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筋肉維持が健康維持につながる理由~微生物から引き継いだタンパク質


瓶に入ったおやつに集まる犬たち
筋肉が全身の健康に影響する理由

体を動かすのに筋肉は欠かせません。

犬の場合、体重の7割が前脚にかかり、後ろ脚には3割しかかかっていないため、後ろ脚から弱りやすい傾向にあります。



人間でも脚の怪我などで1か月でも松葉杖を使う生活をしていると筋肉が落ち、左右の脚の太さが変わります。またご高齢の方が、風邪で数日寝込んだだけで脚が弱り転倒することもあるので、日頃の筋肉維持がとても大切です。



筋肉が維持されると血行も良い状態が維持されるので、冷えも起こりづらくなります。


良い血行を維持することが健康に直結するのは、酸素や栄養素が全身にくまなく運ばれ、老廃物の回収もスムーズになるからです。



また体温が維持されると、免疫細胞も活性化するので免疫力も維持されます。


こうして筋肉を維持することは、体を自由に動かすだけでなく、全身の健康に大きく影響するのです。


コームで毛をとかすシーズー
筋肉維持で予防できること

成長期は日常の遊びや散歩が健康な体づくりを促してくれます。


犬種によって成長期は生後9か月から24カ月と幅がありますが、その時期は骨の成長部分が閉じていないので、過度な運動は禁物です。


その時期に過度な運動をすると、ケガにつながる恐れがあるのと、成長を制限してしまう可能性があります。

しかしその時期を過ぎたら、徐々に筋肉を意識した運動を増やしていきましょう。



加齢と共に筋肉が落ちてくると、犬も猫も頭が落ち、後ろ足が弱ってきますが、それらが首や腰、膝など関節の負担を増やします。

関節炎や椎間板ヘルニアなどは、なりやすい犬種・猫種がいますが該当犬種・猫種が必ずなるわけではなく、筋肉の維持である程度防げるケースもあります。




何も”筋肉ムキムキの体”を目指すという意味ではありません。

関節を支え、血行をスムーズにする筋肉を維持することが大切なのです。


犬も猫も筋肉を維持することで代謝も適正に維持されるので太りにくくなり、老化を遅らせ全身の健康維持に直結します。


二階建てのキャットハウスでくつろぐ猫たち

日常生活で筋肉を維持する方法

犬であれば散歩時に平坦なアスファルトの道だけでなく、坂道や不安定な砂の上を歩くだけでも、様々な筋肉を使います。

プールで泳ぐのもいいし、室内ならバランスボールやクッションなど、不安定な所に乗せ、体幹を鍛える方法もあります。

(必要に応じて専門家の指導を受け、必ず安全な環境で行って下さい)



猫ならキャットタワーの上り下りや、細い所を歩くことで体幹も鍛えられます。


太ってそういった本来の動きができなくなる前に、体を作りましょう。

脚に痛みを感じている人形

体を動かしたときに筋肉で起こること

体を動かす=運動とは筋肉の収縮の繰り返しです。筋肉はお菓子のミルフィーユの構造に似ています。


筋肉の収縮・弛緩は、細胞内の非常に複雑な反応によって起こりますが、最終的にアクチンという細いタンパク質の繊維がミオシンという太い繊維に滑り込むことで”収縮”が起こり、その逆で”弛緩”します。


ミルフィーユ状のものが横にいくつも連なっているイメージです。


アクチンというタンパク質繊維をパイ生地だとすると、ミオシンはクリームに相当します。

実際は写真のミルフィーユのようにパイ生地とクリームがきれいに重なっていません。

パイ生地がずれていて、クリームが上から見えている状態です。


それが神経の興奮やホルモンの影響など、様々な要因で細胞内にカルシウムイオンが多く流れ込むとアクチン(パイ生地)がミオシン(クリーム)に滑り込むことで収縮します。

カルシウムイオンが流出すると、アクチンは逆方向に滑り筋肉は弛緩します。

エサ皿を前にした子猫と仔犬

酵母にも存在するアクチンとミオシン

このような複雑な動きによって体を動かす筋肉だけでなく、心臓や膀胱の筋肉も維持されています。しかしこのアクチンとミオシンは、動物と同じ真核生物である酵母にも存在します。



パンやビール、ワインなどの醸造に使われる出芽酵母は、その名の通り母酵母から娘酵母が生れて(出芽)独り立ちしていくことで増えていきます。


この独り立ち直前の姿は、イタリアのチーズ カチョカバッロに似ています。



丸い母酵母に、もう一つ小さい丸い酵母が出芽するのです。

そして母酵母から離れる時に、丁度チーズの縄に相当する部分にアクチンとミオシンが存在し、独り立ちしていきます。



細菌(大腸菌や乳酸菌など)は原核生物ですが、酵母や真菌(カビ)は植物・動物と同じ真核生物です。



アクチンとミオシンは単細胞生物(酵母・カビ等)から、多細胞生物(植物・動物)が生まれる過程でも失われなかったタンパク質です。

むしろこのタンパク質をより複雑に利用することで、動物の生命は維持されています。


犬猫の場合、後ろ脚の弱りが”筋肉の弱り”を目にできる分かりやすいですが、筋肉は心臓を始めとした内臓、目など全身にあります。


脚の弱りが見えてきた時は、その他の筋肉細胞もそれなりに弱ってきている合図です。




微生物に学ぶ

筋肉を健全に維持するために、もちろん日々の食餌は大切ですが、それと同じくらい日々の”活動”=どう筋肉を使うか・・も大切なのです。



単純に何カロリー摂れば良い、タンパク質を何グラム摂れば解決する、サプリメントで補充すれば大丈夫・・という問題ではありません。


動物の体は複雑です。同じ量を食べても、個体によって栄養素の使われ方は同じではありません。


『パッケージの数字に惑わされないでください』

『あなたのワンちゃん、ネコちゃんをよく観察して下さい』

といつもお願いするのは、我々の生命の起源に繋がる微生物たちが教えてくれる”生き方”に多くのヒントがあるからです。


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