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犬の宮と猫の宮~高安犬のふるさと



十和田神社

初詣は行かれました?

犬と一緒にお参りできる寺社が増えてきました。


青森県・十和田湖のほとりにある十和田神社は、大型犬も拝殿の前で一緒にお参りできます。

訪れるたびにハスキーや秋田犬など、様々なわんちゃんに出会います。



十和田神社のご祭神は日本武尊(ヤマトタケルノミコト)ですが、日本武尊を道案内したのが狼(山犬)であったということから、日本武尊を祀る神社は比較的ペット用のお守りなどを置いてあることが多いようです。

(一緒にお参りできるか否かは神社によりますが)

十和田神社拝殿

犬と縁がある神社・犬を祀る神社

東京都の武蔵御嶽神社、埼玉県の三峰神社、栃木県の白鷺神社などはやはりご祭神が日本武尊で、お守りや御朱印(白鷺神社)などもあるようですが、三峯神社は近年ペット同伴の参拝はできなくなったそうです。


一方、犬を祀った寺社もあります。


有名なのは妖怪と戦った霊犬 悉平太郎(しっぺい たろう)を祀った静岡県磐田市の霊犬神社。


これは矢奈比賣神社(やなひめ神社)内にあります。


この神社は見付天神とも呼ばれていますが、その昔、祭りの時に白羽の矢が刺さった家の年頃の娘を人身御供に出す風習がありました。


しかしその話を知ったある僧侶が、

「そんなことをさせるのは妖怪の仕業だ」

と見抜きます。


そしてその妖怪が信濃の寺にいる霊犬を怖がっていると知ると、犬を信濃から呼び寄せ、娘を入れる箱に潜ませてお供えします。

すると妖怪が姿を現し、悉平太郎は勇敢に戦いついに倒しました。



悉平太郎がいたとされる寺は、長野県の光前寺で

「遠州府中(現在の静岡県磐田市)で妖怪退治をして村人を救った」

という霊犬伝説があり、本堂の横に犬のお墓があります。


ただこちらでは犬の名前が”早太郎”になっています。

希少!犬と猫両方を祀る神社

そして山形県の最南端 置賜地域の高安(こうやす)に林照院という天台宗のお寺があります。

修験者 林照坊が祖となった寺ですが 、ここに”犬の宮”と”猫の宮”と呼ばれる二つのお社があります。



この地域はかつて高安犬(こうやすいぬ)という優秀なマタギ犬がいた地域です。



日本犬が天然記念物に指定される際に、高安犬も候補に挙がったのですが群馬犬、岩手犬(南部犬)と並んで「交雑が甚だしい」という理由で指定されず昭和初期に絶滅してしまいました。


犬の宮に祀られる高安犬の祖先

この犬の宮は和銅年間(708年~711年)頃、都の役人に化けて厳しい年貢の取り立てをして村人を苦しめていた古狸と戦い、命を落とした三毛犬と四毛犬 二頭の犬を祀っています。


この二頭の犬は、村人が苦しむ姿を見た地蔵権現が甲斐の国(山梨県)から連れてきたと伝わっています。


三毛犬と四毛犬・・とありますが、

「甲斐の国から連れてきた」とあるので、甲斐犬だったと考えられています。


現在の甲斐犬の犬種基準では

・赤虎(ビール瓶を太陽に透かした時のような赤毛に黒の縞)

・黒虎(黒地に縞だが赤色素を含まない)

・中虎

の三種のみです。

一般的に”甲斐犬”と聞いて思い浮かべる毛色は黒虎でしょう。赤虎と中虎は珍しいそうです。


しかし昔は三毛犬(白地に黒い縞)四毛犬(白地に黒い縞と他の色も混じっている)もいたそうで、高安犬は甲斐犬の三毛と四毛が祖先だったと言われています。

先に挙げた霊犬 悉平太郎の話とも共通してますが、妖怪とか化け物は犬が苦手なのでしょうか。あるいは犬はそういった異界のものを見破る力があるのでしょうか。



役人に化けていた古狸はたくさんいたので、たった二頭で立ち向かった犬たちは大怪我を負い命を落としましたが、この話には続きがあります。



平穏な村になって70年ほど経った延暦年間(782~806)頃。

犬に退治された古狸の怨念が大蛇となって現れたのです。


70年という年月がなんともリアルです。

平穏な日々が70年も続くと壮絶な過去が忘れ去られ、時代の流れで人々の価値観も変わる頃です。



ところがある夫婦に飼われていた猫が、実は観音様の化身で大蛇を見破り命がけで戦います。そして大蛇を退治するのですが、命を落としてしまいました。大変心を痛めた夫婦が、その猫を手厚く葬り”猫の宮”となりました。

このお宮がある高安周辺は、縄文早期の遺跡が見つかっていて、古くから人の営みがあった地域です。


全国各地の縄文遺跡からは犬が家族の一員だったと伺わせる埋葬姿、出土物があります。


残念ながら縄文時代にイエネコはまだいませんでしたが、延暦年間といえば京都に平安京が作られた時期です。


猫の公式記録は宇多天皇の日記ですが、この山形の猫の宮の方が古い話です。

関連ブログ:天皇の愛猫


当時、まだ猫は貴重な動物で一般市民には飼えなかったはずですが、この猫の宮に関わった夫婦とは、一体どんな方だったのでしょう?


郷土史や伝説にはとても興味深いものがあります。


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