近年、布用除菌消臭剤が原因と思われる犬猫の肝臓障害が、世界中の獣医師から指摘されています。
国内で販売されている商品の裏面を見ると
消臭成分≪トウモロコシ由来消臭成分≫
と記載され、ペットや小さなお子様がいても安心という印象を受けます。
しかし匂いの原因菌を除去して、匂いの元を経つのがウリなので
除菌成分≪除菌成分(有機系)≫
とも書いてありますが、具体的な成分表記はありません。メーカーのホームページを見ると除菌成分は≪QUAT(クウォット)≫と記載されていますが何のことかさっぱり分かりません。
消臭成分の方は、有効成分の由来(トウモロコシ)まで表記してあるにも関わらずこれにはちょっと違和感を覚えます。 しかし実際、肝臓障害と診断されるペット達が増えていることを考えると看過できません。
2006年、東京都健康安全センター環境保健部は安全性実験を実施し、謎の成分≪QUAT≫が2種類の4級アンモニウム塩の化合物だと突き止めました。
”4級”というからには、1~3級もあるのですが、”4級”だけが持つ特徴があります。
それは常に帯電していること。
この性質によって、布や空間に長く滞在し、同時に原因菌を引き寄せるのでしょう。
ただ、この原因菌も、大腸菌と黄色ブドウ球菌の2種類だけが1/100にできれば『99%除菌!』と記載できるので、その他の菌やカビ類・ウィルスへの効果は検証しなくて良いことになっています。
(実際、何らかの影響は与えていると思いますが)
その後2010年~2011年にかけてもマウスでの実験を続け、子供のマウスだと体重1キロあたり1.25mg以上の投与が21日以上続くと、死亡率が増加。
(大人のマウスだと10㎎/体重1㎏あたり)
血液データ上も明らかに悪化が見られ、肝臓・腎臓・脾臓の萎縮を確認しました。
試験管データではなく、生きているマウスの実験で得たデータは、哺乳類への影響を計るデータとして極めて重要です。
このマウスでのデータを体重2~3㎏のチワワやトイプードルなどに当てはめると、計算上は毎日 1プッシュ(約0.9ml)の1/10を舐めたり、吸ったりした場合2年半ほどで実験マウスと同じような摂取量になります。
上記の実験は、急性毒を想定したものですから、事故でもない限り、一気に想定量を経口摂取するようなことはないでしょう。
ただ日常で起こりやすい問題は、慢性毒に対する影響です。
ワンプッシュの1/10という仮定量は、犬を想定した量なのでこまめに全身の毛づくろいをする猫にとっては、さらに多くの量を摂取する危険があると思われます。
一般論として犬より猫の方が、天然物であろうが、合成物であろうが化学物質に対しては過敏です。
血液データに変化が出る前の症状として、”嘔吐””下痢””血尿”が報告されています。
どれもありふれた症状で、犬ならばまず「食べ過ぎ?」「フードを変えたから?」と考えるでしょうし、猫ならば「毛玉がたまっている?」「また膀胱炎?」と考え、獣医さんも血液データ上に大きな変化がなければ、そう診断するでしょう。
成分が体に蓄積され、すぐに影響が出ない場合『ただちに健康に影響しない』とのことで表記義務があいまいなことも多いのですが、個人的には『いづれ影響する』と考えています。
例え人間用に認可されている食品添加物でも、 また蓄積されたものがそれほど多くなくても、例えば
「シニア期に入って肝臓が弱わってきた」
「寒暖差などでたまたまちょっと体調が良くなかった」等がきっかけで、症状として現れる時もあります。
特に胃腸症状は、すぐに食べ物が原因と考えがちですが、最近のカウンセリングの現場では”消臭剤””洗濯柔軟剤””食器洗剤”等が原因と思われる不調をしばしばお聞きします。 その中でも件の消臭剤は、常に帯電している”4級”アンモニウム塩を含むため、体内に入ると、他の分子をどう引きつけ、どう結合するかは予想できません。
それによって、未知の成分が体内で合成されることも考えられます。
一般にこのような実験は、日常ではちょっと考えられない高い濃度だったり、量を用いて行います。
そのため『あり得ない量を与えた実験で、消費者の不安を煽だけで誤解を与える』という意見が出ることもあります。
しかし免疫系に与える影響というのは、少量を中長期的に接触あるいは摂取した場合起こることも多いので、慎重に見極めるべきだと考えます。
参考資料:東京都健康安全研究センター
この中で私が気になった所は、リンパ球のB細胞への影響を伺わせるデータです。
B細胞もT細胞も脾臓や胸腺などに貯蔵されていますが、貯蔵量にはあまり影響しないようです。
それなのに、血液中のリンパ球を測定すると、B細胞の減少が見られます。
(T細胞には変化なし)
B細胞は骨髄(Bone marrow)で作られ、ヘルパーT細胞(Thymus=胸腺で作られる)の情報を元に抗体を作ります。
血液に乗って全身をパトロールし、異物を発見した時に抗体を作るべき実働部隊が少ないのは良い状態ではありません。
貯蔵量に変化がない所を見ると、口から摂取した成分が腸から吸収され、血液に乗った時、同じく血中のB細胞と出会い頭になんらかの影響が起こるのでしょう。
除菌消臭剤は非常に便利なものですが、ペットが使うものやペットが接触する可能性のあるものに使用する際は、少し注意が必要です。
洗えるものは洗い、しっかり乾燥させて使用する方が良いでしょう。
4級アンモニウム化合物は、除菌消臭剤に限らず、逆性せっけんと呼ばれ医療現場で使われる洗浄剤、消毒剤にも使用されています。
院内感染を防ぐ重要なアイテムですが、耐性菌を作るきっかけにもなる可能性も指摘されています。
正しく、使用する場面を選んで使う成分の一つだと思います。
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