
毎年春先になると、胃腸の不調やアレルギーのお悩みを聞くことが本当に増えました。
生後三か月の仔犬に離乳食を食べさせたとたん、アレルギー症状が出て、検査したら食べさせられるタンパク源がほとんどない!といったことも、珍しくありません。
例えばグルテン腸症は、人間でも多い食物アレルギーの一つです。
グルテンは小麦・大麦・ライ麦等に含まれるタンパク質ですが、米には含まれていません。
そのため欧米人に比べると、日本人はまだ少ない方ですが、増加傾向にあります。
人に関する研究では、遺伝性も認められていますが、動物での研究では、別の原因で胃腸障害が起こったのをきっかけに、この問題が発生することが判明しています。
また困ったことにグルテン腸症に罹っていても、臨床症状がすぐに出ないことがしばしばあります。
数か月どころか、場合によっては数年にも及ぶ長期間、目に見える症状がないまま腸内の状態が悪化していきます。
そして下痢や感染症に罹った時、あるいは抗生物質を使った時などに突然症状が出ます。
まるで薬の副作用に見えることもありますが、グルテンを制限したり腸内細菌を整える食餌で改善する場合は違うでしょう。
このようにアレルギーと腸内環境の関連性は、多くの研究で証明されていますが、中でもポリアミンはキーとなる物資です。

ポリアミンは、ほとんどの生物の細胞内に存在し、細胞の成長と増殖に関わっています。
そのため成長期など新陳代謝が活発な時は、たくさん合成されますが、加齢と共に減ってきます。
そして全身の細胞に存在するので、脳なら認知機能に影響し、消化器官であれば粘膜の修復や潰瘍が出来た時の治癒促進、胃酸分泌の抑制、消化酵素の活性化など、消化管全体の健康に深く関与します。
またポリアミンは、腸内細菌が作り出すことも出来ますが、その時必須アミノ酸アルギニンを使います。
そのためアルギニンが不足しても合成量が減り、抗生物質などを使用して腸内細菌が減ってもやはり合成量が落ちます。
このような理由で、シニア期や細胞の再生が必要な時は、食べ物から補給することが大切になります。
食べ物で言えば、豆類全般に含まれますが、特に大豆には多く含まれています。
それに対し、乳製品由来のタンパク質にはあまり含まれません。
胃腸に問題が出ている時の食餌を考える時、カッテージチーズよりも豆腐や納豆を使った方が反応が良いのも、ポリアミン量の差だと思われます。
アレルギーの発症とポリアミン量が関連しているのは、腸内の粘膜修復と密接だからです。
腸管粘膜に損傷があったり、粘膜の透過性に問題があると、本来受け入れるべきではないものまで、入り込んでしまいます。
これがアレルギーや各疾患の原因になります。
特に幼齢期は、母犬からの初乳抗体をしっかり吸収するため、小腸にたくさんの入口を開けている状態です。
母乳の抗体は、各栄養素より分子サイズが大きめなので、この時期限定で仔犬の粘膜は多孔性になっています。
それが徐々に塞がって、消化されてない微粒子は吸収できなくなるのですが、まだ十分に塞がっていない時期に、添加物の多いフードや質の悪いタンパク源を食べさせると、口腔耐性が出来ず、食物アレルギーにつながってしまいます。
この多孔性の腸粘膜を持つ時期の仔犬にとって、もう一つのリスクがあります。
それは母乳から抗体を受け取るということは、母犬の腸の状態が芳しくなく、未消化の微粒子が吸収されてしまう状態だと、それが母乳に乗ってしまうことです。 (母乳は乳首から出る直前まで、”血液”ですから)
すると母乳を通して、母犬が食べた食物のアレルギーを発症することがあるのです。
非常に早い時期のアレルギーが増えているということは、母犬もなんらかのアレルギーを抱えていることが推測され、食餌の管理がますます重要になっていると思います。

そもそも犬も猫も季節の変化に応じて、冬毛から夏毛に生え変わる生き物です。
人間以上に、犬猫の体は季節の変化を敏感に感じ取っています。
それなのに、食餌は1年中同じもので大丈夫というのは、いつも疑問に感じています。
例えば、春に出回る菜の花やブロッコリー。
ブロッコリーも冬の収穫期は、つぼみが締まっていますが、春先になるとややふくらんできます。
この『やや膨らんでいる』のが重要で、近年の研究でアブラナ科のつぼみに、花粉症の改善に良い物質が発見されています。
おひたしにしたり、蒸しても、冷凍しても効果は変わらないそうで、花粉が飛ぶ少し前から毎日食べている知人がいます。
花粉症は現代病のように言われますが、もしかしたら昔からあったのかもしれません。
ただ春先の野菜には、それを抑制する物質があったので、症状が分かりづらく、多少くしゃみが出ても、目がかゆくても
「春は埃っぽいな」
で済まされていたのでしょうか?
食餌はカロリーが満たされれば良いのではありません。
やはり季節に応じて『何を食べるのか』が大切だと考えています。