8月半ば、猛暑日が続いていると、暦は秋になっていると言われてもピンときません。今年は8月8日が立秋。10月21日が秋土用入りなので、それまでの期間は『秋』ということになります。
秋の臓器は肺と大腸です。
土用は脾臓と胃。
この両者は、セットで調整していくのがポイントです。
なぜなら肺は、脾臓と胃からエネルギーを供給してもらっているからです。
脾臓や胃の疲れ・不調が、ダイレクトに響くのです。
今年の暦だと7月20日から8月7日までの18日間が”夏土用”だったわけですが、この期間は急激な気温上昇で、食欲不振や暑さ負けのような症状が出やすいです。
すると夏風邪を引いたり(肺)、お腹の調子が崩れる(大腸)というようなことが起こりやすい。
最近は犬の世界も、暑さそのものによる不調より、エアコンの普及による乾燥(肺)と冷え(大腸)の影響と考えられる不調が多くなっています。
地球全体の温暖化の影響で、作物の生育や熱中症の発症時期も早まっていますが、”秋”に起こることまで前倒しになっているように感じます。
気温的には暑い期間が増えているのに、なんか不思議です。
また肺は、皮膚や被毛を支配していると考えられています。
肺は酸素と共に空気中の水分を取り込んでいますが、同時に外気に含まれる病原菌やウィルスも侵入してきます。
肺はそれらの防御壁の役割もしていて、感染から守ってくれていますが、皮膚や被毛もまた外からの刺激(病原菌はもちろん、湿気、乾燥、暑さ、寒さ、風など)から体を守ってくれています。
仕事内容が似ているんですね。
丁度夏毛から冬毛の生え変わり時期とも重なることから、尚更肺・大腸の状態を整えておくことが重要になります。
ではこの時期を乗り切るのにお薦めの食材をいくつかご紹介します。
①桃
秋の果物というより夏の果物ですが、9月頃までは出回っているのでピックアップしました。
夏の果物は体を冷やすものが多いのですが、これは”温”
土用の脾、秋の肺、そして肝臓にアシストすることで”解毒”も助けます。
夏に起こりがちな消化不良。
血が滞って胃の働きが落ちる
↓
消化しない食べ物がいつまでも胃に残っている感じがする
↓
疲れがとれない
などいわゆる夏バテ症状の時にぴったりの果物です。
口の渇きを癒したり、血流を良くすることでむくみなどの解消にも向いています。
また汗をかきやすい(出すぎる)ために、冷えやすい体質の方がいます。
そういう時に汗を調整し、冷えを改善してくれます。
桃は果肉だけでなく、葉は外用薬に、種は”桃仁(とうにん)”と言う生薬になります。
女性によく処方される”桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)”という漢方薬にも使われています。
顔はほてるのに、足は冷える・・というような症状に処方されます。
(暑い、でも冷えるという状況の改善が得意なんですね)
桃仁は基本的に瘀血を改善するために使われます。
桂枝茯苓丸には、桃仁と同じく瘀血改善に使う牡丹皮(ぼたんぴ)、痛み止めに芍薬(しゃくやく)などが調合されています。
女性用に作られた・・というより”結果的に女性に処方されることが多い”という薬ですが、なぜか華やか!
桂枝茯苓丸はその名の通り、”桂枝”(けいし=シナモン)と”茯苓”(ぶくりょう=クロマツなどの根に寄生するキノコの一種。マツホドとも呼ばれる)がメインで、
①桂枝で気を巡らせて滞った血を流す。
②茯苓で水の流れを良くし、血の滞りも流す。
③桃仁・牡丹皮で血の滞りを流す
と『血の滞りを流す』ために、気・水・血、全ての流れをアシストする薬です。
一方瘀血はあるけど、わりと元気で冷えよりも頭部中心に症状(イライラ、頭痛、めまい、耳鳴りなど)があり、便秘を伴っている場合は”桃核承気湯(とうかくじょうきとう)”を使います。
桃の果肉にも腸を潤し、便通を良くする効果がありますが、この漢方薬には大黄・芒硝を配合しさらに強化しています。(わりと強めなので、下痢することも)
こちらにも桂枝は入っていますが、脾・胃を調和させる甘草も配合してます。
こちらは気を巡らせて毒を流すという感じ。
桃仁とのバランスと、他の生薬との相性で、対応する体質・症状に結構差があります。
そもそも女の子の節句が”桃の節句”と言われるのは、花が咲く季節というより、こういった桃の効用を反映しているように思います。
風水でも
『桃の実は邪気を払う』
と言われますが、例えば湿気が原因で起こる不調を”湿邪”。
暑さが原因なら”暑邪”。
風が原因なら”風邪”(ふうじゃ)と呼ぶように、病気の原因になりうるものを”邪”と呼んでいますから、
『健康にすごせるように』
という先人の願いというより、その実際的な効能はかなり昔から知られていたのでしょう。
②梨
梨もまた、肺や胃を助け、秋~土用に向いています。
こちらも桃と同様、口の渇きや肺を潤してくれますが、若干働き方が違います。
梨は体を冷ますので、
『乾いて熱をもっている』
ような時に向いています。
喉が腫れて痛い、ぜんそく、痰を伴う咳など。
桃は血液循環を良くすることで浮腫みを取りますが、梨は尿の排出を促すことで浮腫みを取ります。
便通を良くするのも桃と似ていますが、
桃:冷えを取って腸を潤し、お腹の働きを良くする。
梨:解毒を促す=排泄させる。
というイメージです。
このように同じような症状に見えても、季節や状況に応じて適している食材が変わります。
『〇〇が便秘に良い』
『むくみに効く』
という話があっても、その食材ばっかり食べるのはあまり意味がない理由はこんな所にあります。
(続く⇒野菜編)
関連ブログ⇒東洋医学から見る②秋~土用に起こりやすいこと