東洋医学から見る39~涼(寒)性食材が体を温める理由
- 青い森工房
- 2022年11月17日
- 読了時間: 4分
更新日:2023年1月14日

冷え性は冷たいものを飲んじゃダメ?
たまに
「冷え性だから夏でも冷たいものは絶対口にしない」
「冷えは万病の元だから寒性食材は摂らない」
という方がいます。
確かに冷えは良いことではないし、改善した方が体調はよくなると思います。
しかし冷えを解消する漢方薬にも、体を冷やす鉱物系生薬を配合するように、食材も使い方と量が大切です。
そのため例えば、暑くて汗をかきすぎることで冷えを助長するケースもあり、その場合は冷えた物を飲み、一旦汗を引かせるというやり方もあるのです。
また常に温かいものばかりだと、『体温を上げよう』というスイッチの反応が弱る・・ということもあります。
まさに漢方薬の処方はそういう考えで、少し冷える生薬を入れ『体を温めよう』という反応を引き出します。
これは薬膳も同様で、温性や熱性食材ばかり取り入れれば、冷えが解消する・・ということにはなりません。

そばかっけ
犬猫向け食餌でも注目されるソバ
日本では麺状の蕎麦を中心に、たまに蕎麦がきや青森県の南部地方にはシート状にした蕎麦を三角形にカットし、つゆ物やお鍋に入れる”そばかっけ”なる食べ方もあります。
フランス ブルターニュ地方名物には”そば粉のガレット”があり、ロシアではそばの実をふかしたおかゆのようなものもあります。
薬膳的には涼性(流派?によっては寒性)に分類されているのに、栽培されているのも、日常食として取り入れているのも寒い地方というのは興味深いですね。
青森県の南部地方は米栽培に適していなかったことから、そばを作付けしていましたが、ブルターニュ地方も小麦栽培に向いていなかったためそばを栽培したようです。ロシアも同じでしょう。
新そばは秋に出ますが、まさに秋から冬にかけ気温が下がり、乾燥する環境時におススメしたい食材です。

そばの力
そばに含まれるルチンが血管(特に毛細血管)を強くすることが注目されて久しいですが、その他抗酸化作用なども分かってきて、健康食として海外でも注目を浴びています。
薬膳的には、
1.胃腸を強くする
2.腸内に滞留する未消化物を取り除く
3.気の上昇によって起こる症状(しゃっくり、激しい咳、喘息など)を抑える
4.肝臓や腎臓で熱がこもり乾燥した結果、陽の気が抑制できなくなった状態を改善する
とされ、慢性の下痢や急性腸炎、膵炎、喘息がある時の食餌に向いています。
例えば最近多い膵炎には、そばに鯛やタラ、ブロッコリーを組み合わせて。
喘息ならばタンパク質はマグロ、鮭、鶏肉、羊肉のいずれか。そこに野菜はニンジンやカボチャなどを合わせると良いでしょう。

4番目の理由が重要なわけ
上記四つの理由のうち、犬猫の秋~冬におススメしたい食材の一つとして特に重視しているのは、4番目の理由です。
1と2は夏の疲れが出る秋土用(胃・脾)にも役立ちますが、それ以上に秋の臓器・肺は、胃・脾のエネルギーで活動すると考えられているので、急に冷え込むことで起こり得る体調不良に対する防御力を高めておくことができるのです。
また肺がダメージを受けると、腎の負担が増えると考えられているので、すでに腎臓病や膀胱炎などの持病や既往症がある場合、肺を健康な状態に保つことは、腎を守ることにもなるのです。
このへんが東洋医学的な考えの大切な所で
『腎が弱い(悪い)から腎を高めるor助ける食材を摂れば良い』
ということにはならないのです。
また肺と肝は相克の関係で、肺が肝の活動を抑制する関係にあります。ということは、肺が弱まると肝が暴走する可能性があります。

体内のバランス崩れが引き起こすのは内臓疾患だけ?
肝が暴走して出る問題の一つは、内臓疾患として出るだけでなく「怒りっぽくなる」ということです。
犬猫の場合だと”イライラする””攻撃的になる”と表現される状態になります。
こんな時にもそばは役立つのです。
若く血気盛んな個体から、炎症性の疾患が起こっている時、元気が足りなくなったシニア期の個体など、合わせる食材や量によって、現代の犬が抱える多くの問題をクリアする度量のある食材です。
また犬猫はあまり食べてこなかったこともあり、アレルギーも起こりにくくなってます。
市販のそばは、つなぎに小麦を使用しているものも多いので、小麦アレルギーで手作り食を試したい場合は、確認してからご使用ください。
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