トウモロコシを使用しているペットフードは良く見かけます。
しかし『安価な穀物が多いフードは良くない』との認識が高まり、穀物不使用のフードも増えました。
穀物は不使用でも、炭水化物源は必要なので、代わりに豆類やジャガイモは使用されています。
ペットフードに使用されている”トウモロコシ”は私たちが食べる、甘くて美味しい”トウモロコシ”とは品種が違います。
いわゆる”飼料用”と言われるものですが、石油に代わるバイオエタノールの登場によって、これらの価格も高騰しているのが実状です。
”先進的な農業”
”緑の革命”
農薬と化学肥料の登場、そして収穫部分(実や種)を最大にするための品種改良によって、そう言われる時代が来ました。
ところがここ数十年、そういう農業もあきらかに限界が見えてきています。
農薬に耐性をつけた虫や細菌類は増え、常に新しいもの、強いものを開発する必要に迫られています。
実や種を大きくする品種改良も、葉や茎との植物的バランスを考慮すると
『すでに限界』との専門家の意見もあります。
さらに問題が大きいのが、”化学肥料”の問題です。
これが回り回って、私たちにとって非常に大きな問題となっていることはあまり意識されません。
限りある天然資源に代わるエネルギー源として登場したバイオエタノール。そこに新興国の急激な人口増加が重なり、世界的にトウモロコシ需要が高まりました。
すると当然、作付面積を増やすために、本来その作物の栽培には不向きな土壌・気候の地域でも作付するようになりました。
そういった”無理”な作付を可能にするために、大量の農薬と肥料は不可欠です。
そして品種改良された高収量作物を栽培するにも、やはり化学肥料がないと成り立ちません。
化学肥料の主たる原料は”合成窒素”なのですが、これを作る原料はなんと”天然ガス”です。
石油と同じく、”限りある天然資源”です。
天然資源に変わるエネルギー源の開発
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バイオエタノール(原料はトウモロコシやさとうきび等)
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バイオエタノールを作るために、大量のトウモロコシが必要
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大量のトウモロコシを作るために、大量の化学肥料が必要
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大量の化学肥料を作る原料が天然ガス
なんのこっちゃ?!という話です。
一周回って、天然資源を大量消費する結果になっています。
しかしさらにここから、我々の食卓にも直結する悪循環が始まります。
バイオエタノールを推進する政策をとった国では、トウモロコシの作付を推奨
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大豆や綿花などを作っていた農家が、トウモロコシに転換
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大豆や綿花が不足し価格が高騰
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新興国の発展で、食糧としての大豆・トウモロコシも不足(さらなる価格高騰)
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森林や熱帯雨林まで切り開いて、農地拡大
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高い窒素(化学肥料)を含む表土が流出
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窒素が川や海などに流入すると、藻類が大量発生し、水中生物が窒息
『健全な里山環境を守ることが、良い海洋環境を作る』と言われるメカニズムはこんな所にあります。
しかし肥料となる窒素は、水の中に入るより、実は大気中の酸素と結びついて亜酸素窒素となることの方が大問題です。
オゾン層に穴を開けるし、温室効果ガスとしては二酸化炭素の300倍も作用します。
二酸化炭素排出制限より、亜酸素窒素の発生抑制の方が緊急課題です。
しかしそれには、化学肥料の厳しい使用制限が必要になるため、どこの国もすぐに踏み切れない現状があります。
またトウモロコシはバイオエネルギーだけでなく、牛や豚・鶏などの家畜の栄養源としても外せない作物になっていることも大きいでしょう。
この飼料用トウモロコシが減るようなことがあれば、世界中の食肉市場にも大きな混乱が予想されます。
例えば、生後半年くらいの子牛の体重は230㎏くらいです。
その牛を食肉として出荷できる約500㎏くらいの成牛にするには、牧草だけで育てると2年かかります。
しかしトウモロコシや大豆など、高栄養飼料と言われるものを使うと、わずか4か月で600㎏を超える成牛になります。
しかもいい具合にサシが入った霜降り肉になります。
まるで工業製品を作るように、牛やその他の家畜を管理し、より早く、安く出荷する。安い外国産肉は、そうして世界市場を伸ばしてきました。
全ての牛肉が、ブランド和牛並みの値段になったら、食卓への影響は計り知れないでしょう。
しかしその価格には、それだけの手間と時間がかかっている証拠でもあります。
本来2年(24ヶ月)かけて、体重を2倍にしてゆく生物が、たった4ヶ月でそれ以上になる。
”体重”という数字だけで見れば、”出荷可能な肉”でしょう。
しかしその牛は健全と言えるのでしょうか?
回り回ってそれを食べる私たちに、本当に影響はないのでしょうか?
そして食肉からはねられた肉や部位を、ペット達に食べさせて本当に大丈夫なのでしょうか?
現実を承知の上選ぶのと、知らないで選ぶのでは、全く違うと思います。