意外と混同されているのが、この二つ。
”中医学”はその名の通り、古来から中国に伝わる考えを基に、中国で発展して今にあるものです。
一方、”漢方医学”は、基は中国から伝わったものですが、日本で独自に発展した医学です。
後に入ってきた蘭方医学(西洋医学)に対して”漢方”ということです。
この差は、”漢方薬”と”中薬”の違いにも表れています。
漢方薬⇒生薬を組み合わせて構成された漢方処方は、処方自体が一つの有効成分として独立しています。
つまり生薬一つ一つの薬効とは直接関係ない・・という考え方です。
あくまでも、”組み合わされた状態で一つの薬”と考えます。
そして処方の仕方も中薬と違い、体質やその時の症状に適したものを、すでに出来上がっている処方の中から選ぶのが特徴です。
また漢方医学の考えに基づかない日本の伝統的な生薬もあり、こちらは”和漢”というように呼ばれることもあります。
中薬⇒使用する人に応じて生薬を組み合わせます。
そのため漢方薬以上に、処方する人の経験や能力が問われます。また中医学の考え方に基づいて工業的に製剤化された”中成薬”というものもあります。
どちらにしろ、漢方薬とは全く別物で、実は中薬のほとんどが日本では医薬品として認められていません。
一般に『東洋医学は体に優しい』というイメージがありますが、漢方薬や中薬でも”副作用”は起こります。
確かに病院で処方される多くの薬は、今ある症状を緩和することが目的です。
しかし漢方薬は病気の原因となった体質の改善が中心となっているものが多いです。
そのような特徴から比較的長期に渡って処方されるのが一般的ですが、やはり薬ですから副作用が起こることはもちろん、肝臓に負担がかかったり、体質(証)に合わない処方でも症状の悪化が起こることもあります。
またハーブ類も、料理に使われることも多いので、『食品としても使われているから優しい、安心』というイメージがありますが、薬効が強いものも少なくありません。
植物に対するアレルギーがあるように、ハーブでもアレルギーが起こる場合があります。
また漢方薬同様、組み合わせで相乗効果を出したり、逆に毒性を軽減させることもできますが、個体の体質や体力、疾患の有無など様々な条件を考慮して専門家が適量を見極める必要もあります。
虫よけや保存料としても有効であるということは、それなりに影響力がある証拠とも言え、日常的に、同じ物を、一定量を摂りつづけるのは疑問です。
抗生物質を常に飲んでいれば、風邪を引かないと考える方はいないでしょう。
それと同じです。
その上ハーブは近年、近縁種の交雑による予想外の弊害も問題になっています。
人や物の行き来が活発になった結果、特定地域にしか自生していなかった種が、別の地域の近縁種と交雑し、毒性を持ってしまったハーブの一つに、日本にも明治時代に、牧草として輸入されたコンフリーがあります。
大変効能の高いハーブですので、ヨーロッパでもよくハーブティーとして飲まれていました。
ところがある時から、重い肝臓障害の報告が続き、原因を調べたところ知らぬ間に交雑が進み、成分が変わっていたことが分かりました。
純粋なロシアンコンフリーからは、今の所問題の成分は含まれていませんが、交雑種かどうかを判断するのは非常に難しいので、日本でも平成16年に厚労省が摂取を控えるよう注意喚起しました。
オセアニア地区では人間はもちろん、家畜やペットが誤って食べることを懸念し、家庭菜園での栽培すら規制しています。
ハーブも漢方薬も本来は『気になる症状・改善したい体質がある時に』使うべきものです。
例えば『下痢をした』という症状でも、その原因が常に同じとは限りませんよね。
仮に”胃腸が弱いタイプ”だったとしても、”下痢”という症状が出る原因は様々です。
・傷んだものを食べた
・食べ過ぎた
・冷えた
・水分を摂りすぎた
・熱中症
・抗生物質など治療に必要な薬を飲んだ
・精神的なストレス・・等々
これらに対処する食餌や養生は違います。
”下痢に良い”とされている漢方薬やハーブでも、これだけ原因が違えばいつも同じものが効くとは限りません。
『漢方薬だから大丈夫』
『ハーブは食品だから安心』
と考えるのは早計です。
特にハーブは中薬同様、”日本ではその多くが医薬品として承認されていないから食品扱い”なのであって、中には薬並みに慎重な扱いが必要なものもあります。
食品であっても、”食べ合わせ”の良し悪しがあるのに、”ハーブ”とか”サプリメント”という呼称で、安易に使われすぎている風潮を懸念しています。