五行の中の膵臓
五行とは自然哲学の思想に出てくる説です。
万物は五つの元素『火・水・木・金・土』で作られていると考えられています。
この5つがそれぞれ影響し合い、循環すると考えられており、季節、臓器(五臓・五腑)、味(五味)と密接な関係にあります。
木=春=肝・胆=酸味
火=夏=心・小腸=苦味
金=秋=肺・大腸=辛味
水=冬=腎・膀胱=鹹味
土=土用=脾・胃=甘味
昔から『五臓六腑』と言い方がありますが、ここでは五腑しかありません。
六腑目の三焦は中国漢方独特の存在で、熱を発する器官で全身に気を循環させていると考えられています。
三焦は『3つの焦』という意味で、腹部を三つに分け位置によって上焦・中焦・下焦と呼ばれます。小腸と共に夏の腑に属すると考えられています。
では膵臓はどこへ行ってしまったのかと言うと土用の臓器”脾”に含まれていると考えられています。
五臓と五腑の関係性
両者は表裏の関係で、片方が不調になるともう一方も影響を受けるという関係です。
どちらがより重要かというのではなく、車輪のように二つがスムーズに循環することで活動が保てるという関係です。
間もなく夏の土用の時期に入りますが、土用は特に湿気が苦手です。
それは一般的な土と水の関係を想像して頂くと分かりやすいですが、過剰な水分は土砂崩れを引き起したり、植物の根を腐らせたり、カビが発生したり・・・。
土用は立春・立夏・立秋・立冬の前約18日間ありますが、過剰な湿気が停滞すると問題が起こります。
根が傷むと土からの栄養吸収がうまくいかなくなりますが、立秋前の7月下旬から8月上旬というのは湿気続きの梅雨が明けるころです。
ジメジメからの気温上昇で食欲不振や食中毒などを聞くことも増えます。
犬猫の場合は食欲不振の他、草を食べたがる、お腹の不調。
これは
食欲不振・草を食べたがる⇒胃の不調
食中毒・お腹の不調⇒胃と表裏一体の脾臓・膵臓の弱り
脾臓はリンパ球の産生や古い血球の処理、外からの異物処理など、免疫系と密接な関係にあります。
また膵臓も脂肪やタンパク質を分解する強力な消化液を出すだけでなく、インシュリンを始めとした全身のホルモンの原料を作っている所です。
この二つの臓器の弱りは、免疫力の低下を招き、消化力を落とし、ついでにホルモン原料の供給不足で睡眠の質の低下なども起こります。すると
・食欲がなくなる
・だるい
・夏風邪をひく
・お腹を壊す
・眠りが浅い
といういわゆる夏バテと呼ばれるような症状として表れます。
これらは土用の臓器・腑が過剰な湿気により機能低下を招いている状態です。
膵臓の異常を知らせる皮膚のかゆみ
体内の湿気の滞りが皮膚の異常として表れることも多いですが、膵臓の異常が皮膚のかゆみとして出ている場合もあります。
皮膚の異常が出ている時は膵臓に注意で、膵臓の異常が起きている時は皮膚のかゆみも起こりやすいと言えます。
また免疫機能を担う脾臓の弱りは、皮膚のバリア機能が低下したりアレルギーを起こしやすくなり、結果としてかゆみや発疹、脱毛として表れることもあります。
そして特に夏土用の頃は、経験的に膵炎の発症(悪化)も多いように感じてます。
これも梅雨やそれに伴う運動不足などで、湿気の発散が滞ることと関係しているでしょう。
膵臓に問題がある時の食餌
一般的には低脂肪の食餌が勧められます。 各メーカーから専用フードも販売されていますが、総じて脂質が低めです。
しかしすでに炎症を起こしていても、その手前だったとしても、問題は脂質の量より質です。酸化した脂質や加工度の高い脂質を多く含むもの、残留農薬、化学添加物などは膵臓の負担を増やすことが知られています。
もちろんすでに炎症をおこしている場合の食餌は、消化負担を軽減すべく低脂肪の方が良いです。しかし例え低脂肪だったとしても、その脂肪が酸化していたら意味がありません。
そのためこのようなケースこそ、手作り食をお勧めしています。
そもそもドライフードは体内の熱をこもらせるので、膵臓に限らず炎症が起きている時には向いていません。
そのため手作り食が難しい場合は、ドライフードに十分な水分を吸わせてから与えるようにして下さい。
重要な栄養成分として、抗酸化作用のあるカロテンやリコピンを含む野菜。
タウリン・亜鉛・グルタチオン等が補給できる魚介類を中心に食餌を組みます。
具体的にお勧めできる魚介類はタラ・鯛・ホタテ・マス。
野菜はかぼちゃ・トマト・ニンジン。
炭水化物源は、玄米や白米でもいいですが、蕎麦がお勧めです。
できれば更科より、そば殻も含んだ田舎そばが向いています。
まとめ
冷たいものを摂りたくなる時期ですが、それが夏バテへつながる状況を例えると・・・
びしょびしょに濡れた衣類を丸めて日陰に置いておいたら、いつまでたっても乾かないどころかカビが生えてきますよね。
しかし余分な水分を絞って、日向に伸ばせばまた着られるベストな状態になります。
年四回の土用の中でも、最もカビやすい夏土用。
熱中症対策も大切ですが、保冷剤やクーラーで冷えすぎて、水分の循環や発散が滞らないよう注意が必要です。
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