少し前は
「ミネラルウォーターを飲ませていいですか?」
「水道水は心配なんですが・・・」
というようなご質問が中心でした。
少しでも健康に良いものを取り入れたい、という飼い主さんの愛情を感じるご質問です。
『ミネラルウォーターはミネラル分が多いので良くないと本に書いてあったけど、水道水も心配なんです』
持病の有無や体質的なことをお伺いして、その都度その方に合った提案をさせて頂いていますが、”水素水”についてのご質問は初めてです。
正直なところ、”どのくらいの水素含有量であれば安全”とか”水素水にはこんな効果がある”というのは専門外なので、明確な基準を持ってお答えすることは難しいです。
商品の安全性や、例えば器に注いでどのくらいの時間で、水素が飛んでしまうのかは、各メーカーさんに尋ねて頂くことをお勧めしました。
(メーカーさんなら、データを持っていると思いますので)
その上で、私も後学のため「どのような健康効果を期待して、水素水をお試しになろと思われたのですか?」とお尋ねしました。
すると「シニア犬なので、活性酸素とか心配なんです」
とのことでした。
なるほど。ご心配はもっともです。
確かに、過剰な活性酸素は、細胞に悪影響を与えます。
しかし滅多やたらに無くせば良いかというと違います。
”日光浴をすると活性酸素が増える”と聞いて、夜しか散歩に行かない・・という方もいましたが、気温の高い夏場はともかく、太陽に当たることはやはり健康維持に必要だと考えています。
日光に当たることによって活性酸素が増えるのは事実です。
しかしそれにはきちんとした理由があります。
活性酸素は、体内に侵入してきた細菌やウィルスと戦ってくれるだけでなく、ある種の酵素を働かせるための着火剤的な仕事もしてくれているのです。
日光に当たることで、ビタミンDが合成され、免疫力は上がり、神経細胞発達や脳内ホルモンの分泌にも影響します。
しかし、あまりに強い紫外線や長時間当たりすぎると、頭痛がしたり疲れを感じるように、体を守ろうとする機能が働きます。
例えば皮膚を保護する物質を合成したり、脳を熱から守る指示を出したり、老廃物を処理する機能を発動させたり、体内は大忙しです。
そういった体内の働きの中で、活性酸素も一定の仕事を請け負っているのです。
そもそも体の複雑な機能は、絶妙なバランスで成り立っています。
活性酸素と並んで、悪役として登場することの多いコレステロールも、やはり適正量存在しなければ生きていくことができません。
体内において過剰や不足が問題になることはあっても、存在そのものが否定されるべき物質はそんなにありません。
『あれは危ない』『これを欠かすと大変』などという情報が溢れている昨今。
心配のあまり、ゼロリスクを求めたくなる気持ちも理解できますが、現実には難しいと思います。
”完璧”より”最善”を模索する方が、心身共に健康でいられるような気がしています。