているなど、色々なパターンがあります。
いわゆる『未病』と言われる状態は、血液検査で早期にキャッチできるという利点があります。
しかしいわゆる『標準値』というのは、平均値とも言え、そこから外れたら「即病気!」とも言えません。
だからと言って標準値から外れた状態を放置して良いという話ではありませんが・・・。
体質的に高め安定(もしくは低め安定)で推移することもあり、どちらかと言うと”変動”を観察する時もあります。
『数値が動く』というのは、良きにつけ悪きにつけ何か『変化が起こっている』合図だからです。
しかしここでもう一つ問題が出てきます。
その数値が動くような異変が、
・昨日から起きたことなのか
・実は半年前から起こっていたのか
という時間軸は分かりません。
もちろんちょっとした異変が分かりやすい心臓と『沈黙の臓器』と言われる肝臓では、症状の出方も数値の出方も違うため単純比較できませんが、血液検査や尿検査は、基本的にその瞬間の状態を診るものです。
ところが生物の体は複雑で、日々の生活環境や習慣、食事などの積み重ねです。
今日、一歩も外に出ないで甘いデザートを食べ過ぎたからと言って、明日糖尿病になることはないように、多少のことは調整できるように出来ています。
また最近意外と多いのが
「血液検査で異常はないと言われたが体調が悪そう」
「元気がない」
というご相談です。
人間でも白衣高血圧症と言われる症状があるように、病院へ行っただけで普段と違う様子になるのは動物も同じです。
(動物の場合は、人間とは逆にシャキーン!と元気にふるまうことが多いです。あるいは興奮して体温が高いとか)
聴診器を当てても血液検査をしても異常がなかったのは何よりですが、飼い主さんが感じる変化というのは非常に重要です。
血液データに反映されていないだけで、体内で異常が始まっている合図かもしれません。
もちろん動物でも、
「昨日はしゃぎすぎて疲れたな」
ということもあるでしょうし、シニア期になれば気温や天候によって
「ダルイな」
ということもあるでしょう。
また精神的な問題を抱えていて、
「以前体調が悪い時(どこか痛い時)仕事を休んで一緒にいてくれた」
ということを覚えていて、いわゆる仮病のような様子を見せることもあります。
この辺の専門的な判断は、獣医師による診断が必要ですが、『精神的な問題』と思われていた症状が、半年後に内臓の問題として浮上してくることがあります。
『卵が先か、鶏が先か』ではありませんが、
・気質が病気を作るのか
・実は潜在的に内臓の問題を抱えていて、それが性格に影響を与えているのか
どちらにしろ東洋医学では、精神も身体も一つと見ます。
緊張でお腹がキュっとなったり、胃がキリキリした経験をしたことがある方もいるでしょう。
精神的な変化が、身体に全く影響しないと考える方が科学的ではないでしょう。
犬猫も餌を求め、日々生きていくことだけで精一杯だった時代とは違います。
欧米では犬猫にも向精神薬を処方されることが増えましたが、同時に東洋医学的な治療も非常に注目されています。
より専門性を高めていく西洋医学。
心も体も一つ。全体を俯瞰していく東洋医学。
どちらが優れているという話ではなく、症状や状況に応じて選択していけると理想です。