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脂質と大腸細菌叢


脂質の取りすぎは肥満や高脂血症の原因となるため気を付けている方も多いと思います。

脂質はも大切ですが、はさらに重要だと考えています。

そしてその質は、肥満や高脂血症より、免疫系統の混乱によるアレルギー、ガン、肝臓障害など、現代の犬たちが抱える原因と関係しています。

『脂質とアレルギー?関係あるの?』

そう思われるかもしれません。

今日は脂質の分解・吸収の過程で、体内でどんなことが起こっているか辿ってみましょう。

脂質を摂取すると肝臓が胆汁を作る。

食べた脂質の量が多ければ、肝臓はせっせと活動して胆汁の生産量を上げる。

胆汁が小腸に送り出される。

脂質は胆汁によって、吸収可能な大きさに分解される。

分解作業が終わった胆汁は、ほぼ肝臓に送り返される。

白いお父さん犬が人気のCMではないですが、この『ほぼ』というのが問題です。

『ほぼ』ということは『全て』ではなく、肝臓に戻れず、大腸にまで達する胆汁があります。

これが困った存在となるのです。

ご存じのように大腸には多彩な細菌が存在します。

よく”善玉菌”や”悪玉菌”などと菌の性質を二分するような表現をされますが、どちらも存在してくれないと生物の体は成り立ちません。

なぜなら一般に”悪玉菌”と言われているものでも一定の仕事があり、善玉菌のエサになっているものもあるからです。

要はバランスの問題であって、善100:悪0というのは現実的ではないどころか、そんな腸内細菌叢になったら生物は生きていけません。

大腸に入ってきたものは細菌叢が分解作業に着手します。

すると当然、胆汁も細菌叢によって分解されますが、分解されると二次胆汁酸という物質になります。

これはとても有害で、大腸内壁細胞のDNAを損傷することが分かっています。

もちろん損傷を受けても、すぐに修復チームがやってきます。

しかしそのような状態が毎日続くと、当然修復が追い付かなくなり、手が回らない細胞が出てきます。

そのような細胞は、異常な成長を示すことが指摘されています。

分かりやすく言うと”腫瘍”となる可能性があるのです。

また大腸内壁細胞の異変は、その他にも様々な症状を引き起こします。

『腸内環境の改善は免疫力を上げる』

と言われて久しいですが、まさに全身に影響を与えます。

後に出てくる肝臓の状態は、かなり状況が逼迫してこないと症状としては分かりにくい反面、腸内の異変はアレルギーや便の状態という形で現れるので見えやすいです。

しかし改善も比較的短期間で可能です。

ではそれらを防ぐには『低脂肪食』にすれば良いのかと言うと、そう単純ではありません。

『脂質の質』がキーポイントになります。

例えば脂質を大量に摂っていても、高脂血症や血管疾患が少ない食事があります。

一時注目を浴びた『地中海式ダイエット』のように、摂取する脂質が多くてもその中心が”新鮮なオリーブ油”であれば、オリーブの豊富なフィトケミカルが、二次胆汁酸のような毒性と戦えていると考えられています。

またカナダのイヌイットも、脂質の摂取量が多いにも関わらず、高脂血症が少ないことで有名です。

彼らが摂取している脂質の種類を見ると、魚やトナカイの肉などオメガ3を多く含む脂肪酸が中心です。

オメガ3脂肪酸は、抗炎症作用があり、それがやはり二次胆汁酸の毒性を抑えていると思われます。

どちらの例も、”量”ではなく”質”の重要性を物語っています。

犬は人間より脂質代謝の能力は高いとされていますが、近年の犬の健康状態を見ていると、明らかに本来の能力を超えているように思います。

その原因の一つは

加工度の高い脂質=酸化した脂質

が多すぎることでしょう。

酸化した脂質は、胆汁で分解しきれず、そのまま吸収され毒性を示します。

そういう物質を解毒するのは肝臓ですが、同時に胆汁の生産維持のために肝臓の負担はさらに増えます。

肝臓が疲弊すると、免疫力の低下だけでなく、腎臓を始めとした他の臓器への影響も少なくありません。

わずかな胆汁が大腸へ侵入したことによる影響は、こんな風に全身に及びます。

『ほぼ、ほぼほぼ・・』では済まない影響ですね。

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