これはメールだけでなく、先日のイベントでも受けたご質問です。
(お寒い中遠方よりお越し頂いた方もいらっしゃり、誠にありがとございました!)
問い合わせするまでもなく、数字を見て
「あ、少ないな。これはダメだ」
と判断されている方も多いと思います。
正直なところ私自身もその一人だったので、よく理解できます。(^_^;)
犬猫体重当たりのカロリーの出し方とか、必要栄養素の計算方法は、資格を取るには必須です。
そして栄養素の不足のよる弊害は、注意深く学びますので、市販のフードを選ぶ際は『総合栄養食』と表記されたものが安心だと信じてきました。
とりわけAAFCOの基準は獣医師だけでなく、飼い主の大きな指標となっています。
AAFCO= Association of American Feed Control Official(米国飼料検査官協会)
1990年にアメリカのペットフード業界が設立した組織です。
AAFCOが設立される前はNRCの動物栄養委員会が出す基準が指標となっていました。
NRC=National Research Council(米国科学アカデミー学術研究会議)
こちらは他の組織によって行われた調査研究を集め評価する非営利組織です。
ここでは生物が生きる上で起こり得る、様々な想定を学術的に考慮して指標を算出しています。
しかし私が勉強を始めた頃には『NRCの基準は前時代的なもので、科学的ではない』
と言われていたので内容を詳しく知る努力もせず、気にも留めていませんでした。
一番の違いは、AAFCOが機械による分析結果を重視するのに対して、NRCは使用する原材料の質について言及している点です。
数字だけを比べると
NRC⇒10%
AAFCO⇒20.6%
となっています。
一見するとNRCの基準は低いと感じますが、NRCには但し書きがあります。
『消化率が高く、質の良いタンパク質を使用すること』
ただ数字を満たしていれば良いのではなく、”質”について言及しています。
『質』を数値化するのは難しく、消費者が『質』を見極める指標を立てづらいのは事実です。
そのため機械による分析は、食用できない廃棄穀物や病死した動物などを使い『安く、大量に』ペットフードを作るには都合が良いと言えます。
例えばタンパク質を機械分析する時は、”窒素量”を計りそれに一律の係数をかけて計算します。
そのため”窒素量”が高ければ”タンパク質が多い”という結果が出ます。
10年ほど前に、アメリカで数千頭の犬猫が死亡し、その何倍ものペットたちが腎臓や肝臓の障害を起こしたことがあります。
あの事件が起こった時、この基準の問題点が露呈したと感じていました。
何故なら死亡や病気の原因は『メラミン』という工業製品に使用される”窒素化合物”と特定されたからです。
これなどは
窒素量が多い
↓
タンパク質が多い(ように見える)
↓
肉が豊富に使われている(ように見える)
という分析を悪用した顕著なケースだと言えます。
『何から作られたタンパク質なのか』
なぜなら犬猫は、人間より動物性タンパク質の要求量が高いからです。
動物性タンパク質には必ず含硫アミノ酸やリン酸が含まれていますが、これらは体内で代謝した時、多かれ少なかれ酸性物質(老廃物)が出ます。
この老廃物を腎臓が排出する時、アンモニアが発生するのです。
アンモニアは腎臓の細胞に毒性があるので、できるだけ発生させたくありません。
またここで発生したアンモニアは、最終的に肝臓に運ばれ解毒処理されますが、アンモニア量が増えるということは、腎臓だけでなく肝臓の負担が大きくなるわけです。
しかし消化の良い、質の高いタンパク質は、分解されてもあまり老廃物(尿素・リン・硫黄)が出ないのです。
つまり
老廃物が少ない
↓
アンモニアの発生が少ない
↓
腎細胞への影響が少ない
↓
肝臓の負担も少ない
という良いサイクルが出来ます。
肝臓は沈黙の臓器と言われる通り、かなり病状が進まないと異変に気付きづらいだけに、長年の蓄積は看過できません。
以上のような理由で、春夏秋冬は特にタンパク質の質にこだわり、不必要に多くしていません。
数字上いくら高く配合されていても、その大半が消化しづらい、もしくは吸収しづらいタンパク源では意味がありません。
また季節や体質、わんちゃん個々の好み・悩みに応じたトッピングをしたい時の栄養的余裕がないと、かえってバランスが崩れます。
ちなみに冬レシピのタンパク質量は15.3%、春レシピは17.3%なので、NRCの基準は十分満たしています。
また多彩な匂いや味覚の刺激は、脳へも良い影響を与えると考えています。
私たちもエナジーバーと水だけで、一生過ごすことが想像できますか?
カロリーも栄養素もばっちり足りていますよ。
「犬猫は飽きない」という意見もありますが、私は違うと思っています。
関連ブログ⇒酸性尿とアルカリ尿②