療法食とは?
療法食は、本来獣医師が必要と判断した時に食べさせるものです。
そのため以前は動物病院でしか購入できないものでしたが、近年はネットやホームセンターでも購入できるようになってしまいました。
この状況は、例えば
『うっかりして療法食の購入を忘れていたが、病院が休みの日だった』
『仕事や用事が立て込み、病院の診察時間に間に合わなかった』
というような時、手軽に購入できるようになったことはとても便利だと思います。
しかし療法食は、病気の治療の一環として食べさせるものなので、栄養に偏りがあります。
結石好発犬種だから療法食の方が良い?
このご質問や
「結石は繰り返すと聞くから、このままずっと療法食の方が良い?」
というご質問もよく頂くのですが、獣医さんが”結石治療の終了”とおっしゃったのに自己判断で療法食を続けるのは良くありません。
同様に”なりやすい犬種”だからと言って勝手に療法食にするのもいけません。
なりやすい犬種であっても、一生ならないワンちゃんはたくさんいます。
そして一言で”結石”と言っても、結石の種類によって食餌の管理も変わります。
また
「肝臓の数値が悪かったから」
と言っても、
・肝臓そのものに問題が起こっているのか?
・別の原因によって肝臓の数値にも影響が出ているのか?
・・といった判断が必要で、獣医さんが
『これは治療に療法食が必要』
と判断しない限り使うべきではありません。
猫の療法食も同じ
猫はシニアになると腎機能に問題が出ることがあります。
しかしそれを警戒して、健康な猫に腎臓用の療法食を与えるのも良くありません。
そのような療法食はマグネシウムなどのミネラル類を調整していますが、マグネシウムが低ければ病気を予防できるものではありません。
マグネシウムは例え病気になっても一定量必要です。
マグネシウムは、エネルギー代謝や糖の利用、タンパク質の合成、筋肉や神経伝達の機能維持などに関わっています。また体内にある約300種類の酵素を正常に働かせる補酵素の役目もしています。
マグネシウム不足で起こる症状
人間でよく起こるのは”脚がつる”こと。
マグネシウムが不足することで、筋肉中のカルシウムが多くなり筋肉がギューッと収縮します。大変な痛みが伴いますが、マグネシウムが不足するとあれが心臓の筋肉でも起こり得るのです。
心臓の筋肉の血流が悪くなると、心筋は心臓を保護するアデノシンという物資を出します。
この時マグネシウムが足りないと
「心臓の筋肉がピンチだからアデノシン出動!」
の合図が出ません。
せっかく緊急のシステムが配備されてて、アデノシンも準備してあっても、使えなかったら命に関わります。
まだまだあるマグネシウム不足の弊害
ミネラルはマグネシウムに限らず、それぞれが密接に関わって全身機能を維持しています。
そのため一時、非常に低いマグネシウム量のキャットフードが販売されたこともあるのですが、ストルバイト結石が治っても、シュウ酸カルシウム結石が増えてしまったことがあります。
これはマグネシウム不足から、カルシウムの排泄が減ってしまったことにより起こりました。
同時に細胞を維持しているカリウムの排泄が進んでしまいました。
それにより低カリウム血症を起こす猫が増えてしまったのです。
低カリウム血症というのも、放置すると命に関わります。
軽症であれば筋力低下・嘔吐・便秘等ですが、重い場合は不整脈・呼吸困難・四肢麻痺などが起こります。
過剰なマグネシウムはもちろんいけませんが、健康なのにマグネシウムを低くしたエサを食べ続けると、このように心臓を始め、命に関わる問題が出る可能性があるのです。
そのため療法食を使用している時は、獣医師はその辺のチェックもしながら治療を進めています。
だから療法食は決して病気の予防にはなりませんし、気軽に使用すべきものではないのです。