漢方薬は数種類から10種類以上の生薬を組み合わせたものまで様々です。
そこに含まれる化合物は数千~1万とも言われていますが、その成分のエビデンスが乏しいことがしばしば議論になります。
実際、芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)という漢方薬がありますが、これに含まれる化合物を調べたら3000種もありました。
(オックスフォード大学 D・ノーブル教授ら調べ)
この薬は漢方薬には珍しく、使用されている生薬はシンプルに2種類だけ。
その名の通り、芍薬と甘草です。
そこで3000種類の化合物のうち、成分の99%を占める20~30種類の成分を配合して、同等の合成薬を作る実験が行われたことがありました。
結果的には、同じ効果を持つ薬は出来ませんでした。
この実験結果は、漢方薬の深さを表しているように思います。
なぜなら成分比率で言えばたった1%にすぎない2970~2980種類の微量化合物は、ただの不純物ではなく、
・例え微量でも効果を発揮している
・中心となる成分のバックアップをしている
などと考えられるからです。
一方で『漢方薬のエビデンスは懐疑的』という意見が出る理由は
・一見どんな効果があるかも分からない成分
・食材にも含まれるようなありふれた成分
が含まれているからでしょう。
このことはむしろ科学分析が漢方薬に追い付いていないと言えるのではないかと思います。
長きに渡る経験と観察の積み重ねも、重要なエビデンスではないでしょうか。
漢方薬は急性症状には向かない?
これもよく言われることですが、救急医療の現場でも積極的に取り入れている所もあります。
冒頭に挙げた芍薬甘草湯はこむら返りの治療薬として有名ですが、生理痛にも結構使えます。
こむら返りなら服用して5~6分で効果が表れるでしょう。
ただ甘草に含まれるグリチルリチンの代謝物は、副腎皮質ホルモンの一種アルドステロンに似た成分です。
(だから即効性があるとも言えますが)
そのため頓服的に使うべき薬で『漢方薬だから優しい』『副作用が起こりにくい』と常用すると問題が起こります。
強い頭痛で救急搬送されたケースでも、脳卒中のような病気が排除され、片頭痛や緊張型頭痛と診断された場合、いくつかの漢方薬が第一選択薬になることもあります。
風邪薬として市販薬としても有名な”葛根湯(かっこんとう)”なんかは、緊張型の頭痛にも使われています。
葛根湯にも芍薬と甘草が含まれていて、これが筋肉のコリや痙攣に効果を発揮してくれます。
芍薬甘草湯ほど甘草の配合量が多くないので、偽アルドステロン症のような副作用を起こすリスクは低いと言われています。
しかし年齢や体質がネックでステロイドが使えない時に処方されるような薬なので、やっぱり使い方には注意が必要です。
ひどい片頭痛発作の時には、”呉茱萸湯(ごしゅゆとう)”などが使われますが、これも即効性があり15分~30分もすればほとんど痛みがなくなります。
一般に処方される鎮痛剤並みのスピードですね。
それだけに配合量が低いOTC薬(ドラッグストアなどで処方箋がなくても購入できる薬)でも、専門家に相談してから購入することが大切です。
できればやはり医師の診断を受け、医療機関で処方してもらう方が良いと思います。