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メラニンの意外な役目


美容の大敵?!メラニン色素。



肌細胞を紫外線から守るために、重要な働きをしているので、無くなったら非常に困りますが、シミ・ソバカスの原因にもなるため日頃からケアしている方は多いと思います。



しかしこのメラニン、植物の病気にも大きく関わっています。


植物の病気の話が、なぜ動物の健康に関係あるのか?

我々を含めて、犬や猫など動物が生きる上で、植物の存在は欠かせません。



具体的にひとつ例を挙げれば、昔から使用されている漢方薬、ハーブから現代医療の最前線にある医薬品の多くは植物由来の成分(あるいはその成分を合成したもの)から作られています。



つまり植物が持つ機能や成分を知ることは、動物の健康に大きく関わっているのです。


なぜか動物の方が”高等生物”と思われていますが、植物の方が生物としての歴史や経験がはるかに長く、何を持って”高等”と言ってるのか不思議に思います。

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メラニンがないと感染できない病気

植物の機能や植物の病気のメカニズムを知ることは、薬の開発や治療のヒントにあふれています。




植物は気候や環境の変化、また病気が蔓延しているからと言って、そこから逃げることができません。


そのため動物より、あらゆる面に於いてはるかに高い防御力を持っています。



植物の細胞には、固く丈夫な細胞壁があるため、すでに葉や実の傷がついている部分、あるいは虫などが媒介しないと、病気に感染しにくい仕組みになっています。



しかし糸状菌のグループには、メラニンを利用して植物の細胞に入りこみ、感染に成功するものがあります。


糸状菌は『菌』と名付けられていますが、いわゆる『カビ』です。

そのため胞子が飛び、それが葉や実に付着して感染します。


やっかいなのは、例えば前年感染した葉や実が落ち土に胞子が残って越冬。

その胞子が暖かくなって発芽。

そこからさらに感染が広がることもあります。



リンゴの黒星病、ナシ黒斑病、そしてイネに感染するいもち病などは糸状菌が原因となって発病します。



どれも防除のタイミングと方法を誤ると、壊滅的な被害となります。



それぞれ原因となる糸状菌は違い、梨でも幸水や豊水、長十郎などいわゆる茶色い梨には感染しないのに、二十世紀梨に特異的に感染する糸状菌もあります。



どちらにしろ何重にも防御機能を構築している植物の細胞壁を突き破ってくる糸状菌。


お風呂場のしつこいカビに悩んだことのない方はいないと思いますが、そこにも糸状菌の強烈な秘密があります。


カビの胞子に触れただけでは感染しません。


例えばイネいもち病菌などいくつかの糸状菌は、胞子を発芽させて付着器を形成します。


付着器の中にグリセロールを満たし、その圧力で植物の細胞壁を突き破って侵入し、感染に成功するのです。

この付着器の外壁にメラニン層があります。

このメラニン層が付着器の強さの秘密で、80気圧もの高圧力で、植物細胞への侵入を可能にしています。


ちなみに一般的な乗用車のタイヤの圧力は270キロパスカル程度が適正とされています。

これはおよそ2.66気圧



糸状菌の付着器が生み出す80気圧という圧力は、とんでもない数字です。



しかしこの付着器の外壁にメラニンがないと細胞は壊れ、グリセロールなどの内容物が漏れてきてしまいます。



このメカニズムを利用して、メラニンの合成を阻害する成分を塗ると感染が抑制されます。




まるで美白美容液のようですが、このような作用機序で病気を防ぐ薬剤(農薬)は、抗菌作用を持たないので、耐性菌を作ったり、他の植物や土壌環境への影響がほとんどないことが評価されています。



一方、糸状菌の側から見ると、メラニンが作れなくなることは命に関わる重大事と言えます。



これからの季節、紫外線が次第に強くなりますが、糸状菌のメラニンの使い方を見ると、日焼け・シミ・ソバカス原因となるただの厄介者と思えません。



厄介者どころか、実は免疫機能維持に重要な仕事をしているかもしれません。

・・・とは言ってもなあ、やっぱりシミ・ソバカスは気になります。


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