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東洋医学から見る43~湿気と熱中症時々結石&皮膚炎


湿気との闘い

年々猛暑日が増え、ヒトもイヌも堪える季節です。


漢方の古い書物は中国大陸で書かれたものなので、中には「日本ではどうかな?」という記述や処方も見受けられます。



実は日本にも独自の和漢薬や、中国から伝わり独自に発展した診断法や治療法、処方などもあるのですが、多くが口伝だったため、明治維新で多くが失われてしまいました。



近年、あるお医者さんが日本独自に発展した診断法や治療法、処方を研究され、ご自身のクリニックで実践されたところ効果を上げているのを知りました。

(うんうん。やっぱりそうだよね~(^^♪)



同じアジアでも、日本の暑さの特徴はなんと言っても『湿度』


タイやフィリピンなどでも雨季と呼ばれる時期はありますが、日本の梅雨のように一日~数日も、しとしと降り続けるということはありません。


明け方や夕方に短時間降って、その他の時間帯は太陽が照り付けているような環境です。



つまり年間平均気温とか年間降水量という数字からは見いだせない”湿”が日本の夏にはあります。

これが熱中症対策も非常に厄介にしています。


水分補給では解決しない熱中症

日本の環境だとイヌもヒトも”湿”の弊害による体調不良や、そこから病気に発展することが多いように思います。



梅雨時、気温は高くても洗濯物が乾かないように、体からも”湿”を出すことが困難になります。エアコンを使ったり除湿器を使っても、カラッとは乾きませんよね。


体もまさに同じで、体内に湿気=水が滞ったまま、エアコンで気温だけが下がることで”冷え”に繋がってしまうのです。



滞った”水”を全身に回して体温を下げ、排出させることができればいいのですが、ミネラルを含んだ”鹹味”がないと浸透圧の関係で排出されず、移動もできず体内に滞ったままになります。



細胞内で溜まれば『むくみ』として表れ、胃に溜まれば漢方で『胃内停水』と呼ばれる状態になり、夏バテの症状としてよく表れる食欲不振や消化不良という症状になります。


また腸に溜まれば『腸内停水』となり、お腹の冷えや下痢として表れます。



そうして体の一部に水が滞って全身を冷やせないので、体の熱はどんどん上がります。



熱=温かい空気は上に流れて行きますよね。


体の熱も同じで、水が滞っている部分(胃腸や手足の末端など)は冷えているのに、熱を冷ましてくれる水が回ってこない頭の方に熱がどんどん上がって行きます。



東洋医学で『頭寒足熱』であると健康な状態だと考えますが、これだと『頭熱足寒』です。


するとめまいや頭痛といった熱中症の初期症状が出始めます。



このあたりで適切な”鹹味”である自然塩が補給できると、必要としている所に水が移動し始め吐き気がすっきりしてきたり、腎臓が排出できるようになります。



しかしこの時点で、ミネラルウォーターや麦茶など水分だけを摂取すると、”水毒”という状況になり熱中症の症状が進んでしまいます。



現代の”塩分”の多くは精製塩であるため、本当の意味での”鹹味”が足りていません。



伝統的な発酵調味料である味噌や醤油なども、多くが精製塩で短時間で製造されたものが主流となり、中にはダシ入りという名のアミノ酸調味料(グルタミン酸ナトリウム等)入りのものも・・・。こういったものは確かに”ナトリウム”は含まれていますが、本来の”鹹”ではありません。


『減塩』運動が盛んになって久しいですが、減らすべき”塩”はこの人工的な”ナトリウム”の方で、ミネラルを含んだ自然塩はむしろ不足しているのです。



その上腎臓を負かす関係にある”甘味”が溢れている昨今。

甘味も胃・脾を助ける味なので、大切なのですよ。

でも現代は果物やイモ類も品種改良が進み、とても糖度が高い上に、大量の糖分を使った飲み物や食品があふれています。


・鹹味の不足

・過剰な甘味


この状態の体にいくら口から水分を補給しても、血管には入って行かないので胃や腸に滞り、腎臓から排出できないのです。



1日2ℓは飲みすぎ

熱中症対策や美容のために、水をたくさん飲む方がいらっしゃいますが、欧米のような乾燥した環境ならともかく、これほど湿度の高い環境下で、その健康法は合っているかは疑問です。



汗も余分な水分を出してくれますが、湿度が高いと発散できる量は限られます。

水をたくさん飲んでるのに熱中症になる状況を漢方的に考えると、体内に滞った水が”お湯”になるようなことが起きるからだと思われます。



欧米的な気候で体内の熱が上がると、水分をどんどん発散してくれるので、結構水を飲んでも大丈夫なのですが、湿度の高さで発散できない状況で飲んでも、蓋をした煮えた鍋にお湯を足すようなものです。



室内にいて、さほど暑いと感じてなくても熱中症となった場合は、体内でそんな状況になっていると考えられます。


そのため初期症状は先に書いたように、熱の蒸気が上へ上がり始めた証に頭痛やめまい、吐き気に始まり、次いでお小水として出せなかった水分を大量の汗として出す。

続いて吐いたり下したり・・・。鼻水や涙としても排出しようとします。(経験者は語る💦)


数字で表せない基準

同じひまわりを植えた鉢植えでも、乾燥した日向に置いたものと、日陰のジトジトした所に置いたものに同じ頻度・量の水をあげたらどうなるでしょう?



『ひまわりの育てるには1日2回水やりをしましょう』と栽培法が書いてあっても、土の状態やその時の天気を見ながらあげなくては、根腐れしてしまうでしょう。



つまりエアコンの室温設定が何℃なら大丈夫とか、体重あたりどのくらいの水を飲めば大丈夫という基準はあるようでないのです。



特に犬の場合は床に近い所にいるので、室温設定より低い温度の中にいると思った方が良いでしょう。

「熱中症対策にはちょうどいいのではないか?」

と思われるかもしれませんが、今日のテーマである”湿”の問題は汗をかけない犬猫ほど重要です。



犬猫は「はあはあ」と息をすることで体内の熱を放出し、舌や口腔内の水分を蒸発させることで体温を下げます。



しかし日本の夏の”湿気”では、蒸発させられない上に、床に溜まった冷気で冷やされ、暑いのに”冷え”がある・・という難しい体調になります。


早い時期から注意が必要な熱中症

毎年ゴールデンウイークの頃から、ワンちゃんのお腹の調子が崩れたり、元気だけど突然下痢した・・というご相談が増えます。



季節的にいわゆる”木の芽時”で、土用期間でもあるので注意深くお伺いしますが、結構な割合で熱中症の初期症状と思われる”お腹の不調”のワンちゃんに出会います。


犬猫も”湿”によって、水分を発散できない状況になると、お小水の回数や量が減り、下痢や嘔吐という形で排出します。



この場合の下痢や嘔吐は、余分な水分を排出しているだけなのでいいのですが、問題は(特に猫)お小水が減ることによる結石や膀胱炎が起こりやすくなることです。


個体によっては、湿疹や耳の炎症といった皮膚炎として出ることも。



そのため治療しても何度も繰り返したり、長期に渡って治りづらい場合は、漢方で言うところの”水滞”を改善する食餌や養生を試すのもいいかもしれません。



ちなみに犬や猫も熱中症になると、まず大量のヨダレを出しますが、その後吐いたり下したりします。


応急処置として、幼児用の経口補水液を飲ませたり、スポーツドリンク(人工甘味料を使っていないもの)を薄めて飲ませて下さい。


犬猫は汗をかけないため、ヒトより熱中症の進行が早いので注意が必要です。

ぐったりしていたら、速やかに獣医さんの診察を受けることをお勧めします。

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