この数年、タンパク質の定義が再検討されています。
例えば狂牛病の原因となる”異常プリオンタンパク質”。
タンパク質からなる感染性因子のことで、日本では第五類感染症に指定されている人獣共通感染症です。
感染性因子と言っても、ウィルスやファージと違って核酸(DNA・RNA)を持ちません。
タンパク質そのものなので、正常プリオンなら253個のアミノ酸で構成されています。(ちなみにマウスは254個。同じ哺乳類でもアミノ酸の数が違います)
プリオンの有無が病気の原因になるのではありません。
正常なプリオンが”異常プリオン”に構造変化して、正常な神経細胞が変性して壊死し、脱落してしまうことで発病します。
初めてヤギや羊でプリオンタンパク質が原因と推察できる病気が報告されたのは18世紀。
それから200年ほど経った1920年にクロイツフェルト氏が、翌年にはヤコブ氏が急速に進行する認知症のような症状を報告しました。
感染性因子は、牛の場合3年~7年ほどかけて脊髄から脳へ移動していくことが分かっています。
致死率は100%で、発症すると牛の場合早くて2週間。
(遅くても半年)
人間でも1年ほどで亡くなるケースがほとんです。
鹿や猫などでも同じような病気は報告されており、犬もその疑いが高いと思われる症例がイギリスで報告されていますが、確定診断には至っていません。
その理由は、愛犬家なら誰もが理解できると思いますが
『飼い主が病理解剖に同意できないから』
猫が確定診断できた理由は、解剖した猫が、みな野良猫だったからです。
もちろん飼い猫にも発病している可能性は高いですが、これも飼い犬同様亡くなった後に、開頭して病理診断に協力するのは難しいと思います。
(私でも協力できません)
しかしこれがきっかけでヨーロッパ系のあるフードメーカーは、原料に犬猫の肉を混ぜないことを宣言しました。
そう、ドッグフード・キャットフードには、
『犬猫由来のものは入れてはならない』
というルールはないんですね。
関連ブログ⇒〇〇ミールは何の肉?
日本でも徳島県議会の環境委員会で、殺処分された犬猫がペットフードの原料メーカーに渡っていたことが問題視されたことがありました。
決して対岸の火事ではないと思っています。
ミートミールや肉副産物に、部位の規定はあるのですが、使用する動物に強い縛りがありません。
ミートミールの規定では
『牛・豚・羊・ヤギ以外の哺乳動物でも良い』
と明記されています。
つまりまあ、そういうことです。
法治国家では認められている言い訳
「違法ではない」
「法律に則って生産している」
ので、タンパク質を構成する原料がどんなものであるかを公表する必要もありません。
ウィルスよりサイズの小さいプリオンタンパク質がもたらす重大な病気。
まだこのタンパク質も、病気も完全に解明しているとは言えません。
ただ”危険部位”と呼ばれるところを食べると、感染する可能性が否定できないから、人間用食肉は流通を制限しているわけです。
(ペット用原料には制限はありません)
このようにタンパク質の変異というのは、まだまだ分からない部分が非常に多いのです。
それなのに、遺伝子組み換え作物やゲノム編集食品を世に出すのは、利益至上主義の社会とはいえ、あまりに命を軽視していると思います。