これは常にベスト5に入る多い質問です。
・・・なのですが、メールや電話では答えるのがもっとも難しい質問です。
同じような質問に
「うちの子は何カロリー食べればいいですか」
とか
「いつも○○カロリーあげています。おたくのフードだと何グラムですか?」
というのもあります。
これらも年々、答えが非常に難しいと感じています。
理由① その子が今、適正体重であるか分からない
仮に犬種(猫種)と体重をお伺いしても、それがその子にとっての適正体重かどうかは、
・背中を撫でて背骨を感じられるか?
・肋骨あたりを軽く撫でた時、肋骨をかんじられるか?
・真上から見た時、ウエストのくびれが分かるか?
によって答えは変わってきます。
かつてお腹どころか、背中全体が脂肪で覆われているようなワンちゃんを『適正』だと思っていた方がいらして、「いま適正体重ですか?」という聞き方を考え直したきっかけとなりました。
(危うく超肥満体重を維持する食餌量をお答えするところでした)
またよく犬種図鑑なんかに、犬種ごとの体高や体重が載っていますが、その範囲であれば『適正』だと思っている方もいました。
同じ犬種でも骨格には個体差がある上、散歩に出たことがほとんどないわんちゃんだったので、筋肉があまり発達していませんでした。こちらのケースでは犬種と体重だけで答えるのは難しいと痛感しました。
短毛種なら写真でも分かることもありますが、このように電話やメールではなかなか難しいのが実情です。
そのため上記判断基準をお尋ねするようになったのですが、
「何グラム食べさせれば良いのか聞いているのに、答えられないのですか?栄養士のくせにカロリー計算もできないのですか?もういいです!」
とお叱りを受けたこともあります。
(的確なお答えをするために、いくつかお尋ねをすることもあります。どうかご理解下さい)
一応体重当たりの必要カロリー基準はありますが、小型犬と大型犬では代謝率が違い補正する必要があります。
また同じ体重でも筋肉質で締まっているタイプとあまり運動をしていないタイプでは、取るべき栄養素バランスも違えば、さらに代謝率も変わるのも当然で、”適正体重”の設定そのものが変わってきます。
ただ先に挙げたように飼い主さんの中には、ご自分のペットが”太り気味”という自覚のない方が結構いらっしゃるので本当に難しい問いです。
(太り気味・・というより『体が締まってない』という感じで、食べる量より運動管理の方が必要を感じるケースも)
どちらにしろ犬より猫の方が肥満は深刻な問題を引き起こすことが多いので、早めの対処が必要です。(だからと言って犬はちょっとぐらい太っていても大丈夫という話ではありませんが)
関連ブログ⇒猫の貴重さ
理由② 体重管理は入ってくる熱量(食餌によるカロリー摂取)と出ていく熱量(消費カロリー)によって保たれるものだから
どうしても入ってくるカロリーに目が向きがちですが、消費カロリーも同じくらい重要です。
そもそも物が燃えるには酸素が必要ですよね。
酸素=運動です。
酸素がなければ、摂取カロリーが燃えづらくなるのは当然です。
また各細胞に新鮮な酸素を行きわたらせることは、健康維持に不可欠です。
我々人間も、換気の悪い空間で座りっぱなしの作業をしていると頭がボ~っとしたり、血流が滞って背中が張ってきたりするように、酸素不足の弊害を感じたことがある方は多いと思います。
そのため入ってくるカロリーだけを気にしていては、必ず無理が出てきます。
例え一時的に効果があるように見えても、一生を通じて健康管理をするには、入ってくるものと出ていくものは必ずセットで考えなくてはなりません。
また入ってくるカロリーのうち実際にどれくらい吸収されたかを、食餌ごとに数字で出すのは不可能です。
さらにそれを代謝する能力にもかなり個体差はあり、入ってくる数字だけを気にするのは、あまり意味がないことがお分かり頂けると思います。
工業機械だって、気温や気候によって動作が影響を受けることがあります。
デジカメやスマホも、マニュアルには『〇時間充電で、〇時間使用可能』と標準スペックは書いてあっても、使用環境によって電池の減りが早くなることはありませんか?
機械でさえそうなのに、私たちを含め犬も猫も生き物です。
『〇カロリー(または〇グラム)摂取で、〇時間活動』
なんて出すのは事実上不可能です。
そういう訳で、今回の質問に対し
「何グラム与えて下さい」
と単純にお答えするのは不誠実であり、命の軽視に通じると考えています。
体重管理や健康管理をご希望の場合は、十分に個体の情報を得た上でお答えさせて頂きます。