村に着くと白い犬は
「暫しお待ちを」と言い残し、小走りにどこかへ行ってしまいました。
しばらくすると、前足を泥だらけにして、何かを咥えて戻ってきました。
「いくらなんでも丸腰で鬼に立ち向かうのは無鉄砲というものです」
そう言うとりんごろうに、みずみずしい大根の剣を差し出しました。
「どうぞこれをお腰に」
続けてサルにはごぼうの剣を、ウミネコには根曲り竹の剣を渡しました。
最後に自ら長芋の剣を背負うと、りんごろうを仰ぎました。
「では参ろう!」
りんごろうの一声で、一同勇ましく歩み始めました。
「さて鬼はどこにいるのか?」
サルはキョロキョロしながら歩いていました。
するとウミネコが
「あそこにいるニワトリに聞いてきましょう」
と飛んで行きました。
「ニワトリさん、この辺に鬼はいませんか?」
「見たことないな」
「りんごろうさん残念です。南の村にいるシャモロックなら知っていたかもしれません」
すると今度はサルが、通りかかった馬に尋ねました。
「この辺で鬼を見かけませんでしたか?」
「鬼?私は見たことがないです」
りんごろうは腕を組んで首を傾げました。
「困ったものだ。鬼の姿が見えないとは」
すると白い犬が地面をクンクン嗅ぎはじめました。
「おお、あそこに黒毛和牛がいる。彼らに聞いてみよう」
「もしもし、鬼を見かけませんでしたか?」
「も~お、知らないな~」
白い犬はりんごろうに
「山の向こうの短角牛なら知っていたかもしれません。残念です」
と言いました。
すると木に登って辺りを見渡していたサルが言いました。
「あそこに赤い顔をした茶色い縮れ毛の大男が、見たこともないほどの大きなくわを担いで歩いています」
「むむ・・・それは鬼に違いない」
一同、サルの案内で走り出しました。