2016年夏、イギリス王立獣医大学が、短頭犬専用病院を開設しました。
それだけを聞くと、「へえ~、やっぱりペット先進国ね」で終わってしまいそうなニュースでした。
しかし何故、王立の大学が、そのような病院を設立するに至ったかを知ると大変憂慮する問題が見えてきます。
英国獣医師会・会長ショーン・ウェンズリー氏の発言『犬を飼いたいと思っている人は、短頭犬が目、脊椎、呼吸困難など多くの健康問題を抱えていることを知っておかなくてはなりません。短頭犬ではなく、より健康な犬種・雑種を飼うことを強くお薦めします』
これがBBCニュースやガーディアン紙など、イギリスの主要メディアで取り上げられ衝撃を持って受け止められています。
イギリスはブルドッグを生み出し、政変に荒れる中国から命がけで持ち出して血統を繋いだペキニーズなど、”鼻ぺちゃ犬”の本家とも言えるお土地柄です。
その国の獣医師協会や獣医師たち、犬種標準を設定しているザ・ケンネルクラブまでもが、警鐘を鳴らしているのです。
確かに、50年ほど前のパグの写真を見たことがありますが、今ほど鼻がつぶれていません。
一見すると、パグと何かのミックス犬かと思えるほどです。
容貌を重視したブリーディングによって、重い呼吸困難に陥り、外科手術を必要とすることも稀ではないそうです。また独特の頭蓋骨や喉の形状で食事が困難なことも見られるとのこと。
これは『短頭犬の人気が高まることで、より犬を苦しめている』と獣医師協会が言うように、非常に深刻な問題です。
急増している短頭犬・短頭猫の健康被害を何とかすべきだと考える獣医師や動物看護士の署名も12,000名以上になり、多くの議論を呼んでいます。
また『短頭犬の呼吸音がおかしいことを”特徴”と捉え、問題視しないのは、飼い主だけではなく、獣医師にも多い』との指摘もあり、専門機関を設けることで、少しでも今いる犬たちの健康に寄与し、今後の啓発にもつなげていくことを目標としているようです。
大変愛らしい”鼻ぺちゃ犬”。
性格的にも陽気で、愛嬌のある子が多いのですが、その陰で体が辛い毎日を送っているかもしれないと考えると複雑な思いがします。
何事も、”行き過ぎ”は戒めなければならないでしょう。
そして獣医師協会は「短頭犬を飼いたいと考えている方は信頼できる獣医に相談して欲しい」とも言っています。
すでに短頭犬を飼っている方も、定期的に獣医師に健康チェックをしてもらうことで、健やかなドッグライフが送れると思います。
そして短頭犬に限らず、パートナー達の小さな体調の変化を見つけられるのは飼い主さんです。
かと言って神経質になりすぎるより、信頼できる獣医師と出会うことが飼い主さんにとって、何より本犬・本猫?!にとって望ましい環境かもしれません。