カナダの料理家のつぶやきから
ネットニュースにもなっていたので、ご存じの方もいらっしゃるかもしれませんが、カナダの著名な料理家ジュリー・ヴァン・ローゼンダール氏が自国産バターについて
「なぜこんなに硬いんだ?」
とつぶやいたことから、ちょっとした騒ぎになっています。
バターが溶けづらいのは、自宅の室温の低さかと思っていたら、ローゼンダール氏に同意する料理人たちが次々と現れたのです。
そこでオーガニックバターやフランス産など、いくつかのバターを同じ室内に置いて、比較したそうですが、やっぱり自国のカナダ産は溶けづらく、ゴムのように硬く伸びにくいと言います。
なぜそんなことのなったのでしょう?
その原因の一つが、ステイホーム需要でバターの生産が追い付かなかくなったことと関連している可能性があげられています。
生産量をあげるために使った脂肪サプリ
改めて言うまでもありませんが、バターの原料牛乳は、子牛のための母乳です。
つまり出産後、限られた期間しか出ず、乳牛は絶えず妊娠⇒出産を繰り返しています。
そのためバターが不足気味になっているからと言って、出産可能なメス牛を急激に増やすのは困難です。
そこで今すぐ搾乳できる牛の乳量を増やし、牛乳が水っぽくならないよう脂質を維持させるために餌に脂肪サプリを混ぜたそうなのです。
もちろんこのサプリを与えることは違法ではないし、
「牛の健康に影響しない」
・・・と関連団体は言っていますが、牛乳の脂肪酸に影響を与えたのは間違いないでしょう。
問題山積みのパーム油
牧草が主たる食餌の牛に、パーム油から作られた脂肪サプリを与える不自然さ。パーム油は植物性だから、牛にも大丈夫?っていうことでしょうか。
近年、パーム油は生産地の住民が土地を追われたり、過酷な労働問題、森林伐採やそれに伴う森林火災、気候変動、希少動物の激減など、人権上・環境上でも世界的に大問題になっています。
そして食用として使用されるパーム油は、熱帯地域から長時間かけて海上輸送するため、酸化防止剤BHAを添加します。これが問題なんですね。
関連ブログ⇒酸化防止剤BHTとBHA
近年トランス脂肪酸の危険性が広まり、アメリカなどでは消費者が、遺伝子組みかえ菜種油やコーン油に水素添加して作られる植物油(サラダ油)・マーガリン・ショートニングなどを避けるようになっています。
そのため原料の植物油をパーム油に変える動きが出ているのですが、BHA添加もあってアメリカ農務省も
「健康的な代替油脂にはならない」
といった趣旨の警告を発しています。
変わることが自然な姿
バター(butyrum)に含まれる脂肪酸の代表格は、その名もbutyric acid=酪酸(らくさん)ですが、その他ステアリン酸やリノール酸、オレイン酸、リノレン酸が含まれます。
冬場、餌が変わるとミリスチン酸、パルミチン酸などが増え、ステアリン酸やリノール酸など夏場に多かった脂肪酸は減ります。
そのため牛乳やバターは、夏と冬では味わいもコクも変わるのが自然なのですが、食品業界は「色が変わった」「味が違う」というクレームを嫌うのが一般的なので、無理に平均化させる傾向があります。
よくニュージーランド産グラスフェッドバターを買いますが、季節によって色は変わるし、溶け方も国産バターとは違います。日本国内で先に挙げた脂肪サプリを使用しているかは分かりませんが、配合飼料を与えているのは間違いありません。
牛乳は直前まで血液ですから、高濃度の脂質摂取が、牛の健康にどの程度影響を与えるかは、この先数年見ないとなんとも言えないでしょう。ただ本来摂取しないものを人為的に摂取させた結果、今までの牛乳成分と比べて変化が起こっているのは心配です。
脂肪酸のバランスが不自然に変わっているのは間違いなく、そういうものを摂取するヒトへの影響はさらに時間が経ってみないと判明しないと思います。
バターなどの飽和脂肪酸にも長所がある
脂肪酸のバランスが変わっても、バターの栄養成分(エネルギー・タンパク質・脂質・炭水化物など)には大きな変化はないでしょう。
要するに”バター”としての数字は変わらないのです。
しかし毎日の必要脂質量を、フライドポテトや菓子パンなどで満たすのと、良質なバターやフレッシュチーズ&オリーブオイルなどから摂取するのでは歴然とした差があるように、脂肪酸の変化はバターの大半を占める脂質の”質”に変化が起こったことを示します。
バターに含まれる脂質は肉類に含まれるものと同じ飽和脂肪酸であることから、とかく悪者にされることが多かったですが、植物性油脂でも加工度の高いマーガリンに比べたら遥かに健康的です。
それそのものが悪いのではなく、”摂りすぎ”が問題なのです。
近年健康に良いと人気のエゴマ油や亜麻仁油のほとんど唯一の欠点は『熱に弱く、酸化しやすい』こと。
しかし飽和脂肪酸は、その名の通り結合が”飽和状態”なので、加熱による影響が少なく、酸化しにくいのです。
まとめ:バターの変化=牛乳(血液)の変化
バターの変化は、原料となる牛乳の質に変化があったのは間違いありません。そしてそれは食餌の変化に起因している可能性が高いと思われます。
脂質の摂取は、全身の細胞に影響するため非常に大切ですが、どんな質の脂質を摂るかによって健康を左右します。
植物性脂質にしろ、動物性脂質にしろ、加工方法や餌によって、どんなに良質の脂質であっても変化します。
例えば、どんなに良い亜麻仁油でも、ドッグフードの加工時に添加してしまっては台無しでしょう。なぜなら亜麻仁油の酸化が防げる50℃以下で加工したら、衛生管理上タンパク質(肉類)の安全が守れません。
それなら酸化防止剤BHAを加えればいい?
原材料欄に良さそうな原材料が書いてあっても、一度冷静に考えてみることが大切です。
関連ブログ⇒栄養素と免疫(脂質編)