最近『ゲノム編集』という言葉を見かけることが増えました。
特に医療分野で使われるようになり、良いイメージを持たれる方が多いようです。
確かに、遺伝的な要素を含む疾患の治療には、大変期待できる技術だと思います。
しかし食べ物の育成に関わる分野で導入するには、リスクが高い技術です。
遺伝子を操作する技術という点では、遺伝子組み換えと同じです。
遺伝子組み換え(GM)⇒他の生物の遺伝子を挿しこむ
ゲノム編集⇒標的とする遺伝子の一部を切断する
例えばアメリカでは、筋肉の肥大を抑える遺伝子を切断した牛や豚が肥育されています。
生物は骨格や内臓機能に見合った筋肉を維持する、リミッターみたいなものが備わっています。
そうでないと体を支えられなくなるからです。
しかしこのリミッターを切った牛や豚は全身の筋肉が増え続け、ついには背中にラクダのようなコブ状の大きな筋肉もできます。
はっきり言って異様な姿の牛・豚です。
しかし農家としては、1頭あたりの食肉部が倍増するので、”コスパのいい牛(豚)”となります。
『ゲノム編集は遺伝子組み換え技術と違って、自分の遺伝子の中での操作なので安全』という意見の中
『ゲノム編集は想像を大きく超える、大規模な変異を起こしている』
という報告が2017年5月 ネイチャーメソッド誌に掲載されました。
それはコロンビア大学による研究で
「コンピューターで予想しえなかった」
異常な数の異変が報告されています。
『ゲノム編集でマウスの失明に関わる遺伝子を操作したところ、
ヌクレオチドの変異1500以上
ゲノムの勝手な削除と挿入が100以上起きた』
遺伝子は壮大なネットワークで生物を形成しており、狙った遺伝子だけをいじったから、影響が”そこだけ”に限定されるという考えは、極めて安易です。
このような大規模な異変が起こったものを
”食べても安全”と
いう言い切れる根拠はありません。
(もちろん”具体的な危険性”が証明されたわけでもありませんが)
しかし”危険性が証明されなければ安全”という理論もおかしいと思います。
”ヌクレオチドの変異が1500以上”
これがどれほど重要なことか、簡単に整理してみます。
ヌクレオチドとはDNAやRNAを構成する単位です。
ヌクレオチドに糖とリン酸基が結合してDNAを構成していきます。
ヌクレオチドは
A=アデニン
C=シトシン
G=グアニン
T=チミン
の4種あります。
(※RNAはチミンに代わりU=ウラシルに置き換わります)
アミノ酸はこの中の3つで構成されます。
例えばグルタミン酸はGAA もしくは GAG
(上記アミノ酸コード図 右下の方にある”E”の所です)
ちなみにグルタミン酸がいくつも繋がっていくと、ポリグルタミン酸になり、これは納豆の粘り成分になります。
つまり
ヌクレオチド3個セット
↓
アミノ酸
↓
アミノ酸2個以上くっついたもの=ペプチド
↓
アミノ酸50個以上=タンパク質
つまりタンパク質を構成する元の変異が1500もあったということです。
例えばグルタミン酸:GAAのGがCに変異するとグルタミンになります。
あるいはGAAの最後のAがCに変異するとアスパラギン酸に。
例えば血液サラサラにする酵素”ナットウキナーゼ”は275個のアミノ酸がつながって構成されています。
275個の並び順も決まっていて、どれか一つでも違うアミノ酸になると”ナットウキナーゼ”ではない別のタンパク質になります。
これは全ての生物に共通することで、米でも肉でも同じです。
米であって米でない。
牛肉であって牛肉でない。
姿形は米や牛に見えても、タンパク質の違いは、その生物の本質の変化を表します。
アレルギー検査をする時も、どんな”タンパク源”にアレルギーを持っているかを調べます。
遺伝子組み換えニンジン(セリ科)を食べると、キク科の植物のアレルギーが出るようになった原因の一つも、こうようなタンパク質の変異にあると思います。
(いよいよ完結します!続きは⇒⑥事実は小説より奇なり)