犬の麻酔リスクと遺伝子の関係
- 青い森工房
- 2020年5月25日
- 読了時間: 3分
更新日:2021年1月18日

遺伝子解析で探る重症化の理由
新型コロナウィルスによる死者が、欧米と比較して極めて少ないことが、世界中から注目されています。
・マスク着用、手洗い習慣が行き届いている
・室内に土足で上がらない
・肥満が少ない
・医療システムの差
・・・など様々な理由や憶測、可能性が語られていますが、今回慶応大学、東京医科歯科大学、大阪大学、北里大学、京都大学を中心に8つの研究機関と約40の医療機関が参画した一大プロジェクトが立ち上がりました。
重症化する理由として、ヒト白血球抗原やサイトカイン(情報伝達物質)の遺伝子が関わっている可能性が指摘されていますが、今回の感染症はどの遺伝子にヒットしているのか(=感受性があるのか)が分かれば、重症化しやすい人を早い段階で見つけることができます。
そのため参加団体が、重症、軽症、無症状の感染者の血液から遺伝子を解析し、症状の差となるキー遺伝子を探そうというわけです。
これが分かれば、治療や特効薬の開発などにもつながることが期待されます。

サイトハウンド種に多い麻酔の問題
このように関連する遺伝子を特定することで、病気の原因や治療法が見つかることが増えています。
犬の世界では以前より、サイトハウンド種(優れた視覚と抜群の走力で獲物を追跡するグループ)の麻酔には、特別な配慮が必要なことは言われてきました。
具体的な犬種を挙げるとイタリアングレーハウンド、アフガンハウンド、ウィペット、サルーキ、ボルゾイなどです。
これらの犬種グループは、麻酔が効きすぎてしまったり、目覚めが悪かったり・・場合によっては命に関わることもあるため、麻酔の種類や用量の見極めが難しく、もし麻酔を必要とする治療をするなら専門の麻酔科医がいる病院で受けた方が安心です。
これまでワシントン州立大学獣医学部の研究で、サイトハウンド種は遺伝子の突然変異で、特定の薬剤を分解する酵素CYP2B11が少なくなることが判明していました。
この酵素欠損によって麻酔が効きすぎたり、目覚めの悪さにつながっていたのですね。

ところがこの酵素欠損は、他の犬種の遺伝子にもみられることが分かりました。
サイトハウンド種ほど高い率とは言えませんが、ゴールデンレトリバーで50頭に1頭、ラブラドールレトリバーで300頭に1頭。
雑種犬だと3000頭に1頭に減りますので、これら純血種の酵素欠損率の高さは甘くみるべきではありません。
またこの酵素は麻酔薬だけに限定されておらず、作用機序が似ている薬を使った場合も、上手く分解できない可能性があります。
だからと言って、必要以上に麻酔を恐れ、必要な治療を避けるのは犬の健康にとって望ましいことではありません。
熟練した獣医師なら年齢や持病の種類によって麻酔薬を選びます。
さらに専門の麻酔科医がいれば例え術中、心拍数の減少が起こってもアトロピンなどを適切に追加し、全身状態の安定をはかってくれます。
また何か起こっても速やかに中和できる拮抗剤がある麻酔薬もあり、年齢や状況によっては、そういった薬剤の選択もあるでしょう。
どんなものにもゼロリスクはありません。
私たちだって、傷を縫ったり歯を削ったりする時、麻酔なしでやるなんて考えられません。
安全で最良の治療を進めるには、適切な麻酔使用が不可欠です。
参照記事⇒https://news.wsu.edu/2020/01/13/wsu-study-aims-prevent-adverse-drug-reactions-dogs/
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