万物が静かに閉じこもる季節
日が最も短くなり、朝起きるのが辛い冬。
寒くて外に出たくないし、夕暮れも早いから活動時間も短くなります。
でもそれでいいんです。
冬の養生法を書いた古い書物にも
「夜は早く寝て、朝はゆっくり起きろ」
的なことが出てきます。
「冬はなかなか布団から出られない・・」
というあなたは正しいのです。
この季節を健康に乗り切るための養生法を実践しているのです。
(でも夜更かしや遅刻はダメよ)
冬は元気の素を貯える時期であり、この時期の過ごし方は次の1年の健康を左右します。
脳を司る腎
冬の臓器”腎”は生まれ持った元気を発する場所であり、この
元気が少なくなる=腎の衰え
と考えます。
そしてこの腎の衰えは、”老化”とも言えます。
実際、腎の衰えは
・足腰の弱り
・腰痛
・耳が遠くなる
・歯や骨が弱くなる
・脳の衰え
などに繋がります。
腎とこれらの器官は相互に関係しているので”腎”だけをケアすれば良い・・というのではなく、
・足腰を鍛える(骨に負荷をかける)
・デンタルケア
・脳トレーニング
をすることで、腎の衰えのサポートにつながります。
そしてこれらはシニアになってから気を付ければ良いのではなく、一生を通して実践すべきことです。
犬の認知症のご相談を受けることも増えてきましたが、若年からの”腎”ケアはシニア期を健やかに過ごすポイントになります。
先天の精と後天の精
生まれつきの元気(=先天の精気)はそれほど多くありません。
そして時と共に、徐々に消耗していくものです。
そこで”後天の精”と呼ばれる、食餌によって補充される元気があります。
これに関わるのが”胃・脾”です。
つまり
食べたものを消化・吸収
↓ ↓ ↓
血・気・津液(水)を作り出す
↓ ↓ ↓
”腎”に貯える
という流れで生命活動を維持していくのです。
よくご長寿の方のインタビューで
「長生きの秘訣はなんですか?」
という質問がされますが、多くの方が
「何でも良く食べること」
とおっしゃります。
食事の内容も野菜メインではなく、肉も魚もよく食べている方が多いです。
まさにこれは”後天の精”が的確に補充されている典型的なケースで
胃・脾がしっかり機能している=しっかり食べられる
=腎の衰えがゆっくり進んでいる状態
と言えます。
同時に『しっかり食べられる』ということは歯の状態も良く、ここでも腎がしっかりしていることを物語っています。
腎臓の時間
東洋医学では各臓器ごとに、活動的になる時間帯と休む時間帯があると考えます。
腎臓が1日の中で最も活動的になるのが17時~19時。
そして19時~21時に最も活動が低くなります。
よく夕飯があまり遅くならない方が良い・・と言われるますが、21時以降副交感神経が優位になることの他に、この腎臓の活動時間からも21時前までに終えていた方が良いと思います。
先ほど書いたように、持って生まれた”先天の元気”の消耗を、食餌によって入ってきた”後天の元気”で補います。
そのため腎臓が活動的な時間に食事を摂ると、腎臓への貯えも効率的なのです。
同時に夕方になると下半身のむくみや足腰のだるさがひどくなる場合は、この時間帯にマッサージなどを受けたり、運動をすることで腎を強化できます。
シニアになるとお散歩の時間や距離が短くなりますが、その場合も朝より夕方を中心にしてあげると腎を補うことができます。
ちなみに『腎に貯えられている先天の元気がなくなる』
というのは、決して
『腎臓が悪くなる』
という意味ではありません。
老化は病気ではありませんから、薬で良くなるものでもありません。
しかし特効薬はなくても、日々の積み重ねは毎日を穏やかで、健やかな日を作ってくれます。