東洋医学から見る50~鍼治療の意外な効用
- 青い森工房
- 2024年12月8日
- 読了時間: 5分

漢方薬との相乗効果
鍼は漢方薬とセットで治療を進めると相乗効果が期待できます。
漢方薬も条件を満たせば保険適用されていますが、鍼治療も保険適用される疾患・症状があります。
現在保険適用されているのは、神経痛とか五十肩、腰痛症など、整形外科領域の疾患・症状を中心に7つが対象になっています。
しかし本来、鍼はコリや痛みの改善だけに留まりません。
・内臓の働きを調整する
・自律神経を整える
・免疫機能の活性化
なども期待できるのです。

WHOが認めた鍼治療に適応する疾患・症状
WHO(世界保健機構)が出している報告だと、鍼治療の適応となる症状・疾患はかなり広く28の症状・疾患が適応となっています。
腰痛、首の痛み、関節リウマチ、坐骨神経痛、肩関節周囲炎などは日本で適応されているのと同じです。
それに加えて整形外科領域だと、膝の痛みや捻挫、テニス肘などにも適応となっています。
この辺りまではイメージしやすいと思いますが、花粉症を含むアレルギー鼻炎とか放射線治療や化学療法による副作用も適応になっています。
花粉症やアレルギー鼻炎などは、眠くなりやすいお薬もあるので、鍼治療が保険適用されたらかなり楽に過ごせると思われます。
またガンの化学療法や放射線治療の副作用を鍼で軽減できれば、日常生活の質が大きく向上し治療効果も上がるのではないかと思われます。

痛みの軽減も広い範囲が適応
痛みを軽減する効果も、脚や腰の痛みだけではありません。
胆石や腎結石などによる痛み、頭痛、歯の痛み、手術後の痛みもWHOの適応リストに入っています。
また毎月鎮痛剤が手放せず、胃腸の調子まで崩す方が少なくない月経困難症もリスト入りしており、これが保険適用されたらかなり多くの方が助かるのではと思います。
産婦人科領域では月経困難症の他、実質的な対処方法がないつわりや胎児の位置異常の修正、分娩の誘発も適応リストに載っています。
こういった領域に適応されたら、かなり体の負担が少なくなると思われます。

本態性高血圧って?
そして脳卒中や顔面神経痛、細菌性赤痢のような感染症もリスト入りしていますが、日本人に多い本態性高血圧も鍼治療も適応症の一つに入っています。
本態性とは『原因が良く分からない』という意味です。
要するに血管や腎臓に明らかに問題があって、それが原因で高血圧を引き起こしている・・と分かっているもの以外はほとんどが”本態性高血圧”となります。
原因が分からないのに、多くの方に降圧剤が処方されているのが現状ですが、これが近年問題になりつつあります。

なぜなら多くの薬の欠点として、一方向にしか効きません。
降圧剤ならば下げる一方で、下がりすぎたとしても『丁度良い所で止める』とか『下げ過ぎたから少し上げる』といったことはできません。
そのせいで高齢者がふらついて転倒したり、脱力感にさいなまれ日常生活がおぼつかないケースが増えているのです。
様々なことが億劫になるのが、年齢のよるものなのか、降圧剤の副作用なのか判断が難しいところですが、どんな薬でも血中濃度を一定にするのは難しく特にいつも同じ時間に同じ量を飲んでいてもこういった問題が出ることがあります。
そのため高齢者にこそ、鍼治療によるコントロールが取り入れられたらと思います。

ペットにも鍼治療
人間には長く用いられてきた鍼治療ですが、ドーピングが禁止されている競走馬の世界でも疲労回復や安全な治療の一つとして鍼治療が取り入れられています。
同じように犬や猫にも鍼治療を施術してくれる動物病院も増えており、関節炎や椎間板へリニアなどに良い効果をあげています。
(注:疾患の程度によって外科的な治療の方が向いて場合があり、全ての疾患・症状に適応できるわけではありません)
また病気回復期のサポートや糖尿病治療などにも取り入れられています。
慢性疾患だと長期に渡って投薬が必要なことも珍しくありませんが、どんなに良い薬もそれなりに体へ負担がかかります。
そういった点でも犬猫の鍼治療がさらに広がって欲しいと願っています。

今後に期待したい治療法
体への負担が少なく、期待できる効果が広い鍼治療。
ペットも長寿化しており、シニア期の日常生活の質を上げるためにも期待できます。
また動物分野に限らず、人間も対処療法から鍼治療と漢方薬に広がることを願っています。
ドイツではすでに約10%(38万人)の医師が治療として取り入れており、世界的には漢方薬より研究が進んでいます。
日本ではまだ一部の医学部でしか取り入れられておらず、臨床の場でも選択肢が広がっていません。
鍼治療にはそれなりの技量が必要なので、教育を受けても実際治療に取り入れようと考える医師が極めて少ないのが現状です。
(これには保険適用範囲や保険点数も関係しているでしょうが)
また近年若年層にも増えているうつ病にも有効とされ、これもWHOのリストにも入っています。
現代日本の社会情勢が影響しているのか他の先進国と比較しても『心の風邪』と呼ばれるくらい多くの方が悩まされているうつ病。
何故か犬猫の世界でも原因不明の体調不良に、抗うつ剤が効果をあげるケースが世界的に増えています。
そんな昨今の状況を鑑みると、まさに風邪の治療に近所のクリニックに行くように、心の風邪も近くのクリニックで鍼治療が受けられるようになってほしいと思っています。