top of page

ミトコンドリアの重さ


動物・植物に関わらず、ほぼすべての生物に存在するミトコンドリア。

細胞内で呼吸をして、エネルギーを生産しています。

細胞内には、”核”があってその中に遺伝子(DNA)が書き込まれているのですが、1968年ミトコンドリア内にも、核内遺伝子とは別の遺伝子が書き込まれているのが発見されました。

そのため、これを”ミトコンドリアDNA”と呼ぶようになりました。

これは母系にだけ遺伝の足跡を残していく特徴があります。

2006年筑波大学は、『ミトコンドリアDNAの変異が、男性不妊の一因』という研究発表をしました。

これを見た時、「ああ、やっぱり・・」と感じました。

なぜなら、植物の世界では、一足早く1925年にアメリカ・カリフォルニア農業試験場で、植物版不妊とも言える”雄性不稔”のタマネギが発見されています。

ミトコンドリアDNAの突然変異である雄性不稔株は、おしべが機能しません。


そのため実がなっても種が採れず、一代限りになるので、その種にとって望ましいことではありません。しかしこの突然変異は、現在の農業には非常に都合が良い部分があります。


例えば、同じトマトなら甘くて大きい実がなる株を見つけたら、それを固定化する。

人参も甘くてえぐみの少ない株を増やす。

同じ時期に、同じ品質のものを大量に作るのに、非常に良い特性です。

しかし、本来この”雄性不稔”は自然界で稀に起こる変異です。

それを人工的に作り続けた結果、特定の病気に弱いものや生育の悪いものなど、徐々に困った特性も見られるようになりました。

数年前、近所の子供が夏休みの宿題で、ひまわりの観察日記をつけていました。

お盆を迎える頃に丈は180㎝を超え、見事な大輪の花を咲かせました。

そして新学期を迎える頃には、たくさんの種が実り、喜々として「来年も育てる!」とジャムの空き瓶に保管していました。



ところがその翌年、保管していた種の発芽率は低く、茎も前年のものとは比べものにならないほど細く弱い。

そして50㎝くらいの高さまで伸びてきたら、枝分かれしてきたのです。

そのおかしな現象を学校の先生に話したら「日当たりが悪いか、肥料が足りない」と言われた・・・とその子は言っていましたが、おそらく元凶は”タネ”でしょう。

枝分かれしたその後、複数の小さな花をつけましたが、案の定その花からは種が採れませんでした。

細胞でさえ、顕微鏡でしか見えないのに、その中にあるミトコンドリアは本当に小さなもの。

しかし、例えば最初に雄性不稔株が発見された野菜・タマネギならば全体重量の10%を占める重さがあります。

肉眼で見えない小さな組織は、想像するのがなかなか難しいと思います。しかし重さとして実感できると印象が違ってくるかもしれません。

質量としての重さ、引き継がれる生命としての重さ・・・

ミトコンドリアの”重さ”には、様々なことを考えさせられます。

bottom of page