大きなクワを担いだ大男は、田んぼの近くまで来るとやおら地面を掘りはじめました。
「えっさ、ほっさ」
一心不乱にクワをふるっています。
「何をしているのでしょう?」
サルがりんごろうに尋ねました。
「う~む。畑を耕しているようにも見えん」
するとウミネコが
「私が空から様子を見て来ましょう」
と言って飛び立って行きました。
「じゃじゃじゃ!」
大男は山の方から田んぼに向かって、一筋の溝のようなものを掘っていることが分かりました。
一人であの長さを掘ったのかとウミネコが驚いていると、この辺の主である鷹がやってきました。
「これは珍しい客だのう」
「これはこれは鷹さん。この辺に鬼が出ると聞いて、りんごろうさんと鬼退治にやってきました」
「鬼だと?」
「ええ、あのクワをふるっている大男が鬼ではありませんか?」
「どうかな?ただあの大男は、去年もああして溝を掘っておった。そうしたら・・・あっちの田んぼをご覧なさい」
そう言って、鷹は大きな翼を広げて旋回すると、山の南側へ案内してくれました。
そこには青々と育つ稲が風に揺らいでいます。
田んぼはきれいな水で満たされ、稲の間をみずすましがスイスイ泳いでいます。
「よく育っていますね」
「そうだろう?あの男が掘る前は、しょっちゅう田んぼが干からびていた」
「不思議ですね」
ウミネコが空から見たことを報告すると、りんごろうは
「よし、もう少し近くから様子を見てみよう」
と言いました。
りんごろうと3匹は、それぞれの剣を片手に抜き足・・差し足・・・こっそり近づきました。
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