腎臓病は慢性化し、深刻な状態になるまで発見されないことが多いです。
人間も最近、慢性腎臓病は増加傾向にあり、8人に1人が罹るとされています。
人間の場合は、主に糖尿病を中心とした生活習慣病が原因となり発病することが多いです。
犬や猫も、昔より糖尿病が増えてきているとはいえ、人間ほど比率は高くありません。
しかし腎臓疾患の比率は犬約10%、猫で20%以上と言われています。
特に猫の場合はシニア期以降、年々発症例が増え、15歳以上の猫の8割以上が発症すると言われています。
犬猫の発症原因
40~50年前は、レプトスピラ感染が原因の大半でしたが、現在は衛生環境も良くなった上、犬はワクチンも開発されたため感染症からの腎臓病は、特に都市部にお住まいの場合、かなり稀と思われます。
ただ今年(2021年)神奈川県内で犬の発症が報告されたので、緊急的にレプトスピラ単体でのワクチン接種をしている病院もあります。
4種や5種の混合ワクチンには、レプトスピラワクチンが入っていないので、普段都市部にお住まいでも、キャンプや水遊びにお出かけになる方は、かかりつけの獣医さんにご相談されると安心かもしれません。
一方、猫の場合はワクチンがない上、外と行き来して、時にネズミを捕まえるような環境であれば、特に注意が必要です。
しかし室内飼いが増え、腎臓病をサポートするフード類が充実してきた現在でも、残念ながら減少しているとは言えません。
近年、発病の原因の一つにイエネコ独特のホルモンが関係しているのではないか・・とも言われてきましたが、病態の解明にはまだ時間がかかりそうで、決定的な治療法も治療薬もないのが現状です。
人獣共通感染症のレプトスピラ症
これは主にネズミなどのげっ歯類、野生動物、ウシやブタといった家畜なども保菌しており、保菌動物の腎臓に定着し、尿と共に排出され感染を広げます。
そのため保菌動物の尿で汚染された水や土壌からも感染し、最近では2011年に高知県の電柱設置会社で集団感染したケースがあります。
この感染症は、一般に東南アジアや中南米での発生が多いとされていますが、大雨や洪水など大きな水害の後は、世界中どこでも発生しています。
日本も毎年のように大きな水害が発生するので、復旧作業の際には気を付けなければいけない感染症です。
特に土砂崩れや川の氾濫後の土砂には、野生動物や家畜の尿が混じっている可能性があり、それに触れると感染します。
復旧作業中は、手や足に気が付かないうちに小さな傷を作ることもあり、そういった傷があるとさらに感染しやすくなります。
高知のケースも、大雨の後に作業した際、軍手はしてても経皮感染を防ぐ手袋をしていなかったり、長靴にぬかるんだ泥が入り込んだまま作業を続けたことが原因と推測されています。
古くから知られている病気が多いのに、分からないことが多いグループ
ただ、実はこのレプトスピラ症の原因となる細菌が所属するスピロヘータというグループは、研究途中で意外と分からないことが多いのです。
スピロヘータの中でもトレポネーマ属には梅毒の原因菌となる”梅毒トレポネーマ”がいますし、ボッレリア属にはマダニが媒介して感染する”ライム病”の原因となる細菌もいます。
また人間の赤痢は全く違うグループですが、豚赤痢なんかもこのスピロヘータのグループで、ワクチンがない割と厄介な病気が多いです。
スピロヘータは最近まで、細菌とは別の微生物とされていて、2012年になってだいぶ整理されてきたような状態です。
まだ整理途中であるのは間違いなく、今後区分が変わったり、「やっぱり細菌じゃない」ということにもなるかもしれません。
それだけにこの細菌と腎臓病との関係も、”過去のもの”として片づけるのは、もう少し待った方がいいかもしれません。
古くからあった感染症は、動物の細胞に内在してしまったり、特殊な抗体が作られている可能性もあり、予想外の影響を及ぼしている場合があります。
参照ブログ⇒ネコ白血病ウィルスがヒントになる感染症対策