犬種による性格の差は本当?
- 青い森工房
- 2022年11月14日
- 読了時間: 3分
更新日:2023年1月5日

猟犬だから勇敢?
よく○○(←犬種名が入ります)は猟犬だから勇敢な性格とか、◯✖は人懐こいから飼いやすい・・という話を聞きます。
ネットや犬図鑑的なものにも、犬種別の性格が載っていますが、経験的にぴったりはまるケースを意外と見たことがありません。
むしろ人間側にそういった情報による先入観から生まれているように思います。
特に純血種は人間の手でブリーディングされているため、性格もある程度固定されている・・と思われてきましたが、今年発表された大規模な研究によると、
『犬種差で説明できる性格や行動の違いは9%ほど』
とのこと。
2022年4月29日付 Science掲載👇
つまり犬の性格や行動の差は、犬種差というよりそれぞれの個体差・・という解釈ができるのです。

純血種の歴史は浅い
確かに犬の行動特性に関わる遺伝子が11か所ありましたが、それは特定の犬種で固定されていなかったようです。
研究データでは、むしろ性別や年齢の方が、行動特性に影響することを示しています。
つまり例えば「社交的」といわれるラブラドールレトリバーやダックスフンドですが、その犬種全体に、遺伝的因子があるわけではない・・ということです。
「警戒心が強い」と呼ばれる柴犬やドーベルマンでも、それは犬種としての特性というより、個体の年齢、性別による因子の方が強いということです。
これは当然のことで、純血種というのが登場してたった200年程度です。
犬猫の場合、一世代を4年くらいで見ますから、50世代ほどでしかありません。
ちなみに人間の場合一世代を30年で見ますが、それに換算すると1500年。
今から1500年前といえば飛鳥時代。
聖徳太子の頃の日本人と今の日本人が、性格に差が出るほど遺伝的に変化しているか?と想像すると分かりやすいかもしれません。
生活スタイルや環境による考え方の差や価値観の違いはあるかもしれませんが、生物として差が出る時間にしては短すぎると思います。

イヌもヒトも同じこと
つまり200年くらい、人の手で大きさや毛色を管理してきたつもりだったが、イヌが家畜化された時から1万年培ってきた性格や行動特性を大きく変化させるものではなかったということです。
当然”イヌ”という生物誕生からはさらに長い時間を経てきているのですから、その本質(遺伝子)を人の手でたった200年くらいで変化させられる、管理できる・・というのは思い上がりなのかもしれません。
一方で
「うちの子は猟犬だけど、おとなしいから大丈夫」
とも言えないのです。
それこそ性格差であり、猟犬の集中力や勇敢さを持っていても、家庭犬として生活している身では、その特性を披露する場がないだけかもしれません。
またその勇敢さを毎日の散歩で表に出すタイプと、いざいう時まで出さないタイプというのもいて、まさに犬種差というより”個体差”なのです。
だって我々日本人でも、そこは様々でしょう。
世界的に”礼儀正しくまじめ”というイメージですが、全員が眼鏡をかけてスーツを着て仕事をしているわけではありませんよね。ラテン系のように陽気な人がいれば、逆にラテン系国の人で引っ込み思案の方もいます。
それと同じことが、イヌでも証明されたということです。

犬種イメージに捉われないように
ネットや巷の噂で「あの犬種は飼いやすい」「その犬種は攻撃的」という話はあふれていますが、今回の研究でそれに遺伝的な強固な要素があるわけではない・・ということが分かりました。
この研究には、多くの雑種の犬たちの遺伝的データが非常に重要でした。
彼らの遺伝子が、犬種による差がほとんどないことを見せてくれました。
一応、犬種標準に登録されてないものを雑種と呼んでいますが、純血種なるものが出てくる200年前は彼らもまた”雑種”です。
この世の”イヌ”は”イヌ”以外の何物でもなく、これからもお互い良きパートナーであり続けたいものです。