”栄養学”ではなく”栄養疫学”という分野があります。
一般的に”栄養学”では、ビタミンやミネラルが豊富な食事は、健康を維持するために大切だと考えられています。
そしてその延長として、
『食事で摂りづらいビタミンはサプリメントで』
とか
『サプリメントでより高用量摂取すれば、健康に良い』
と考えが広まりました。
この考え方は『メガビタミン主義』と呼ばれ、世界中で支持されていました。
何しろその考えを広めたのが、ノーベル賞を受賞したポーリング博士でしたから、その信頼度も高かったのです。
しかし近年の栄養疫学研究で
『サプリメントで摂取したビタミンとミネラルのほぼ全ては、効果がなかった』
と判明しました。
『この成分を摂った生物はこうなるだろう』
という予想に基づく理論で展開しているのが”栄養学”
一方
『実際にこの成分のサプリを摂った人と、摂っていない人の健康状態はどうなのか』
を何年も追跡調査して結論を出すのが”栄養疫学”です。
決して”栄養学”を否定しているわけではありません。
ビタミンやミネラルの豊富な食事が、健康に良いのは間違いありません。
また数字で目安を設定したり、その成分の特性を発見したのは”栄養学”です。
ただ
『特定のビタミン(またはミネラル)だけを抜き出したものを摂取しても効果がなかった』
ということです。
つまり例えばビタミンCに、よく言われる”抗酸化作用”がなかった・・という話ではないのです。
ビタミンCに抗酸化作用があるのは間違いなのですが、サプリメントとして摂取すると、体内でビタミンC本来の働きをしない・・・というわけです。
ところが例えばリンゴやキウィとして摂取した場合は、体内でビタミンCとしての役割を果たしてくれるのです。
食材(または食事)として摂取した場合は、それぞれ他の栄養素や酵素類、タンパク質・脂質・炭水化物なども存在し、それらが相互に関与し合って有効に利用されているのです。
このブログではたびたびお伝えしていますが、ビタミン〇mgとかカルシウム〇mgという数字にとらわれすぎると、本質を見失います。
食事とは、お腹を満たすためだけのものではありません。
どういう環境にいるのか
①気象条件⇒暑い・寒い・乾燥or湿気がある など
②個人の生活条件⇒子育て中・オフィスワーク・体を使う作業 など
によって大きな差があります。
また一言で”体を使う作業”と言っても、立ちっぱなしの仕事、介護、暑い場所、あるいは雪かきなど寒い場所での作業など、その条件は様々です。
これは犬も同じです。
「散歩は毎日30分してます」という場合でも、条件は様々です。
病気や高齢ならともかく、健康な犬が
バギーや自転車のかごに乗って30分外出するのと
・飼い主さん共々リラックスしながら歩く
・ときおり速足を入れての30分 では全然違います。
それらの差を無視して、カロリーやビタミン量だけで、食事を組み立てるのは現実的ではありません。
栄養疫学による調査では、健康で長生きした人が習慣的に摂取していた食材をあげています。
それは
①全粒穀物
②魚介類
③豆類
④野菜・果物
⑤ナッツ類
⑥植物油
全粒穀物とは、玄米や全粒の麦類、オートミール、蕎麦などを含みます。
ただ蕎麦は、更科といわれる一番粉を使った白い蕎麦ではなく、胚芽や胚乳部が残る二番粉(挽きぐるみ)、あるいはより外殻に近い部分を含む三番粉で打つ藪系とか田舎蕎麦と言われるもののこと。
これらを”習慣的にバランスよく摂取する”のが大切で、
”これ以外を食べてはいけない”
とか
”これだけを食べれば良い”
というものでもありません。
あくまでもバランスであり、同時に”どんな食材から栄養とエネルギーを摂るか”・・というのが重要であることが、証明された研究結果でした。