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ウィルスの戦略


毎年この時期になるとインフルエンザの話題が多くなりますが、今月7日、WHO(世界保健機構)は、アフリカ東部のウガンダとケニアでマールブルグ病で死者が出ていることを発表しました。


マールブルグ病とは、マールブルグウィルスに感染することで発病しますが、発症が突発的で死亡率は最大で88%!

このウィルスは、ルーセットオオコウモリが宿主と言われていますが、今回のケースでは、人間への感染経路が未だ特定されていません。

(ルーセットオオコウモリからダイレクトに感染したわけではなく、人間に感染するまで他の動物を経由しているはずなのですが、その種類や数が不明)

2014年にアフリカ西部で大流行し、世界中が脅威を感じたエボラ出血熱と同じフィロウイルス科に属し、種類は違えどコウモリ(こちらはオヒキコウモリ)を宿主としていて、症状もよく似ています。

どこか遠い国の話で、いま一つ実感は湧かないかもしれませんが、マールブルグ病は1967年にドイツのマールブルグとフランクフルトで流行したことがあり、その名が付きました。

この時の感染経路は判明していて、ウガンダから動物実験用に輸入したアフリカミドリザルからの感染でした。

毎年話題になる鳥インフルエンザ。

蚊が媒介する西ナイル熱。

(アメリカ東部ニューヨークなどで発生して、一時期到着した飛行機に殺虫剤をまいている映像が流れていたこともありました)

記憶に新しいマダニが媒介する重症熱性血小板減少症候群 (SFTS)。


全てのウィルスではありませんが、ウィルスによる感染は、その生物にとって接触歴が浅いことで、重症化する傾向があります。

ウィルス感染は細菌感染と違い、宿主の細胞内に入りこめないと感染が成立しません。

細胞内で自分のコピーを作り、宿主の細胞を乗っ取ります。

そのため宿主が死んでしまうと、自分の勢力拡大もストップしてしまうので、ウィルスも様々な作戦を立ててきます。

例えばノロウィルスやインフルエンザウィルスのように24時間~48時間くらいの潜伏期間で症状が出るものとSFTSのように最低でも6日~14日というもの。

SFTSのようにダニを媒介しなければ感染できないウィルスは、ある程度の潜伏期間ないと次の宿主に出会えるチャンスが減ります。

逆にノロウィルスのように比較的短時間で激しい症状が出ると、宿主が移動できる範囲が限られ新たな宿主に移れるチャンスが減る・・と思いきや排泄物の中でも生き続け、アルコールなど多くの消毒剤にも強い作りになっています。

それぞれが進化する中で得た戦略です。

ところが新たな宿主に入った時は、ウィルスの方も転校生のようなもので、その学校(=新たな宿主の体)や地域(=ホモサピエンス)のルールがよく分からない状態です。

取りあえず前の学校(=宿主)にいた時のテンションでふるまっていたら、ヒンシュクを買ってしまった・・というようなことがしばしば起こります。

ヒンシュクを買うだけならいいのですが、現実世界でウィルスにこれをされると非常に深刻な問題になります。

現在のエボラ出血熱やマールブルグ病のような死亡率の高いウィルスは、まさにそのような状態で、コウモリたち(昔の宿主)にはほとんど症状が出ていません。

ウィルスに感染しながらも生き残った個体は、その遺伝子を次世代に繋いでいきます。

この共存関係は、生物の進化に大きく関わってきたことが徐々に分かってきています。

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