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東洋医学から見る⑭心臓と食餌の好み


先日のブログ(フードの好き嫌いと食べムラ)では、食べ物の選り好みや食べムラの原因として、運動不足や胆汁の出すぎを挙げました。

単純なワガママとして片づけてもらいたくないと考えています。

一方、野生下のオオカミの食生活を調査した報告でも、個体ごとにかなり好みに差があることは分かっています。

(参照ブログ⇒オオカミの食生活

野生下では、その好みの差が、純粋に「食べたい物の好き嫌い」ではなく「狩の能力による事情」ということもあり本当の所は計りかねます。

ペットの場合は「狩の能力の差」はないにしても「飼い主の考え」による選択肢の幅はあるかもしれません。

 

脾臓と胃にエネルギーを送る心臓

その心臓が弱わると?

 

心臓が食餌の好みとの関係していると言うと、意外に思われるかもしれません。

小型犬は高齢になると、心臓疾患を発病するケースが少なくありませんが、純血種の中には遺伝的に心臓病になりやすい犬種もいます。

残念ながら遺伝的なものに関しては、漢方で根本的な治療はできません。

しかし他の内臓とのバランスを整え、心臓の負担を最小限にすることは可能です。

冒頭に挙げた以前のブログで

『脂質の多い食餌は胆汁を過剰に出させ、脾臓を疲弊させる』

と書きました。

この脾臓は心臓のエネルギーで活動します。

ということは心臓が弱ると、食べ物を消化し栄養分をエネルギーに変える能力が落ちるわけです。

するとまず起こりやすいのが食欲不振

続いて下痢嘔吐便秘といった胃腸の不調、そして結果的に食べ物の好みに偏りが出てくるのです。

しかも心臓が原因で起こる胃腸障害は、細菌性やウィルス性ではないので、当然抗生物質や抗ウィルス剤では改善しません。

整腸剤は一時的に効果があるかもしれませんが、一般的にあまり反応は良くありません。

 

全身に『血』を循環させる心臓

『血』の不足は全ての臓器に影響する

 

この場合の『血』はいわゆる血液の他、漢方では『全身を潤す栄養分』と考えます。

潤す=水分ですが、水分の重要な調整機能を担っている腎臓は、心臓を支配していると考えられています。

そのため心臓の不調が続くと、肺に水が溜まったり、部分的なむくみが出ます。

心臓の不調で起こる下痢や便秘も、小腸や大腸での水分調整が上手くいかなくなることで出るのです。

一般に心臓の症状と言うと、息切れや胸水、咳などで気づくことが多いです。

しかしそのような症状が出た時は、すでに状態がかなり悪化しています。

その段階になったら、一刻も早く獣医師の診察を受けることが先決ですが、性格(不安が強い・落ち着きがない)やワガママと言えるような行動、食の好みが、実は心臓の状態を訴えていることが往々にしてあります。

 

大人しくていい子?

 

一般に仔猫や仔犬はエネルギーに満ち溢れていて、毎日のようにいたずらもするでしょう。大はしゃぎで遊んでいたかと思うと、電池が切れたように昼寝をします。

そしてご飯を目の前にしたら一心不乱に食べます。

しかし1歳以下の幼い動物が、あまり食べ物に興味を示さなかったり、惰眠をむさぼっているような場合は、漢方的には先天的に心臓に問題があるか、心臓が弱いと考えます。

この段階では、血液検査や画像上では特に異常が見つからないことがほとんどです。

人間側からすると手がかからないので「大人しくていい子」「飼いやすい」などと思われますが、本当に”大人しい子”の中に、心臓からのメッセージを伝えているケースもあるわけです。

このような個体の舌は、乾いていてヒビのようなシワが入っています。

色は綺麗なピンク色ではなく、やや紫色がかっているかもしれません。

 

興奮、無駄吠え、徘徊、

ぐるぐる円を描くように歩き続ける

 

一方で心臓のバランスが崩れていると、興奮が進むこともあります。

高齢の個体だと円を描くように歩き続けたり、頭を傾げる、めまいなどが見られることもあります。

若い個体でも運動後に息切れが収まらなかったり、便秘、喉が渇きやたらと水を飲むこともあります。

これらの症状は、脳や神経系の問題の時もありますが、漢方では心臓のエネルギーの乱れの可能性も探ります。

心臓の不調和からくる興奮は、『活力』というより『不安感』からくる”衝動”という感じです。

一般に心臓のための食餌管理と言うと、ナトリウムなどのミネラル管理やタウリン補給が中心になりますが、漢方的にはまだまだやれることがあります。

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