本年も宜しくお願いいたします。
さて新年恒例の干支動物にちなむテーマということで、茶トラやキジトラの毛色が生まれる不思議なメカニズムを取り上げます。
被毛に関わる遺伝子は10個ほどわかっているのですが、そのうち猫の元祖柄と言われるキジトラを始めとした日本で一般的に見られる毛色に関わる遺伝子は4つあります。
(話が複雑になってしまうので、今回はロシアンブルーやブリティッシュショートヘアのようなブルーというか美しいグレー系の毛色を作るI遺伝子の話は外します。大好きな毛色なんですが・・・)
それはW・S・O・Aです。
W⇒ホワイト
S⇒スポット
O⇒オレンジ
A⇒アグチ
この四つのうち、Wつまり白い毛を作る遺伝子は一番強いです。
W以外の遺伝子座に何を持っていようと、Wを一個持っていれば白猫になります。
これが次に出てくるSやO、Aとの兼ね合いで毛色が決まるパターンと一番違うところです。
「え?じゃあ、アタシみたいに足やお腹が白いのはWじゃないの?」
そうなんです。
↑のソフィ嬢のような毛色の出方は、S=スポット遺伝子の仕事です。
S遺伝子はWに次いで強いです。
そのため地色が黒だろうが茶トラだろうが、SSならもちろんSsなど、とにかくSが入ると足やお腹に白のスポットが入ります。
例えばSとO=オレンジ遺伝子が組み合わさると、ソフィ嬢のような茶トラ×白になるわけです。
(茶トラなのに、なぜオレンジか?というのはさておき)
後で出てくるA遺伝子の組み合わせによってキジトラ×白、あるいはハチワレというのもこのS遺伝子が関わっています。
ただ劣性の対立遺伝子ssになった場合は、白のスポットは入りません。
O(大文字のオー)オレンジ遺伝子
このO遺伝子は性染色体X上に存在すると全身茶トラになります。
性染色体は猫も人間と同じで、オスはXY メスはXX。
茶トラ柄を出すO遺伝子は、なぜかYに関与しないので、オスの場合は、XにOが乗ると全て茶トラになります。
ただOの対立遺伝子o(小文字のオー)が乗った場合は、次の遺伝子座 A遺伝子によって毛色が決定します。
メスの場合は?
メスは性染色体がXXなので両方にO(大文字のオー)が乗ってOOになったら当然全身茶トラになります。
しかしoo(小文字のオーが二つ)になるとオス同様、毛色の決定はA遺伝子に持ち越されます。
そしてメス独特のOo。これが三毛になるんですね。
ただ次のA遺伝子の出方によって、白×茶×キジなのか白×茶×黒なのかなどバリエーションが変わります。
なとなく”茶トラ”というとオスのイメージが強いのは、このような事情でオスの方が生れやすいというのがあると思います。
アグーチ
A遺伝子のアグチとは?
げっ歯類 アグーチの柄のようだから黒や茶の縞模様を作る遺伝子をA=アグチ遺伝子と呼んでます。
アグーチとは上のような動物なので、確かに色の雰囲気は似ていますが、サバとかキジの方が的確かもしれません。
この遺伝子はO遺伝子と違い、性と関係なく働き、AAまたはAaでキジトラ。aaだと黒になります。
サバトラはどうした?
これは冒頭で『ロシアンブルーやブリティッシュショートヘアーのようなグレー系は外します』とお断りしたように、サバトラの出現にはI遺伝子という別の遺伝子が関わってきます。
よく毛色と性格の特徴は語られますが、野生下で目立たないキジトラから始まった猫が、このように複雑な遺伝子の決定によって毛色や毛の長さのバリエーションを増やしたのはそれなりの戦略があってのことです。
性染色体に働きが制限される毛色遺伝子もあり、猫が今日まで絶滅しないでくれた戦略はすごいと思います。
血液型に多様性が生まれた理由と同じように、その毛色を生み出した理由は様々で、性格にある種の傾向があるのは当然だと考えます。
まあ結局、どんな毛色だろうがカワイイのが猫ですが(;^ω^)
参照ブログ⇒犬猫の血液型性格診断は可能か?