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パスツールVSコッホ(その4~現代の課題)


近年、”遺伝子組み換え大豆不使用”という表記を、当たり前にように見ますが、この表示義務化(2001年~)に大きな功績を果たしたのは、三戸の太子食品 三代目工藤茂雄氏であることはほとんど知られていません。

表示義務化を前に、1997年1月から率先して商品パッケージに印刷したのも太子食品でした。

一般に、菜種(キャノーラ)油・大豆油・コーン油等、遺伝子組み換え作物由来のオイルに表示義務はありません。

その理由は、『組み換え遺伝子やそれによって生成したタンパク質を含まない食品だから』というのが、監督省庁の見解です。

同じ理由で、遺伝子組み換え大豆・コーン等を食べた家畜の肉も表示義務はありません。

悩ましいところですが、今の検査技術では、これらの食品から遺伝子組み換え作物を使用した証拠が検出できないのです。

よくトレーサビリティで管理されている畜産物や食品はあるのですから、科学的な検出方法でなくてもやりようはあると思います。

しかし、とにかく今は”表示義務なし”ということになっています。

とりあえず上記理論で、同じ大豆原料を使う食品でも、醤油は『大豆タンパク質がすべてアミノ酸に分解される』?!との理由で表示義務がありません。

ところが、味噌・豆腐・納豆は表示義務があります。

そもそも国産大豆は、今のところ遺伝子組み換え品種の作付が行われていませんので、組み換えか否かを表記する必要もないのですが、納豆は特に”大豆”の形が分かりやすいためか、消費者の関心が高いのを感じます。

(うっかりすると最近は、醤油に大豆を使っていることを知らない方も)

ただ大豆に限らず、菜種もとうもろこしも植物の”種”です。

次世代に遺伝子を繋ぐ重要アイテムのため、たとえ動物に食べられても消化せず、土に戻れるよう様々な対策を整えています。

(なんと言っても、動物の遥か前から地球に存在していますので、進化レベルが違います)

大豆の場合も、”消化阻害酵素”を持ち、動物がそのまま食べると消化不良を起こします。

しかし加熱したり、発酵させることによって問題の酵素を失活させ、安全に美味しく食べることができるのです。

特に豆類は、加熱前に十分に水を吸わせる必要があります。

その上で、加熱することで確実に酵素を失活させ、消化が良くなるのです。

今まで大豆の酵素失活に必要な温度と時間は、108℃30分間と言われてきました。

これは昔から大豆を扱う食品加工者が、やってきた温度と時間です。

日本酒の火入れと同じく、職人の経験則というのはすごいものがあります。

しかし生物学者・河田昌東氏によると、遺伝子組み換え大豆は220℃で25分間の加熱を施さないと酵素失活できないことが判明しています。

220℃?!

こんな温度で、25分も加熱したら大豆はどんなことになるでしょう?

どんなに安全な作物だと言われても、この酵素失活条件を見ただけで、少なくとも大豆加工品に使えるとは思えません。

パスツールとコッホの時代には、誰も考えなかったであろう微生物の人工的な遺伝子組み換えが頻繁に行わわれるようになっています。

自然発生的に遺伝子組み換えが起こり、変異株が出ることはあります。

様々な問題を想定して、研究所内で変異株を作るのはともかく(自然界に影響を及ぼさないよう厳重に管理する必要はありますが)”自然界でも起こることだから”という理由だけで、人工的な変異株を作り、それを食品に利用するのは時期尚早だと思います。

武田佐吉が始めた商業生産のための納豆菌研究から113年。

納豆菌は今も多くの研究者を引きつけ、それは日本国内に留まりません。

その特徴的な性質から”枯草菌”の一種ではなく、独立した分類にすべき・・というような議論も出てきています。

赤痢・コレラといった病気が蔓延する心配はなくなりましたが、今は毎年O-157の発生が報道されます。

納豆菌はO-157の増殖を止め、消滅させることが確認されています。(1997年 倉敷芸術技術大学 須見洋行教授)

納豆の抗菌作用はジピコリン酸によるものと判明していますが、この実験の際、ジピコリン酸単独で用いるより、納豆菌の方が抑制効果が高かったことが分かりました。

その理由として、納豆菌の他の作用・・タンパク質分解酵素(リゾチーム)がO-157の細胞膜を溶かし、他の有用な腸内細菌を増やすなど、複合的に作用しているためだと結論づけています。

佐吉が始めた≪青森納豆 かくた武田≫は、今も青森市に現存しています。

信太郎が完成させたひきわり納豆も健在です。

1980年代に完成した玄米胚芽を一緒に発酵させた納豆は、他にはない商品です。

女性に人気の黒大豆納豆も作っています。

そして武田佐吉は筆者の曾祖父、信太郎は祖父です。

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