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多様性が絶滅を救う~遺伝的多様性が必要な理由


雑草を栽培するのは難しい

『多様性の社会』と盛んに言われますが、これは人類が本能的に絶滅の危機にあることを気づいたのでは?と思うことがあります。



世界的なパンデミックの真っただ中であり、まさに『生物的な多様性』が試されているとも感じます。



例えばいわゆる”雑草”と呼ばれている野生の草花は、ちょっと油断すると伸び放題になります。


田畑に生えれば、栽培作物の生育を阻害し、アスファルトやコンクリートの隙間に生えると、あの固い塊が破損するほどの力があります。


あのパワーの源は、”多様性”に他なりません。

なぜならあの雑草をピンポイントで選んで、プランターで栽培するのは意外と難しいのです。

(放っておいたプランターには無造作に生えますが)



普通、買ってきた種のパッケージには、種まきの時期と開花(または収穫)の時期などが記載してあります。

蒔いた種は、ほぼそのスケジュール通りに芽が出て、水やりや日当たりに問題なければ順調に育つでしょう。


裏を返せば、水が足りない(or多い)、日当たりが悪い(or強すぎる)等の条件が合わないとたちまち枯れたり、開花しないことがあります。



ところが野生の草花たちは、同じ時期に種が土に落ちても、同じタイミングで芽を出したり、開花することはありません。


一斉に芽を出したり開花したら、もしその直後に台風かなんかが来て、流されたり飛ばされたりしたら、絶滅してしまうからです。



多少水分が足りなくても発芽できる種があったり、成長は遅いけど風に強い茎をつくれる種があったりと、様々な個性を持つことで”種全体の絶滅から逃れる対策”を持っているのです。


だから畑で抜いても抜いてもなくならないのです。


決して早く大きく成長することが、優れた戦略とは限らないのが生物なのです。


家畜・家禽の多様性

この多様性の問題は植物だけでなく、動物の世界も問題が顕著化しつつあります。



例えばここ毎年のように、鳥インフルエンザや豚熱のニュースを目にします。


家畜や家禽類は、出荷時期に同じサイズ、同じ品質になるよう作り出されたものなので、遺伝子に多様性がありません。

そのためひとたび感染症が流行り、その病原体に弱い体質だったりするとあっと言う間に感染が拡大してしまうのです。




犬も多くの犬種が、人間の都合に合わせて作り上げられています。



これはペットなら『飼いやすい』、使役犬なら『能力が高い』犬を生み出すためです。



ただ性格も行動パターンも同じような犬ばかりになると、生物的には必ず弱点が出てくるものです。

例えばある種の感染症に弱いとか、遺伝病が増えるとか・・・。


犬種の標準ってなんだ?

たまに「○○という犬種は、おとなしくて飼いやすい・・と聞いていたのに、すごく活動的で飼いきれない」

「吠えない犬種だと聞いていたのに、よく吠える」

というような理由で返品したり、捨てる人の話を聞きます。



理由に差はあれど、要するに

「よく聞いている犬種の性格と違う」

とか

「イメージと違う」

というような理由で飼えない・・というのですが、人間の身勝手さの極致みたいな話です。


たぶんそういう方が”イメージ”する犬なんてこの世にいません。

(あなたこそ愛犬家のイメージとは違う人間です)



いくら血統書付きの犬でも、生物としての生き残りをかけて、時に性格や体格に変化を持たせて生まれてくることがあります。



それは例えその犬種の標準とは違っても、生物的には決してダメな犬ではないのです。

(ま、”標準”なんて人間が勝手に作った基準で、生物としての標準なんて決められません)


むしろその犬種、あるいは”犬”として生き残りをかけて生まれた救世主である可能性があります。



染色体の組み合わせは無限大

よく『両親から遺伝子を一本ずつもらう』と言いますが、正確には『細胞内の核内にある染色体を1本ずつもらう』のです。



人間の染色体は46本ありますが、2本で一対になっているので、23対ということになります。


ちなみにチンパンジーは48本

猫とブタは38本

ウシは60本だけどウマは64本です。

そしてニワトリと犬は78本で形成されています。



この本数の差が体の大きさとは関係ないのは一目瞭然です。

かといって生物としての複雑さと関係しているとも言えません。



ちなみにDNAはこの染色体の中のヒストンというタンパク質に巻き付いた状態で折りたたまれて収納されています。



染色体は両親から引き継いだ組み合わせだけでなく、途中で独自の変異を起こす場合もあります。


こうなるともう完全オリジナルで、両親にもその先祖にもなかった特徴を持つ・・ということになります。

ただその変異した場所によって目に見える特徴(毛色とか骨格など)となる場合や性格とか筋肉の性質など見えにくい場合もあります。



犬の場合は、染色体が78本もありますから、多様性に満ちていて当たり前です。


よく『純血種より雑種(ミックス)犬の方が、体が丈夫』・・という話も聞きますが、それは遺伝的に多様性を持つからです。



もちろん優れた所だけを引き継れば理想ですが、実際は人間にとって不都合な特性や遺伝的な病気などを引き継ぐ可能性もあります。



そういう意味では、もろ手を挙げて喜べることばかりではありません。

しかし”多様性を持つ”ということは”可能性を拡げる”ことにはなります。


そのイメージが事実とは限らない

石川さゆりさんのヒット曲「津軽海峡冬景色」の影響で、世間には青森県民は”無口”だというイメージがあるように、ドラマや映画の影響で、ある特定の犬種のイメージが固定されていることも見受けられます。



犬の場合、事実は

「確かにそういう性格の犬もいるが、その兄弟ですら同じとは限らない」

というところです。


ちなみに青森県民の場合は

「そういう人もいるが、あまり当てはまらない」

という感じです。



あの歌詞、よく見ると青森駅で青函連絡船に乗り換える人が”無口”だと謳っています。

青森駅で下車した青森県民の多くは、陽気でおしゃべりな人だったと思います。

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