微生物の可能性~放射線に強い細菌
- 青い森工房
- 2017年6月12日
- 読了時間: 3分
更新日:2021年2月22日

自然栽培を採用しているある農家さんに、
「土壌微生物の中に、放射性物質を分解するのがいるのかもしれない」
という話を伺ったことがあります。
なぜなら福島第一原子力発電所の事故の後、慣行栽培の田んぼからは、基準値以上のセシウムが検出されたが、畝を挟んだ自然栽培の田んぼからは検出されなかった・・と。
数百メートル、数キロ離れている田んぼならともかく、わずか1メートルほどの差です。
水源も同じでしょう。
気象条件の差も、ちょっと考えられません。
しかしこの話に、多くの方は
「微生物?そんなわけない。世界中の専門家が手を尽くしているにも関わらず、決定的な除染方法が見つかっていないのに」
と言われます。
ただ、あのようなことが起こってしまったからには、あらゆる可能性を探らなくてはなりません。
例え『馬鹿げている』と笑われようが・・・。
むしろ”画期的”と言われる発見ほど、最初は”馬鹿げている”と言われることは歴史が語っています。
答えは『馬鹿げているくらい単純』なのかもしれないのです。
デイノコッカス・ラディオデュランス
この微生物は、缶詰にもいるありふれたものです。
しかしデイノコッカス・ラディオデュランスは、人の致死量の1000倍の放射線を浴びても無傷で生きています。
この微生物は1950年代から研究されていますが、放射線だけでなく、極度の高温・低温、そして強い酸にも耐性を持つことが分かっています。
そのため、これに放射性廃棄物を食べさせて、浄化できないかと研究しているグループがあります。
微生物の特徴として、それが単体で存在することは自然界ではまずありません。
しかし菌の特徴や変化をシャーレで観察するには、
1.単独にする(=分離)
2.仲間を増やす(=培養)
という作業が必要になります。
ただそこで見せる顔は『履歴書での一次面接』という感じです。
実際は、環境に応じて集落(コロニー)の大きさも違うし、他の集落とのバランスや相性の中で生きています。
例えれば、家族という小さな集まりの中では、陽気でお笑い担当の長男坊が、学校では真面目なクラス委員でふざけたことなどしないイメージ。
でも学校対抗の球技大会では、いつも闘志あふれるプレーで、隣り町の学校の子には「あいつ怖いよな」なんていわれている・・という感じです。
微生物の世界も、人間界と変わりません。
置かれた環境や役割で、いくつもの顔を持つのは自然なことです。
デイノコッカス・ラディオデュランスのような微生物は、地球が出来たての頃・・
地表温度が非常に高温で、酸素もほとんどないような過酷な環境を生き抜いてきた原始的な生物です。
このような生物は、発見されていないものも含めると、かなり存在すると思われます。
また発見されていても、それをコンスタントに分離培養できないと、技術として確立するのが難しい・・という課題もあります。
今日は仮定の話から始めましたが、時には希望的観測を語るのも楽しいのでお許し下さい。
偉大な自然界には、きっと放射能除去という仕事を果たせる微生物と、それを最も効率よくサポートできる仲間たちがいると信じたいです。