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秋の行楽に油断大敵~エキノコックス



今や北海道だけではない感染症

今年8月30日現在の報告では、11例の感染が出ていますが、全て北海道内での発生です。


直近(8月24日~30日の週)では札幌市保健所管内でも1件出ていますが、人への感染はだいたい年間20例から30例程度です。

しかし人の移動と物流が盛んになり、2000年以降本州でも散発的に感染が報告されるようなりました。


犬は症状なし。人は症状が出るまでに10年以上かかる人獣共通感染症

そもそもエキノコックスは、野ネズミに寄生し、最終宿主であるキツネや犬に食べられることを待っています。

彼らの目的はキツネや犬に寄生することなのです。


現在キツネの40%、犬の1%が感染していると思われます。



犬の1%というのは一見、たいしたことがない数字だと思われますが、感染経路が不明であるケースがほとんどで、少し不気味な気配を感じている感染症の一つです。



その理由として、犬が感染してもほとんど症状が出ないこと。


口から侵入したエキノコックスの幼虫は、小腸内で成虫となり、約1か月ほどで便に混じって虫卵を排出します。

小腸に住み着いていた成虫も2か月から長くても4か月もすれば排出され、自然と治ってしまいます。

時に粘液塊が混じる便を排泄したり、稀に下痢することもありますが

「食べ過ぎたかな?」

という程度で、ひどい下痢が続くようなことはほぼなく、感染に気付かないケースが多いと思います。




ところが本来の宿主でない人間に侵入したエキノコックスは、子虫をほとんど作れません。そのため成虫は肝臓に移動し、嚢胞だけを作ります。

ここから腎臓や肺、脳にも遠隔転移することもありますが、子虫の入ってない嚢胞は徐々に大きくなり、自覚症状が出るまで早くて5年、場合によっては20年ほどかかります。(平均10年前後)


そんなわけで、いつ、どこで感染したかを特定するのが非常に困難な上、治療も難しく、感染症の中でも悪性度が高いものの一つです。


アウトドアを楽しむ時の注意

これから気候も良くなり、山や川などにお出かけすることもあるかもしれませんが、とにかく野生のキツネがいるような所は要注意。


感染者は北海道、東北地方に限らず、東京、大阪、京都、愛知、三重、神奈川、千葉、長野、大分、沖縄など全国各地に渡ります。

人から人、ねずみから人へは感染しないため、人が罹る時はキツネか犬由来です。



2014年愛知県で捕獲された野犬から検出された時、エキノコックスの遺伝子検査したら北海道由来の虫だったことが判明。

その後2018年に愛知県内の野犬56頭を検査したら3頭から検出。

同年、愛知県内で人への感染も3例報告されていることからも、ジワジワと人への生活圏に近づいてきている感じがします。




犬が野生動物の糞の匂いを嗅いだり、沢の水を飲んだりすることによって感染する可能性があります。

(もちろん人間も沢の水をそのまま飲んだり、野イチゴなど野生の果実や山菜なんかを生で食べるのも厳禁です)


エキノコックスの卵は水中でも4か月は生き、低温(-10度~-20度)にも強い。ただ加熱には弱いので、煮沸消毒は効果的です。

豚、羊など蹄のある動物に感染するエキノコックス

厳密に言うと、エキノコックスにも4種類あり、キツネや犬が保有するのは多包条虫という種類ですが、豚や羊、やぎなどが保有する単包条虫もいます。


現在こちらのタイプの人間の感染は、ほぼ国内で確認できず、海外から持ち込まれていると思われます。

ただ食肉用豚からは、検出することがあります。



一般に豚は生後半年位で出荷されるので、飼育中に症状は見られなかったようですが、肝臓に病変が見つかり検査したところ陽性を確認。


一説には北海道の豚の0.2%前後が感染しているというデータもあり、それでいくと100万頭中2000頭位が感染している計算です。



豚の餌を狙ってネズミが豚舎に入り込んでくることで、感染が広がっていると思われます。どちらにしろ豚肉は火を通して食べるため、万が一感染豚を食べても、全く問題ありません。



ただレバ刺しは、E型肝炎の他、このようにエキノコックス感染の恐れもあるので、人も犬も絶対に避けるべきです。

「犬本来の食餌は生食だから生肉中心の食餌は健康に良い」

「新鮮なレバーなら大丈夫」

という主張もよく耳にしますが、少なくとも豚肉に関しては全く同意できません。





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