『科学の英知を結集した最先端の技術』という印象を持っている方も多いでしょう。
一方で『なんとなく心配』という方もいらっしゃるでしょう。
そのような心配をお持ちだった方が
「結局普通の作物とどう違うの?心配だけど、具体的に遺伝子組み換えの何が危ないのかよく分からない」とおっしゃっていたことが強く印象に残っています。
世間では賛否両論入り乱れています。
賛成派意見
・一般的な品種改良と変わらない
・自然状況下でも遺伝子組み換えは起こる
・農薬使用を減らすことが出来るので、今までの作物よりむしろ安全
・異常気象が増える昨今、強い作物を作ることもできる などなど
反対派意見
・技術的な確立が不十分
・未知の成分の発生が予測できない
・生物学的な安全が確保できていない などなど
どちらかと言うと、賛成派の意見は一見すると科学的根拠を並べている記事が多かったです。
反対派の意見には、ややグロテスクな作物や動物の写真が添えられていることもありインパクトはありました。
この問題に関わらず、どういう立場で物事を見るかによって、意見が分かれるのは当然ですが、個人的には”反対派”です。
だけどインパクトを与えるために合成した?!写真には賛成しかねます。そのような主張の仕方は、根拠ある反論の信用性も失わせますので止めて欲しいです。
遺伝子組み換え技術の中心となっているのは遺伝子工学の研究者です。
そのせいか生物学的な観点を忘れている・・というより工学の専門家にはそもそもその発想がないのでしょう。
「だからダメだ」という話ではありません。
時として全く違う分野の視点や発想が、画期的な打開策を打ち出すことはあります。
しかし生命の根幹に関わる技術を扱っているのに、生物の基本を無視するのは疑問です。
生物の発生はもちろん、生育や繁殖など、そもそも分かっていないことが多い世界です。
それを『生命の不思議』とか『奇跡』と言うと「情緒的で科学的根拠がない」と批判されますが、突き詰めるほどそう言うほかありません。
賛成派の主張する”科学的根拠”も安全性を証明しているわけではありません。
ごく一部分の危険性を実験の中で『否定した』というだけで、遺伝子組み換え技術そのものの安全性を証明しているわけではありません。
【遺伝子組み換えは自然状況下でも起こる?】
この説はインフルエンザウィルスを例に、よく語られています。
確かにウィルスや細菌が生き残りを賭けて、遺伝子の組み換えを行うことはあります。それは一般的に”突然変異”とか”進化”と言われます。
しかし現在、作物や家畜に行われている”遺伝子組み換え技術”は、全く次元が違います。およそ自然界では起こりえない化学的処理、超高温処理、電気ショックなどを繰り返して作っています。
実際これらの作物を研究開発しているバイオ企業は、投資家から資金を集める際、自分たちの遺伝子組み換え技術を
「どんな突然変異や生物的進化があっても、自然界では起こりえない技術です」
と言い切っています。
だから自分たちの技術はすごい!自然任せでは絶対成しえない高い技術だとアピールして、投資を募っているわけですが、一般向けや各国政府への説明とあまりに違う主張に驚きます。
【品種改良と変わらない?】
この説明も大いに疑問です。品種改良とは、りんごならりんごの、ぶどうならぶどうの中でやることです。掛け合わせる場合も、近縁の植物同士です。
また接ぎ木にしても、台木にできる品種は限られます。
しかし遺伝子組み換え技術では、例えるなら牛乳味の豆乳を作る為に、牛の体から大豆を生やすことくらい不自然なことをやっています。
それは品種改良と言えません。
動物間でも、異種遺伝子の壁は大きいです。
ましてや植物と動物の間には超えられない壁があります。
しかしそれを打ち破って、大豆やトウモロコシに細菌や昆虫の遺伝子を組み込んでいます。
昆虫の遺伝子と言っても、例えば昆虫が毒物を作る遺伝子部分を組み込みます。
そうすることで、その作物の天敵が葉や実を食べたら毒性を発揮し、守られるというわけです。
しかしその技術は消費者が考えているほど、洗練されたものではありません。
むしろかなり”行き当たりばったり”で、狙い通りにうまく毒性を発揮してくれるとは限りません。想定外の場所で毒性を発揮し、収穫作物自体が毒性を持ったケースもありました。
他にも遺伝子組み換え大豆を食べると、大豆アレルギーだけでなく、ノミ・ダニ・甲殻類などのアレルギー発症が報告されています。
あるいはニンジン(セリ科)でキク科の植物のアレルギーも。
食物や花粉アレルギーは、人・犬とも年々多くなっていますが、こうなると血液検査でアレルゲンの特定は困難になり、原因不明の体調不良や病気に悩むことになります。
遺伝子組み換え作物には、栽培当初は問題なく見えても、栽培を繰り返すうちに予想外の毒性やアレルゲン性を生むことはいくつも報告されています。
特にその作物特有の病気や害虫から守るため、細菌やウィルスを組み込んだ作物が増えていることを危惧しています。
なぜなら、それらを私たちや家畜・ペットが食べた場合、お腹の中で腸内細菌とどんな付き合いをするのでしょう?
仮定の話で不安を煽るのは、本意ではありませんが、バイオ企業の主張である「大豆は大豆。形も味も変わらないから問題ない」という言葉を信じる気になれません。
サイエンスとテクノロジーを混同してなりません。
その二者には超えられない・・・いや超えてはならない壁が必要だと思っています。