動物園の悩み
- 青い森工房
- 2018年4月23日
- 読了時間: 4分
更新日:2021年2月22日

稀少動物の減少、絶滅が続く中、動物園の役目が大きくなってきています。
世界中の動物園では、野生下で絶滅してしまった動物の繁殖を続け、そのDNAを繋いでいます。
しかし気候も環境も違う場所での繁殖は、かなり高いハードルがあります。

先日、TVで動物番組を観ていたら、雨季になるとパートナー探しをして繁殖行動を始めるハシビロコウを取り上げていました。
トラにしても、キリンにしても、動物園では『パートナー探し』というより
『一発お見合い』がほとんどです。
動物によっては、人間には理解しがたい『お気に入りポイント』があったりするので、めでたくペアリングできるかどうかは、『神のみぞ知る!』といった世界です。
それでも動物園の方々は、生態と個体の性格を鑑みて、涙ぐましい工夫をしています。
前述のハシビロコウに関しては、水が霧状に出るホースを使ってハシビロコウたちに掛け、雨季を再現していました。
また動物園で生まれ、動物園で一生を終える動物も増え、『のんびり屋さんの猛獣』も出てきてます。
安全と豊富な餌が確保され、仲間とすら争って餌を食べた経験もないため、メスへのアピールが弱い『お坊ちゃま』。
草食系肉食獣?!の登場には、飼育員さんも頭を抱えています。
一方で、親による飼育放棄が増えています。
野生下でも、飼育放棄が起こることもあります。
ただそれには、病気、生命力が弱い(ミルクの飲み方が少ない)等、それなりの理由があることがほとんどです。
動物園で起こる飼育放棄の原因は、いくつかの可能性が考えられていますが、その一つに『食餌』が挙がっています。

飼育下にある動物の脳内ミネラルが不足していることが指摘されています。
最近は動物栄養学も進んできたので、ビタミンやミネラルを添加したペットフードのようなものや、サプリメントをあげている動物もいます。
そのためカロリーや栄養素が不足しているとは思えないのですが、繁殖行動が起こらなかったり、一回の妊娠で産む仔の数が少ないこともあります。
出産の仔が少ないのは、実は最近犬の世界でも指摘されています。
母体の健康状態に異常はなく、妊娠間隔も問題ないのに、減ってきているのです。
これは生命の不思議の一つかもしれませんが、恵まれた環境にいると、少ない仔でも確実に育てられるので減ってきた・・・と見ることもできます。
ただ一方で、人間の世界でも指摘されていることですが、ある種の『酵素』が不足しているのではないかという説もあります。
つまり栄養素はあっても、それを取り込み、利用することができていない可能性があるのです。
実際、栄養飼料の他に、本来その動物が食べている生きた虫などを与えたら、繁殖に成功したケースもあります。
この場合も『生きた獲物を捕獲』という本能に則した行動が、繁殖行動にも影響した・・と見ることもできますが、やはり餌に含まれる”何か”が影響した可能性も排除できません。
そうでないと、十分な栄養素を摂取しているのに『脳に届いていない=体内で利用できていない』説明がつきません。

脳のエネルギー源のほとんどがブドウ糖です。
そして脳の活動に重要なビタミンとして
ビタミンB12・葉酸があります。
またミネラルの中では
鉄・マグネシウム・亜鉛
が重要ですが、これらを摂取しても、利用するための着火剤にあたる酵素が不足していては、無駄になります。
体内で利用できず、体外に排出されればまだ良いのですが、問題は過剰になった時の弊害です。
特に鉄は、サプリメントで摂取した時の過剰が、脳に悪影響を与えることが指摘されています。
また飼育放棄動物のマンガン不足を指摘する説もありますが、これも鉄の存在と関係している可能性があります。
なぜならマンガンの吸収は、食事の鉄含有量と反比例するからです。
ビタミン・ミネラル類は、病気の治療で処方された場合はともかく、やはりバランスの取れた食事からの摂取に勝るものはないと考えます。