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ワンヘルス


今年(平成29年10月24日付)農林水産省消費・安全局畜水産安全管理課長より、日本獣医師会会長宛に、一通の通達がありました。

それは世界的に増加している薬剤耐性菌による感染症対策について、以前より(平成25年12月24日通達)抗菌剤の使用には慎重であるように・・という考えを示してきましたが、このほどさらに使用者(畜産農家や獣医師)に啓蒙と理解を求めるという内容でした。

この通達を受け、日本獣医師会は、11月9日付けで全国の地方獣医師会に向け

『抗菌剤の 慎重使用に関する基本的な考え方について更なる普及・啓発・徹底を図ること 』

そして『普及・啓発活動の一環として、薬剤耐性 対策の取組をして実際に成果を上げている事例等の情報収集を求める』という文書を出しました。

これは近年、日本医師会と日本獣医師会が共同で取り組んでいる

人と動物の健康を一緒に考える(ワンヘルス)

という新たなプロジェクトの中でも緊急かつ重要課題の一つとして挙げられています。非常に画期的なことで、期待感いっぱいです。

欧米では、すでに動物の手術技法が人間に転用されたり、逆に人間の治療が動物用にアレンジして行われることが盛んになってきており、人間・動物双方の医療者が一緒に研究していくことで、多くの成果を生んでいます。

そんな中で、鶏・牛・豚などの家畜に抗菌剤を乱用することで新たな感染症(細菌性・ウィルス性ともに)が発生し、人間の健康にも影響を与えている可能性が指摘されています。

そういった家畜類を食べた時の影響だけでなく、例えばその家畜の糞を堆肥にした場合でも強烈な細菌が生き続け、その堆肥で育てられた野菜に付着。それが原因で、ある種の食中毒が起きているのではないか・・と推察されているものもあります。

農場や牧場の安全管理に、一定量の抗菌剤使用は不可欠です。

ただ量や回数が増えれば家畜にとってもより安全・良い結果を生むというわけではありません。ましてや病気の予防になるとは言えないのに、未だ誤解した使い方をしている現場があるようです。

近年、犬猫の肉アレルギーも増えていますが、肉そのもののアレルギーの他にそこに残留している抗生物質等のアレルギーも相当数いるのではないかと推察しています。

確かに現代の経済至上主義で生き抜くためには、安く、大量の物を供給するシステムが必要でしょう。しかしそれが自然環境に左右される農産物であっても、生き物である家畜たちであっても同じように扱われるようになったため、何か大切なものが置き去りにされているような気がしてなりません。

徹底した合理化をはかり、いかに安く、いかに大量に作ることが評価される昨今、醤油や味噌といった伝統的な調味料でさえ、原材料欄を見ると

「これが醤油?」

「これを味噌と言っていいのか?!」

というような物もしばしば見かけます。

生まれた時から、このようなものを”醤油””味噌”だと育ってしまったら、時間と手間をかけて作った本物の醤油・味噌の価値を知る機会が失われます。

そして気づいた時には、本物を作れる生産者がいなくなっていて、本物を知る機会は永遠に失われます。

こうなると結局、一番被害を被るのは消費者です。

確かに収益事業において、無駄を省くことは大切ですが、安さを追及するために本来の意味を忘れてしまっては本末転倒ではないでしょうか。

肉類から得られる動物性蛋白質は、私たちとペット達の健康に大切です。

特に一段と寒くなるこの時期に、体を温めてくれる鶏肉はこまめに取り入れたい食材の一つです。

しかし健康であるために頂く鶏肉は、やはり健康に育った鶏でなければ意味がないと考えています。

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