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ジステンバーは麻疹の仲間


ジステンバーと言えば、犬を飼っている方もそうでない方もご存じの方が多いでしょう。

この犬ジステンバーを含め、人が罹る麻疹(はしか)牛疫ウィルス、そしてアザラシジステンバーは、全てモルビリウィルス属のウィルスです。

(余談ですが初めて見た時、”森ビルウィルス”と読み違えた!横文字どころかカタカナにも弱いことを自認した懐かしい?!ウィルスです)

このウィルスは伝染力が高いため、感染の広がりが早いのが特徴です。

以前、タンザニアの国立公園でライオンに犬ジステンバーが広がり、1,000頭以上が死亡するような大感染を引き起こしたこともあります。

そのためワクチン接種可能な動物には、ワクチンが最も安全な対処法ですが、2004年にアラスカでラッコがアザラシジステンバー(PDV)に感染していること見つけた研究者たちは、違う意味で衝撃を受けたと言います。

なぜならそれまでヨーロッパ(大西洋)やアメリカ東海岸で、アザラシジステンバーが流行したことはありますが、

・遠く離れた西側(太平洋側)で

・生息域が広くないラッコが感染

したのです。

その感染ルートに頭を悩ませました。

渡り鳥や大型回遊魚ならまだしも、ラッコが餌を求めてアメリカ大陸を横断するような長距離を移動するとは考えられません。

この問題を15年追跡した結果が最近発表されましたが、そこでは北極海の氷の減少と相関性があると報告されています。(2019年11月7日付けScientic Reports)

つまり近年問題化している北極の氷の減少によって、

・ラッコが餌を求めて移動しやすくなった。

・氷の減少=気候変動⇒これまでの生息域で餌が減少したため新天地を求めて移動。

・とはいえ以前より移動距離が長くなったので、疲労が蓄積し免疫力が低下。

・結果、ウィルスに感染しやすくなった。

経済界では、北極海の氷の減少によって、日本からヨーロッパまで最短での物流航路が開くことを歓迎していますが、自然環境から見たら懸念の方が多いです。

現在のルート(赤道直下を通り、南アフリカを回り込んでヨーロッパへ)では、コンテナが高温にさらされる時間が長く、食品を運ぶ時は低温コンテナでないと安全が確保できません。

また治安が不安定な地域を通過するため、安全対策に必要な予算が増えてきています。

そういった経費は、どうしても小売り価格に加算されますから、北極海航路が望まれているのです。

アザラシジステンバーは1988年に初めて検出され、ヨーロッパでは18,000頭のアザラシ・アシカが死亡するほど猛威をふるいました。

ちなみに猫ジステンバーと呼ばれることもある猫汎白血球減少症

こちらはジステンバーと言っても、原因となる猫汎白血球減少症ウィルスはパルボウィルス科なので、猫パルボと呼ばれることもあります。

(ヤヤコシイ)

犬パルボウィルス2型(CPV-2)と近縁ですが、基本的にネコ科の動物にしか感染しないと考えられています。

そのため動物園のライオンやチーターで感染が認められたこともあります。

「やっぱりライオンも大きな猫なんだ!」と思うと同時に、

「でも犬ジステンバーには罹るのよね(^_^;)」

百獣の王の面目やいかに?!

まあ、いくら百獣の王でもウィルスの前では、なすすべもないことがあるわけです。

ちなみにアザラシやアシカなどの鰭脚(ききゃく)亜目は、ネコやライオンより遺伝的に犬に近い動物です。

関連ブログ⇒他人のそら似

そんなこともあり、アザラシジステンバーの動向にはしばらく個人的に注目です。

また今回のウィルス感染地域(動物)拡大に、気候変動が関連しているのも憂慮する点です。

『温暖化で氷が解ける』

と聞いても、日常生活に直結するイメージがなくあまりピンときませんが、

『これまでに考えられなかった感染症にかかる可能性がある』

と聞くとちょっと環境問題にも関心を寄せるきっかけになるかもしれません。

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