年末から、結石や尿路感染に関するお悩み相談が続いています。
毎年、冬は増える傾向にありますが、パートナーたちの高齢化に伴う原因も加わり、以前よりご相談内容が複雑になっています。
一言で結石症と言っても、いくつか種類があります。
尿酸塩結石・シスチン結石・リン酸カルシウム結石といったものもありますが、一番良く耳にするのは、シュウ酸カルシウム結石とストルバイト結石でしょう。
結石症にかかりやすい犬種はいますが、猫も多く、一度罹ると繰り返しやすい傾向にあります。
そしてこの二大結石症は、もし罹った場合、食餌の管理が真逆なので、必ず獣医師による適切な食餌管理と投薬治療が必要になります。
「前にもらった処方食(あるいは薬)が残っているから」
と自己判断で与えるのはくれぐれも避けて下さいね。
なぜなら結石症の原因は様々で、感染症や薬の副作用からくるものもあり、そこに体質的なもの、脱水、ストレス、他の疾患からくるミネラルバランスの乱れなど複合的な要素が考えられます。
そのため、前回と同じ結石かどうかは、検査をしてみるまで分からないことは珍しくありません。
結石溶解が難しいシュウ酸カルシウム結石。メスが罹りやすいストルバイト結石
そしてシュウ酸カルシウム結石は、ストルバイト結石や尿酸塩結石と違い、獣医師から処方される特別食だけで結石を溶かすことができません。
そのため手術が必要になることもありますが、”オス”が罹りやすい傾向にあります。
逆に、ストルバイト結石は”メス”が大半で、その多くが膀胱の感染症を伴います。
ちょっと人間と似ていますね。
「結石を排出するためにビールをたくさん飲んだ」という武勇伝?!を男性から聞くことはあります。
しかし女性は結石が動く痛みに苦しんだ方より、膀胱炎に悩んだことがある方の方が多いと思います。
どの結石症かによって、食餌管理や薬は違いますが、共通しているのは”水分摂取”が予防と治療のカギになることです。
季節を問わず問題となる脱水症状
近年、熱中症対策が周知されたおかげで、脱水の悪影響をご存じの方も多いと思います。
夏場、水だけをがぶ飲みしても胃液を薄めるだけで、食欲不振を招き、逆に夏バテを悪化させてしまいます。
また冬場は、”かくれ脱水”になっていることに気づかず、外気温だけでなく、室内の気温差でも血管にも負担がかかります。
これは犬猫にも言えることで、適切な水分摂取は健康を維持するために大変重要です。
しかしいくら優秀な警察犬でも「喉が渇く前に水を一口飲みましょう」というしつけは不可能でしょう。
しかも浸透圧の良い水分でないと、吸収が良くありません。
熱中症などの緊急時は、病院へ行くまでの救急対応として市販のスポーツドリンクを倍に薄めて与えることも有効ですが、日常的に与えるのはお勧めできません。
そうすると、あとは食餌の際にいかに水分を効率よく取らせるかがポイントとなります。
一口に”水分”と言っても、真水やお茶など液体としての”水分” と、野菜・果物やお肉そして調理した食餌などに存在する”水分”があります。
私たちが、普段摂っている食事は7割がた水分です。
例えば、
・炊いたご飯 60%
・焼き魚(魚の種類で多少差はありますが)55%~60%くらい
・出汁巻たまご77%
・漬物85%
明らかに”水分”というお味噌汁以外のメニューでも、これだけの水分を含んでいます。
明らかに水分が少なそうなパンでも
・食パン38%
・フランスパン約30%
・クロワッサン約20%
これにハムとかタマゴ・レタスなどを挟むと、もう少し上がりますが、飲み物なしでサンドウィッチを食べるのはちょっと辛いですよね。
それを考えると、一般的なドライペットフードの水分が8%~10%止まりというのは、かなり低いのがイメージできると思います。
これではいくら食べた後に水を飲んだとしても、水分含有量を70%どころか、50%に上げるのも厳しいです。
そしてゴクゴク飲む水分と、食事に含まれる水分が一番違うのはナトリウム・カリウムなどのミネラル類や、ビタミン・食物繊維・脂質・タンパク質などと複雑に結合していることです。
もちろんジュースやお茶にもビタミンや食物繊維などが含まれますが、体の浸透圧に近づけて吸収を良くするには、他のミネラル類も加える必要があります。
その昔、スポーツドリンクがなかった時代、マラソン大会の給水ポイントには大量のフルーツが用意されていたことがありました。
これも体に負担なく水分摂取をするための工夫です。
(私も長距離走の前や途中で、お水を飲みすぎるとお腹が痛くなったことがあります。
そういうことを防ぐ為です。)
犬や猫は、ただでさえ私たち人間より、タンパク質の要求量が多いです。
そしてタンパク質を分解するには、必ず水分が必要になります。
それを考慮すると、いかに彼らの健康維持に水分が大切か、その重要度が伺えます。
そういうことも踏まえて、私たちはどこのメーカーであってもドライフードをお使いの場合は、お水やぬるま湯に浸して与えることをお勧めしています。
(持病があって獣医師から食餌管理を受けている場合は除きます)
もちろんその個体によって(特に猫は)カリカリとした食感が好きなこともあるでしょう。
その場合は別皿で、簡単なスープを添えることをお勧めしています。
例えば鶏のササミや胸肉を茹でた汁とほぐした身を冷ましたもの。
今の時期なら、しじみのゆで汁もお勧めです。
(パートナーの分を取り分けた後、お味噌を入れて私たちも!)
おやつやトッピングの候補としてゆで卵(水分75%)やりんご(果物の水分はだいたい80%くらい)などもいいと思います。
もちろんその際は、ドライフードの量を10%~20%くらい減らして下さいね。