ゴボウの花
大陸から伝わった?
根野菜として日常に根付いている長芋とゴボウ。
どちらも大陸から伝わったとされています。
ただ近年の遺伝子解析で、現在広く食べられている長芋の品種ガンクミジカは青森県七戸の在来種と判明しています。
またゴボウに至っては、青森市にある5900年~4200年前の三内丸山遺跡から種が出土しています。
ゴボウは
『ヨーロッパかシベリアが原産で平安時代に中国を経由して入ってきた』
となっていますが、これも見直す時期かもしれません。
薬としてのゴボウ
確かに長芋もゴボウも”薬”として伝わったのは平安時代かもしれません。ただ食品としてはそれ以前から存在していたように思います。
いや縄文時代の極めて高い精神性や文化的な生活が分かってきたことを考えると、その当時から薬草の知識はあったのでは・・・と思うのです。
それは大量に出土した植物の種を見た時に感じた直感でしたが、1500年間も同じ場所での生活が続いたことを考えると”医療”に匹敵するものがなかったことの方が不思議です。
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ゴボウは漢方薬では『牛蒡子(ごぼうし)』と呼び、種を煎じて飲みます。
消炎、抗菌、解毒作用もあるため、風邪症状全般に効果があります。
特に扁桃炎などひどい喉の腫れや痰が出る時などに使われます。
また消炎作用と共に母乳の通りを良くするとされるため、乳腺炎にも古くから使われています。
慢性の蕁麻疹やアトピーなどに使われる消風散にも配合され、化膿した皮膚炎に良く効きます。
扁桃腺炎や風邪に使われる駆風解毒散や銀翹散にも牛蒡子が配合されています。
風邪薬として有名な葛根湯は初期症状に向いていますが、唾が呑み込みにくいほど腫れていたり発熱していたら駆風解毒散。
銀翹散は喉の痛みや腫れ以外に、頭痛や咳など他の風邪症状がある時に。
牛蒡子は冷やして炎症を抑える働きをするので、強い冷えがある人には使えませんが、多少の冷えであれば乾煎りしてから使うと良いとされています。
長芋と自然薯の違い
漢方薬としての長芋は『山薬(さんやく)』と言います。
薬として入ってきた時は長芋(ヤマイモ)と自然薯(ヤマノイモ)が混在していたようです。薬膳でも長芋と自然薯は”山芋”としてひとくくりになっています。
一般的に長芋と自然薯の差は
・長芋=栽培してるもの
・自然薯=山野に自生しているもの
と説明している所もありますが、両者は染色体の数が違うことが分かっていますので、別物ものと考えた方が良さそうです。
生薬として使う時は皮をむいて乾燥したもの、又は一度蒸してから乾燥させたものを使います。
世界中のイモ類の中でも、生で食べられるというのは非常に珍しい特徴ですが、加熱しても美味しく食べられ、すりおろしたものを冷凍保存することもできます。
犬猫にもアレルギーが無ければ、ゴボウより手軽に与えられるので、
・胃がムカムカしている時
・食べ過ぎで胃を休ませたい時
・シニアの老化や白内障防止
・体力回復時
などに取り入れることをお勧めします。
お肉を茹でたスープにとろみをつけたい時なども使いやすいです。
和漢にも出てくる山薬
肺・脾・腎に作用し、疲労や倦怠感の改善に役立ちます。
消化を促進して胃を整えてくれるので、食欲のない時や疲労や加齢で食事が進まない時にサポートしてくれるでしょう。
また肺を潤してくれるので、咳が出る時にも向いています。
近年の研究で、長芋に含まれるたんぱく質ディオスコリンAに抗ウィルス効果があると判明しています。
これまでは経験的に
”滋養強壮に”
”風邪が流行っている時に”
食べると良いと言われてきましたが、具体的に有効成分が分かってきたわけです。
『肺を潤して咳に良い』という効果も、実はディオスコリンAの作用かもしれません。
漢方薬や和漢薬も『なぜ効くのか』分からないものは数多くあります。
民間療法は猶更ですが、有効成分は複雑に絡み合って効果を発揮するので、特定するのは困難を極めます。
長く食習慣のあるものは、味以外にも多くの魅力を持っていると思っています。