年頭に『豚コレラが気になっている』という話から豚肉の飼料の問題を書きましたが、2月に入って感染は収まるどころか拡大し、深刻な状況になってきました。
参照ブログ⇒亥年に寄せて
改めて誤解のないようお伝えしたいのは、豚コレラは人間には感染しません。
万が一感染している豚肉を食べたとしてもうつりませんので、その点はご安心下さい。
アジアで豚コレラウィルス清浄国は日本だけでしたが、昨年9月3日以降、世界動物保健機構による清浄国ステータスを中断されてしまいました。
これ以上の感染拡大にワクチン導入案もちらついていますが、関係各所、それぞれの事情もありどういう判断が下されるか注視しています。
ただワクチンを使用すると、感染の有無を判断する際、
自然感染による抗体か?
ワクチンによって出来た抗体か?
を区別をするのが難しくなります。
そのため2006年以降はワクチン接種を完全に中止していたのです。
そもそもこのウィルスは、イノシシが罹るものでした。
ところが世界中で豚の品種改良を進めているうちに、なぜか豚へ感染しやすくなってきた経緯があります。
経済性や食味を上げるためになされた改良が、こんな形で跳ね返ってくるなんて、予想していなかった関係者も多いでしょう。
農家さんの経済的損失はもちろんですが、
感染症の拡大⇒殺処分
この問題は動物福祉の観点からも、多くの課題があります。
(ニュースの空撮映像で、子豚が運ばれていく姿を見てから胸が痛み頭から離れません)
記憶に新しい例として、2010年に口蹄疫が発生した際、牛の殺処分が話題になりました。
殺処分された牛の中には、優秀な種牛も含まれ、ブランド牛の存続すら危ぶまれる状況になりました。
口蹄疫ウィルスは牛だけでなく、豚や他の家畜にも感染しますが、牛は特に感受性が高く、わずかなウィルス量で感染するため、症状が出てから対応していては間に合わないという事情があります。
日本は口蹄疫の清浄国なので、もし口蹄疫が発生しても、自然感染と区別できる印がついたマーカーワクチンが接種できます。
そのためこの時もすぐにマーカーワクチンを接種したのですが、最終的には接種牛も殺処分することになってしまいました。
豚コレラも1997年にオランダ国内だけで900万頭感染したのをきかっけに、マーカーワクチン(餌に混ぜるタイプ)の開発が進みました。
あちらは陸続きなので、一国の問題では済みません。
EU全体で防除体制を整え、撲滅に協力しました。
ただ今この状況の日本でワクチンを使用すると、輸出拡大を目指して国が掲げる『攻めの農業政策』に影響するのは必至です。
TPPも発効した今、果たしてどんな判断が下されるでしょうか。
ちなみに豚コレラウィルスには、珍しい特徴があります。
豚コレラに感染した細胞に、ニワトリが罹る感染症 ニューカッスル病のウィルスを接種すると、豚コレラが増強するのです。
普通、細胞に複数のウィルスが感染すると力が弱まっていくのですが、豚コレラの場合はパワーアップするのです。
今回の感染拡大も、豚やイノシシだけの問題として見ると、忘れた頃にしっぺ返しがくるかもしれないと思い、この問題の推移から目が離せません。