ドライフードを食べないのは困る?
これは年間を通して寄せられるお悩みの一つですが、特に夏場と真冬に増えるような気がします。
ドライフードは安全に長期保存できる利点はあります。
しかし犬や猫の本来の食餌とはかけ離れているので、ドライフードのみにこだわる必要はないと思っています。
水分量が概ね13%を超えるとカビが発生しやすくなるため、ドライフードは10%程度まで水分を落としています。これはかなり水分が少ない食餌です。
そのため食べた後にたいてい水を飲んでいると思いますが、そのような食べ方ではタンパク質の消化・吸収率は下がります。
タンパク質は胃に入る時点で、水の分子と結合していると消化吸収が良くなるのです。
しかしご相談にいらっしゃる方は
「入院した時に困る」
「手作り食やウェットフードなど嗜好性の高いものばかりあげると病気になる」
「ドライフード以外をあげるとわがままになる」
などと獣医さんやトレーナーなどに言われた・・または本やネットに書いてあった
・・・と悩んでいらっしゃる。
個々のご事情によって提案は多少変わりますが、基本的にドライフードのみにこだわる必要はないことをお伝えしています。
想像してみて下さい
例えば食欲が落ちている真夏の猛暑日に、飲み物もなくバターやチーズなど何もつけないフランスパンを食べることを想像して下さい。食べたいですか?
フランスパンでさえ、水分量は30%ほどあります。クロワッサンや食パンならもう少し水分量がありますが、それでも瑞々しい野菜とマヨネーズを挟んだり、ジャムなどと共に頂いた方が美味しく食べやすいと思います。
水分量10%の食餌がいかに食べづらいものか、ご想像頂けると思います。
それを「わがまま」の一言で片づけるのは乱暴でしょう。
入院の時に困る?
心配されるお気持ちも分かります。
予期しない怪我や病気は年齢に関係なく起こり得ますから。
しかし入院が必要なほど重い怪我や病気の時に、ドライフードを食べないことが問題になるとは思えません。
怪我や病気の種類にもよりますが、傷や病気の回復には消化の負担が少ないウェットフードやふやかしたドライフードの方が向いているでしょう。
そもそも入院中は点滴・・ということもあり得ますし、食べられる状態になったら退院・・というケースも珍しくありません。
手作り食の方が長生き
手作り食を与えた方が長生きする傾向にあるという報告がありますが、当然の結果でしょう。
手作り食やウェットフードの嗜好性が高いのは、体が欲する十分な水分量があるからです。
「嗜好性が高い」ことは問題ではありません。
むしろ食餌は大きな楽しみなのですから、嗜好性が高い方が良いに決まってます。
同じように嗜好性が高くてもビスケットやジャーキーなどのおやつの摂りすぎとは違います。
おやつを主食していたら人間同様、どこかのタイミングで何らかの体調不良を招く可能性が高いです。しかし自己流の栄養が偏った手作り食でない限り、ドライフードより病気になる確率が高いということはありません。
真夏に避けたい食餌
また東洋医学的な観点から見ても、水分量の低いドライフードは体の熱を上げる食餌とされています。
なぜならドライフードを消化するために体内の水分を消費してしまい、体を冷やすための水分が足りなくなる・・と考えられているからです。そのため夏場に起こりやすい熱中症や夏バテ、膀胱炎、結石などは
・上がりすぎた熱を下げる水分が不足する
・水分が全身を巡ることができない
から起こると考えられています。
そのため特に夏場はドライフードは向いていないのです。
(保存するためには向いていても)
同様に乾燥する季節も、体を潤す水分が取られてしまって体調不良の原因になることがあります。
まとめ
常に体に十分な水分があって、それを滞りなく流せていれば、余分なものは尿として排出できます。
日本の夏は”湿気”という困った水分の対処も必要ですが、それも水分の流れの良い体作りをすることから始まります。
そのためにはドライフードだけにこだわった食生活では解決できません。
手作り食はハードルが高くても、ドライフードをぬるま湯に浸したり、ヤギミルクや冷ました肉の茹で汁などを吸わせて与えるだけでいいのです。
ドライフードがいけないのではなく、与え方を工夫すればより健康な体作りができると思っています。