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東洋医学から見る46~春の食餌とタウリン


スポーンに乗ったバジルのペースト
最大の臓器・肝が始動

立春が過ぎ2月19日には雨水。


雪が雨に変わり、氷が溶けて水になる時期とされ、春へ始動する時期です。


冬の間は

「夜は早く寝て、朝はゆっくり起きる」

という生活ペースがおススメですが、春と秋はズバリ

「早寝早起き」

ちなみに夏は

「遅く寝てもいいけど、寝坊はダメ」



『規則正しい生活をしましょう』

と言っても、季節によって日照時間が変わるように、1年中同じ時間に寝起きすることが

『規則正しい生活』ではないんですね。


ワンちゃんのお散歩も、季節に合わせて時間を調整する方が体調を維持しやすいです。



紅葉した葉が落ちている中を散歩する柴犬

胃・脾からエネルギーを供給してもらう肝

冬の間活躍した腎は『生まれつきの元気=先天の精』を貯える所とされていますが、脾は『後天の精』を作り出す所とされています。


そして後天の精は飲食物によってもたらされます。肝臓は体内最大の臓器ですから、供給するエネルギーもそれなりに必要ですが、ただ食べていれば良いわけではありません。


胃・脾をサポートし、肝のパワーを最大限に発揮できる食材選びがポイントになります。



春は入学や引越し、部署移動など環境の変化が起こりやすい上、花粉症で体調もすっきりしなかったりして、知らないうちにストレスがたまっていることがあります。



また肝臓と深く関わっている目の症状が出やすい時。

疲れ目、充血、目の奥が痛むなどの症状が出た時に、目薬を使っても良くならない時は肝臓からのサインだと考えた方がいいかもしれません。


肝臓は”筋”も関わっているので、背中や首の張りの他、肩、手首足首など関節を支えている腱に不調が起こりやすい時期でもあります。


風邪症状が出ている女の子を心配そうに見るラブラドルレトリバー

犬猫もストレスを感じやすい春

犬猫も草を食べたがったり、アレルギーがぶり返したり、下痢・嘔吐も増える傾向にあります。特に犬は狂犬病の予防接種時期も重なるため、より肝臓のケアが大切です。


また肝のバランスが崩れていると”怒”という感情を引き起こしやすくなるので、イライラしたり留守番中にイタズラが増えることも。


逆に普段からちょっとしたことでイライラしたり、怒りを感じやすい・・ということがあれば肝の調整&脾からのエネルギー補給が必要です。


というわけで

冬土用(胃・脾)⇒春(肝臓・胆嚢)⇒春土用(胃・脾)

と2月から5月初旬までは、食餌の調整がなかなか難しい傾向にあります。

鉢植えのバジル

イカへの誤解

そんな時期におススメしたい食材は”イカ”です。


イカは犬猫に与えてはいけない食材だと書かれていることもありますが、科学的根拠がありません。


与えていけない理由として主に2点挙げられています。

・消化が悪い

 ⇒消化率は白身魚と変わりません。

・チアミン阻害酵素があるので、チアミン(ビタミンB1)不足になる

 ⇒酵素は加熱すると失活します。またこの酵素はイカだけでなく多くの魚介類に含まれているので、刺身のみの食餌を与え続けたらチアミン不足になるかもしれませんが、現実的ではありません。


噛み応えと消化率は比例しません。

例えばサシ(脂)の入ったお肉は柔らかくとろけるような食感ですが消化に時間がかかります。(だから腹持ちが良い)

同様に魚の中で比べれば、脂質の多い中トロやサーモンよりむしろ消化が良いのです。


ハーブティーを作っている

その上、栄養学的には”タウリン”を多く含むので、ネコだけでなく犬も積極的に摂って欲しい食材なのです。


タウリンは「ファイト~、一発!」で有名な栄養ドリンクのCMで耳にしたことがあるかもしれませんが、元気になるというより、全身の細胞の浸透圧調整です。


あのようなドリンク剤を飲んで、スッキリしたり元気が出たような気になるのはカフェインの影響です。


浸透圧の調整とは

例えば心筋細胞にカルシウムイオンが入ると収縮、出ると弛緩します。

このイオンの出入りで心臓は動いているので、心臓病の療法食などはカルシウムを制限しています。


しかしタウリンは細胞内にカルシウムが多すぎれば排出を手伝い、少なければ流入を助けます。そうやって細胞が壊れないように維持してくれるのです。

そのためタウリンを添加している心臓サポート用ドッグフードもあります。


それどころか、人間の世界でも心臓疾患の方に高純度のタウリンを処方していました。

(今も処方できるのですが、薬価が安すぎて儲からないためほとんど使われていません)


一般的な薬と違い『多すぎれば排出を手伝い、少なければ流入を助ける』と双方向に作用するので、非常に安全なのです。

こういった薬はほとんどなく、例えば降圧剤は血圧を下げるだけで、下がりすぎたら上げる・・という作用はありません。




心臓にはタウリンを取り込む専用スポイト(タウリントランスポーター)がありますが、脳、脊髄、肝臓、小腸などにもタウリントランスポーターが見つかっています。


つまり再生できない細胞(心筋・脳・脊髄)や細胞の維持が重要な組織には、タウリン専用窓口が常設されていることになり、その役割が欠かせないことを物語っています。



タウリンを多く含む食材

畜産物にもある程度含まれ、100gあたり

豚ロース肉13㎎~30㎎

牛さがり肉10㎎~50㎎

程度です。


鶏肉は部位によって結構差があり、おおよそ

鶏もも肉 400㎎

ささ身・むね肉 30㎎

くらいです。


畜産物の中では鶏もも肉の高さは抜きに出てますが、脂質が多いため摂取量に注意が必要です。


これに対してイカ・タコ・貝類などは

イカ 350㎎

タコ 520㎎

牡蠣 1130㎎

ホタテ 769~1006㎎

アサリ 664㎎


魚でも深海にいるタラなどは、自身を水圧から守るためタウリンを多く持っており300~450㎎ほどあります。

タラも含め、上に挙げた海産物は低脂質で高タンパクであるのも特徴。

年齢を問わず安心して摂取できる食材です。



これからの時期にお勧め料理

青森県の郷土料理に”イカメンチ”があります。

これは薬膳的にも春から夏におススメしたいメニューの一つです。


肝と腎に作用し経絡の経脈(体の縦に走る気と血の通り道)を整えるイカ。

そして肝・胃・腎に作用しバランスを崩しやすい五臓を整えてくれるキャベツを使います。


【材料】

イカ 200g

キャベツ 100g

ニンジン 50g

卵  1個

片栗粉 大さじ2杯


イカ一杯がだいたい300gなので、内臓や骨を取り除くと200g位です。

ゲソを入れた方が美味しいですが、お好みの部位や冷凍物など手に入るもので大丈夫。家庭料理なので気楽に作りやすい量でお楽しみ下さいね。


【作り方】

1.イカ・キャベツ・ニンジンをみじん切りにして、卵と片栗粉を混ぜる。

2.フライパンに多めの油を入れ、1をスプーンで落として焼く。



人間用には玉ねぎを50gを足し、酒・醤油などで味付けして同様に焼いて下さい。

グラム数で書きましたが、要するにイカと野菜が1:1になれば焼く時にまとめやすいので、お好みで野菜の比率を変えても大丈夫です。

冷えが気になる方なら生姜を加えても良いと思います。



人間はおつまみ、おかずの一品に。

ワンちゃんにはおやつやフードのトッピングに。

ご飯を加えれば手作りご飯メニューになります。


飼い主さんも一緒に季節や体調に合ったメニューを楽しんで頂けたら嬉しいです。

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