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国産米が消える日②~種が出来るまでの長い道のり


花が咲いている米

平成29年度産米の食味ランキングでは、魚沼産コシヒカリが特Aからにランクダウンして大きなニュースとなりました。

その際、多くの農家や関係者から「やっぱり・・・」という声がささやかれたのは、あまり知られていません。

米の品種開発というのは、犬のブリーディングと似た部分があります。

最初は仕事に適した特徴・・・体の大きさや毛質、性格などを持った犬種同士を掛け合わせ、生まれた子犬の中から、病気に強い個体、骨格、歯並び(適切な食餌が摂れないと成長や健康維持に影響)性格などを見て、さらに特徴を強める交配を繰り返し、新たな犬種を固定します。

そうして生まれたある犬種が、例えば暑さが苦手だったとします。

しかしある程度その地域に住み、何代か血統が続くとだんだん環境に順応した系統ができていきます。

米にもそういった順応性があり、同じあきたこまちでも、その地域の気候、土壌、水、その中に住む微生物などによって、良く育つ株が選別されていきます。

その積み重ねによって、茨城産あきたこまちとか長崎産コシヒカリというのが生まれ、同じ品種でも産地の違いによる味の差も楽しめるのです。

ところが平成17年、新潟県はいもち病に強いコシヒカリBLをデビューさせます。

いもち病は田んぼを全滅させるほど、農家にとって脅威の存在です。

参照ブログ⇒農薬の功罪

その心配が少なくなれば、農薬の散布も減るのでこれは画期的です。

さらにコシヒカリブランドを悪用した偽物や産地偽装もDNA鑑定で判別できるとあって、消費者にとってもいいことづくめのように思えました。

しかし新潟県のサイトを見ても、品種の成り立ちは明らかに従来のコシヒカリとは別物です。

かと言って、遺伝子組み換え種でもないしF1種(種が採れない一代限りの品種)でもない。

コシヒカリに違う品種を掛け合わせていき、誕生した品種はいくつもあり、コシヒカリBLもその一つだと思うのですが、小売店では今も”コシヒカリ”として売られています。

(その辺を問題視している関係者もいるので、今後どうなるでしょうか・・・)

ただ種苗法上も、玄米を出荷する時点での品種名も”コシヒカリBL”と表記されているので、法律的にはやはり”新品種”という判断なのでしょうか。

いもち病はカビが原因で発生するので、防除のために農薬を使いすぎると、それに耐性を持ったカビが出てきます。

まさに抗生物質と耐性菌の関係と同じです。

それを防ぐために、系統の違う種を毎年数種類ずつブレンドしているようです。

そうすることで、万が一病気が発生しても、全滅するリスクを減らすのが目的なのでしょう。

このコシヒカリBLが栽培され始めて12年。

どんな農産物もその年の気象条件によって、味の良し悪しが変わるものですが

「コシヒカリBLは、年によって味の差が大きすぎる」

と危惧されていました。

”病気の防除” ”味” ”収量”

これらのバランスをどう乗り切るか・・それは種開発の上で、最も難しい問題です。

米の場合、各都道府県が地域にあった特性を持つ『奨励品種』というのを開発します。

それは『主要農作物種子法』や農林水産省が定める細かい基準に沿って、優良な種が安定供給されるよう管理されてきました。

主な基準としては

・種として遺伝的に高い純粋性を保持していること

・粒が充実していること

・病害のないこと

・発芽率90%以上

このような基準を突破して初めて『奨励品種』になります。

そこから3年以上かけて、地域の環境に適合するか、実際に栽培して調査を繰り返します。

その間、同じ県内でも気象条件によって、栽培方法の差がいくつか出てくることもあります。

それらを何年もかけて総合的に判断し、晴れて『奨励品種に採用!』となったらまず『原原種』の生産が始まります。

『原原種』は、特に遺伝的に高い純粋性が求められますから、1本ずつ手植えされ、育成段階で、何回も厳重な審査を受けます。

その中から特に優良(病気に強い・粒がしっかりしている、収量がある等)な株だけが残され、これが『原原種』となります。

翌年はこの『原原種』を元に『原種』を生産します。

ここでも厳密な審査を繰り返し、さらに優良な株の種を残していきます。

ここまでは『主要農作物種子法』によって、各都道府県の農業研究所等で実施されています。

そして3年目にようやく『原種』は、種を専門に作る『採取農家』さんの手に渡り、私たちが食べるお米を作ってくれる一般農家さん向けの種子生産に入ります。

(続きは③奇跡の一粒


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