猫からコリネバクテリウム・ウルセランス菌に感染した方が亡くなったとの報道を受け、関係各所に『近所に野良猫が多いが大丈夫か』とか『野良猫をどうにかして欲しい』との問い合わせが相次いでいるそうです。
この菌、特に新しい菌ではないのですが、問題になってきたのは割と最近です。
コリネバクテリウム・ウルセランス菌の中でも、ジフテリア毒素を産出する菌株があって、それに感染すると今回のようなことが起きます。
『ジフテリア?』
そう、子供の頃、混合ワクチンで『DP』とか『DPT』を接種した方は多いと思います。
生後3か月から11才くらいまでに、何回も接種する必要があります。
D:ジフテリア、P:百日咳、T:破傷風のことです。
だから『DP』はジフテリアと百日咳の二種混合ワクチンのこと。
『DPT』はそこに破傷風を加えた三種混合。
最近はポリオを加えた四種混合『DPT-IPV』もあるそうですが、このようなワクチン接種をした方はジフテリア毒素に対する抵抗力があるので、過度な心配はしなくても大丈夫だと思います。
DPTワクチンは1968年から全国で接種が始まりましたが、百日咳の不活化ワクチンが原因の重篤な副作用を受けて、1975年から一時接種を中止した時期があります。
そのため1981年に改良したタイプのワクチンが出るまで、接種していない、または充分な抗体ができるまで接種していない空白世代がいるのです。
それが現在の30代~50代です。
そのため、数少ない感染者はたいていこの世代です。
しかし2014年4月に、国内で初めて子供(6才)の感染例が報告されています。
この時の症例を見ると、38℃以上の発熱と首のリンパ節の腫れ、痛みがあったようですが、抗菌剤の投与で無事回復しています。
ワクチン接種によって重症化しなかったとみられています。
ワクチン接種歴の確実な世代なので、最初は違う感染症を疑っていたようですが、ウルセランス菌が検出された上、猫を飼っていると分かったためすぐに猫の検査も行われました。
猫に上気道炎や皮膚の潰瘍はあったそうですが、すでに獣医によって抗菌剤の投与が行われていたため、ウルセランス菌は不検出。
ちなみに徳島県立保健製薬環境センターが調査したデータ(2012年)によると、徳島県の猫の保菌率は4.2%だったとのこと。
このケースでも猫からの感染だったのですが、犬も保菌しています。
人獣共通感染症は、他にもたくさんありますが、その中でも、特別保菌率が高いわけでもなく、感染するのは本当に稀。
人間だって、症状が出ていなくても様々な菌を保菌しており、お互い様です。
猫や犬ばかりが悪いわけではないのです。
どちらにしろ、ペット達の糞尿処理をした後やペットに触った後だけでなく、帰宅した際、食事の前など日常生活の中でも手洗いは大切。
消毒剤に頼るのではなく、普通のせっけんで丁寧に洗うだけで十分です。
(除菌剤や消毒剤の使いすぎは、また違う問題を引き起こすので)
このような事で、地域に暮らす猫が敵視されたり、虐待されることのないよう強く願うばかりです。
(もし周囲に不安を抱えている方がいたら、是非このブログをご一読頂き、早めに誤解を解いていただくようお伝え下さい)